花咲いて
赤白、黄色にピンク橙色。
店先に並んだ花々たちは、いわゆるトップスター。
私はお店先にある花壇に生えている、名もない草。
普通なら邪魔な雑草として引っこ抜かれて、ポイと捨てられるだけの私を、この花屋の店長さんであるあなたは可愛らしいといって大事に大事に育ててくれていた。
そして今日も、綺麗なニンゲンの女性に買われていく、大きくて綺麗な百合の姉様を見送りつつ、あなたがジョウロから降らせてくれる雨を体いっぱいに浴びている。
ジョウロから最後の一雫がぽとりと葉っぱに落ちたとき、私はあなたに見てみて、と無言でアピールをしたわ。
それに気がついたあなたは身をかがめて、そっとそれに触れてきたの。
頑張って咲かせた花はとてもとても小さな花だけど、こうして花咲いて見せることが出来たのは、きっとあなたの愛情のおかげよ。そういうように、一生懸命葉を揺らしたわ。気持ちの上だけ、の話だけど。
そうして咲いた花が、実は世界にたった一つしかない新種の花で、それを知ったあなたが二重の意味で喜ぶことになるのを、店長であるあなたも、そして花咲かせた私自身もまだ知らない。
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