第9話「アリスVSニーズヘッグ・3」

「………先生、フリード。彼女は昔からあの戦い方なのか?」

「僕は知らないけど……ディートリヒ。どうなんだい?」

「そうですね……。少なくとも、中等部までは普通だったんですが、去年の今頃から魔法のコントロールに難が出たようで………」


その言葉に、俺は違和感を覚える。


「去年……?元々は上手かったのか?」

「……ええ。去年からです。それ以前は本当に誰も真似できないくらいの魔法コントロールを持っていたのですが…それが何か?」

「魔法コントロールはそんな簡単に変化したりしない。急激に環境が変わったり、いきなり戦い方変えたりとかすれば、その場合は話は別だが、それでもそこまでは変わらない。アリスだって、そういう風な事をした訳ではないんだろう?」


その問いにディートリヒは頷いた。


「はい。彼女はプリーストが最適職だと出てからは、ずっとその方面で戦い、勉強しています。あの戦い方も、変化が起きてからなのです。」


再び舞台へと3人揃って目をやる。


ニーザの尻尾とメイス、翼の連撃を、アリスはフォトンの刃を纏わせた杖と、フォトンをそのまま纏った拳、足にもフォトンを刃状に纏わせてそれらを弾き飛ばすか反撃するかしていた。


相変わらず物騒な戦い方だが、先程から感じていた違和感の正体に確信を持てたので口を開く。


「見て分かると思うが、あれ……抜群に上手いぞ。たぶんだが、その魔法コントロールに難ありって、杖を毎回壊してるからだろ?」

「はい。今まではそんな事が無かったのですが、急にどんな素材で作った杖を使っても手当たり次第壊してしまうようになってしまって……」

「それは使。」


そう答えると、フリード達はどういう意味だと言わんばかりに驚いた顔をしていた。


「………変質?」

「普通は無い。と言うか、100人に一人いれば良い方だ。そもそも、よく考えてみろ。ニーザ相手に、彼女はどれだけ戦ってる?」


フェンリルやフレスを除いて、2人の戦いを見ていた全員がハッとしたような顔をした。

というか、フェンリルの奴。表情から察するに気付いてたな。


「もう10分以上経っている………!?」

「ああ。手加減してるとはいえ、高位魔族でもあるニーザ相手に普通の魔導師があそこまで粘るのはまず無理だ。最初はアリスが意外な戦い方するもんだからニーザが劣勢だったが、2割程度とはいえ、今は殆ど互角の戦いしてるのがいい証拠だ。」

「では、彼女の力はどういう形で変質を……」

「ああ、それは…………」


言いかけて、舞台から感じた気配にぞわりと肌が泡立ち、鎖を取り出す。

しかし、フェンリルもフレスも気付いていたらしい。

2人共凄まじい勢いで舞台へと移動して、をフレスが剣で砕き、フェンリルがアリスの槍を構えていた腕を押さえた。


「そこまでじゃ。アリス、よくやったの。」

「あ、フェンリルさん、フレスベルグ様?もしかして私………何かまずい事を?!」

「いや、君の力が予想以上の物だっただけだ。気にする事はない。そうだな?ニーザ、アルシア。」

「うん。アリスちゃん……ううん、アリスは悪くないわよ。そうでしょ?」


途中までボロ雑巾にされながらも、どこか楽しそうに笑いながら聞いてくるニーズに俺はゆっくりと頷く。

そう、何も悪い事などない。

アリスが予想以上に強かっただけなのだから。


「ああ。お疲れ様、2人共。取り敢えず、頑張ったアリスには俺からをやろう。」


俺はそう言いながら観客席から飛び降りてアリス達へと駆け寄った。

まさか……使



―――――――――――――――――――――


第一章「斬将と妖姫」・完


第一章、終了です。

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