第4話「魔石はここに」

「1つ目のお願いなんだが、この城に張る結界を用意するから、あとでフリードにそれを伝えてほしいんだ。それと、この城と街の見取り図を用意してくれると助かる。」

「結界………、この城と街まで覆う規模の、ですか!?」


俺の言葉にノーデンを筆頭に全員が驚いた顔をした。

そんなに変な事を言ったのだろうか?


「ああ、そうだが……。」

「やはり、というか……さすがアルシア殿ですね……。」

「……もしかして、迷惑だったか?」

「とんでもございません!実は、このファルゼア王国の宮廷魔導士、ギルドや魔法学園の優秀な魔導師、それと魔導具研究班で何度も作ろうとしたのですが、そのどれもが失敗したのです……。」

「……そうか。龍脈が真下にあるここは立地的には問題ないどころかこれ以上無いほどの好条件の筈だが、何が駄目だったんだ?」

「核となる魔石です。発生装置、受信装置までは何とかなったのですが、結界を生成する為の魔石だけはどうしても用意出来なくて……」

「その時の大きさは?」

「30センチまでの物しか用意出来なかったのです……。」


なるほど、たしかにそれではこの規模の土地全体を覆う結界を作り出すのは不可能だ。

最低でも倍の大きさは欲しい。だが……


「魔石なら問題ない。見取り図とその時の受信装置を持ってきてもらえるか?発生装置は魔石のサイズの関係上、どうしても作り直さないといけないから大丈夫だ。」

「分かりました。それでは暫しお待ち下さい。」


それだけ言うと、ノーデンは部下と宮廷魔導師数名を連れて出ていった。




◆◆◆


「うん、受信装置は問題ないな。魔石を取り替えて調整すればいい。それと、設置箇所はここ、と……」


俺はノーデン達が持ってきてくれた受信装置の状態を確かめながら、設置箇所を見取り図に次々と書き込んでいき、ペンを置く。

これで設置箇所は問題ない。


「ノーデンさん。コレをフリードに伝えて、許可が下りた場合は皆で受信装置をこの印がついた場所に打ち込んでいって欲しい。」

「畏まりました。それで、肝心の魔石はどうなさるのでしょう。この城には30センチ以上の魔石など何処にもありませんし……。」


見取り図を受け取って困ったように言うノーデンに苦笑しながら心配はないと首を振る。


「俺から言い出したんだから、ちゃんと用意するよ。丁度受信装置に差し込む分の魔石もカットしても問題ない大きさのが…………あった、コレだ。」


俺は収納魔法を上から展開して、落ちてきたそれを両手でキャッチして床に置く。


「―――――は?」


すると、全員が目玉が飛び出そうなくらい目を大きく見開いて床に置いた魔石を見た。


「………これなら足りるぞ?寧ろお釣り来るくらいには。」


そう言って、魔石に目をやる。

大きさ的には4倍の120センチ。受信側用に魔石を削り取ってはめ込んでもまだ余裕がある。


「………アルシア殿がやはり規格外なのがよく分かりました。因みに、その魔石はどこから……」


ノーデンに言われて、何処で見つけたろうか、と思い返す。


「ここから北の海の、更に遥か先の地帯に海竜王って名乗ってた超大型の特級魔族がいてな。そいつを倒して手に入れた。」

「あの……ディートリヒ先生。私、その話授業で聞いたことある気がします。」

「そうだね、私も話した事があるよ。しかし……!そんな伝承上にしか存在しない魔族の魔石を見ることが出来るとは………、アルシア殿、貴方は神か!?」

「お、おう?いや、俺はたしかに破壊神とか言われてるかもだが、神では……」


正確には勝手にそう呼ばれているだけだが……

しかし、ディートリヒは俺の言葉など耳に入ってないかのようにうっとりとした表情で俺達の生きていた時代に思いを馳せている。

アリスの方を見ると、苦笑してその首を横に振っているので、どうやら彼はこの手の伝承に目が無いのだろうな……と苦笑して、その楽しそうな後ろ姿を静かに眺めた。

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