第2話 この勇者はやばいです。

「あなた、見ない顔だね。」


前を向くと反対側の椅子に水色の髪の可愛い女の子だ。


これはあれだろうか、モテ期と言うやつだろうか。

前世は…うっ。頭が痛い。

前世の事は思い出したくない。吐き気がする。


「は、はい。今日冒険者になったばかりです」


すると目の前の少女はクスクスと笑って言った。


「なんで敬語なの?」


「あっ!私の名前はノア!ノアちゃんって気軽に呼んで!」


「はぁ……」


元気いっぱいって感じの子だ。それに結構可愛い。


前世でもこんな子がいたらなぁ……


「ねぇねぇ!あなたの名前は?」


俺は少しモジモジしながら答える。


「あ、えっと……ルクスです」


くそ!前世の記憶を思い出すとコミュ障が戻ってくる...


「いい名前だね!よろしく!」


「よろしく...」


そんな感じに自己紹介をしているとギルドの扉が強く音を立てて開く。


それと同時に周りがうるさくなってくる。


【おい!勇者パーティが帰ってきたぞ!】


【見ろよ!勇者ライガーだ!】


【あっちは魔法使いリリア!初めて見た!思ってたより可愛いなぁ!】


【こっちは戦士ドレイク!】


うるさいな。早く出ていきたい...

てかなんで女性の魔法使いの時だけちょっと文長いんだよ...

男の人っていっつもそうですよね!

.....................俺も男か。


勇者らしきやつがギルド全体に聞こえる声で。



「このギルドの中に相応しくない奴が一匹いるようだが。」



「そんなやつこのギルドにほっといていいのか?」



俺の方に近づきながらそう言っている。

バレたか?いや、幻覚魔法で隠してる。

大丈夫...............



「なんだお前、魔族のくせにこんな所で何してるんだ?」


バレてる...確実に。


【魔族だって?!】


【おい!このギルドに魔族がいるらしいぞ!】


外野もうるさくなってきた。


「お前に関係ないだろ?」


「関係ない?俺は勇者だぞ?お前みたいな魔族のゴミがこんな所にいちゃいけねぇって言ってんだ。」


「そんな事も分からねぇか?魔族は馬鹿だ。小学校からやり直して来いよ。」


「......小学校って知らねぇか。」


小学校...?

この世界に小学校は無いはずだぞ

じゃあこいつは...俺と同じ世界から転生した...?

くそっ!俺は今こんな危機的状況だって言うのにこいつは転生して、最強の力を簡単に手に入れて、可愛い魔法使いにチヤホヤされて......


「ほら!フード脱げよ!雑魚魔族!」


勇者...は俺のフードを掴んで引きちぎる。


「ほら!見ろ!こいつ、角が生えてる!どう見たって魔族だ!」


おかしい、幻覚魔法で...


【ほんとだ!あいつ角生えてるぜ!】


【あれ、狩ったらいくらになるんだ!】


幻覚魔法.........

まさか... 俺以上の幻覚魔法で対抗したのか?

幻覚魔法は自身よりも強い魔力に当てられたら効果が無くなると本に書いてあった。

でも、おかしい。

勇者だぞ、勇者パーティの魔法使いとかじゃない。

勇者に魔力で負けているのか...


「ほら!なんか言ってみろよ!俺が怖くて動けないか!」


転生した俺が勇者だったはずなのに。

物語の主人公が俺なら今頃凄腕の魔法使いや戦士を連れて魔王と戦っているはずなのに。

くそが...


こいつとは喋りたくもない。

声すら掛けたくない。


僕は怒りに身を任せ椅子から立ち勇者に向かって右足蹴りをいれ...


「やはり魔族は馬鹿だ!感情に身を任せるしか行動が出来ない。猿と一緒だな。」


俺の足が...切れている...

豆腐を切るみたいに簡単に切られた...


切られた足は床に落ち紫色の液体が流れ出ている。


痛い...

俺の攻撃すら届かないのか...

ここで死ぬのか...

まだ俺の旅は一日目なのに...


絶望を正面から感じていると誰が俺の手を引く

そのままギルドの外まで引っ張られて行った...


《勇者視点》


【あの魔族逃げやがったぞ!】


【報酬は俺のもんだ!追いかけろ!】


「ギルド内が騒がしくなってきたな、依頼の報酬を受け取ったらさっさと出るぞ。」


「ライガー様、その右腕の切り傷はどうしたんですか?」


切り傷?俺はまだこの世界に来てからまだ切り傷ひとつできてないはずだぞ。


右腕には切り傷ができており

血がポタポタと少量流れている


「自分の剣でもかすったんじゃねーの?」


「ドレイク。ライガー様がそんな事する訳ないでしょ。」


「まぁそうだな。」


まさか.........

いや、そんな訳無いな。あんなくそ雑魚魔族だ。

回復魔法だけかけておくか




「ヒール。」


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