第7話「アリスVSニーズヘッグ」
「アルシア、ノーデンから結界装置の件は聞いたよ。何度も開発に失敗してたから助かるよ、ありがとう。」
「いや、構わないよ。そっちはどうだったんだ?」
「……あの伝承を残した連中を軒並み重力魔法で潰したくなった。ニーザもフレスも、伝承の件は笑って許してくれたし、同盟に関しても二つ返事でOKをくれた。」
恐ろしい事を言いながらも、2人を愛称で呼んでいるところを見ると、心配する必要は無かったらしい。
誰彼呼ばせる2人ではないから、これもフリードの人徳故だろう。
「それにしても、やってくれたね。アルシア……。」
「ん?何がだ?」
「リアドール君の事だよ。城を破壊するつもりでやれなんて……。」
フリードがどうしてくれるんだとばかりにジト目で言ってくるので、俺は「出来るのか?」と聞いてみる。
「やりはしないかもしれないけど、出来ると思う。」
「…………マジで?」
「マジだよ。直接見たことは無いけれど、リアドール君の事は城に住む者達の間でも有名だからね。」
「アリスからは、あまり戦闘は得意ではないと聞いているが……」
アリスからは職業適性はプリーストで、習得してる魔法、知識は問題は無いが、実戦訓練では毎回赤点を貰っていると聞いている。
しかし、それでは下級から中級……それも強化状態で100匹もいる魔族とバフォロスを相手に粘れる訳がない。
だからこそ、それがどういうことなのかを知る為にアリスと手合わせを申し出たのだ。
どういうことなのかと首を傾げると、ディートリヒが話に入ってきた。
「アルシア殿、それはプリーストとして見た場合という意味です。彼女はその………」
「……その?」
そこまで言いかけて、ディートリヒは言葉を濁してしまった。
………一体、何が始まるのだ?
◆◆◆
「まったく………、アルシアはいつも好き放題言うんだから!」
「あの……すみません。ニーズヘッグ様。私の腕試しに付き合っていただいて……」
「あー、いいのいいの。アルシアがいきなり言い出したんでしょ?アンタ……アリスちゃんでいいんだっけ。アリスちゃんが気にする必要無いんだから。」
「でも……」と言いかけて、ニーズヘッグ様は私を止めた。
その顔はもう戦う気満々だったのだ。
「アルシアも言ってたけど、私を憎い相手と思って、殺すつもりで来なさい?でないと……」
「………でないと?」
「アンタがケガでもしよう物なら、本当にフェンリルに殺されるわ!!」
ニーズヘッグ様が涙目でそんな事を本気で仰る物だから、私はついついくすりと笑った。
フェンリルさんはどうしてか私に対して過保護なところがあるから、コレは真剣にやらなければ……
「……分かりました。その胸、お借りします。ニーズヘッグ様!」
「んー……、アリスちゃん。アタシの事は……まあ、今はいいか。来なさい………って、何やってるの?」
何かを言いかけたニーズヘッグ様が私の両手を見て首を傾げている。
たしかに、私の戦い方は他の人から見たら奇抜なのだろう。
「その、私は戦い方が下手で杖をすぐ壊してしまうので……、いつも複数持ち歩いているんです。」
そう言って、両手で一本ずつ持っている杖を2本とも見せた。
今回は強めの杖と、すぐに使い捨てる杖も多めに用意しているから、たぶん5分くらいは持ち堪えられるのではないだろうか。
いや、相手が高位魔族のニーズヘッグ様では、それすら難しいかもしれない。
けど、ニーズヘッグ様は何故か私の言葉に怪訝な顔をされた。
「………それ、たぶん下手とかじゃないわよ?」
「え、それはどういう………」
「何でもないわ。さ、まずは一撃、しっかり来なさい。邪悪竜とも呼ばれてるアタシの力……しっかりと見せつけてあげるわ!」
ニーズヘッグ様はそれだけ言うと、まるで戦闘開始とでも言うようにメイスを出して構えたあと、その大きな翼を広げられたのだった。
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