異世界ライフを楽しみたいけど魔族に転生してそれどころじゃ無いんだが

西条三日月

第1話 異世界でも現実は残酷です。

「母さん、行ってくるよ」


「気をつけてね。行ってらっしゃい」


ここまで来るのに長かった。


15年前異世界に魔族として転生した俺は魔法学校や現代文化を持ち込んでチヤホヤされたり冒険者パーティーとか作りたいなぁ

と期待に満ち溢れていた。


しかしそんな夢物語は無かった。


魔族として生まれて5歳の頃


村の図書館から1冊の本を見つけた


異世界の歴史についての本だ。


数百年前。新たな魔王が誕生してからこの世界は人間と魔族は完全に敵対した。


その一文だけで俺は理解した。


人の世界にある魔法学校や冒険者ギルドは俺には届かない場所にあるということを

つまり俺が人間のいる王都に足を踏み入れた瞬間騎士団にぶち殺される

でも俺は人間にチヤホヤされたい。

だから俺は王都に行く

という訳だ 馬鹿みたいだろ?


「待ってルクス!」


母さんが本を持って走って来る。


「どうしたの母さん。」


「これを持っていきなさい」と言って母さんが1つの分厚い本を渡してくる。


「何これ?」


「これは魔法について書いてる本よ」


「水魔法や炎魔法、幻覚魔法や洗脳魔法までなんでも揃ってる本。物置の奥に置いてあったわ」


んな物騒な本家にあったのかよ。


俺はその本を手に持ち、「ありがとう」と言って人が住んでいる王都へと足を運んでいくのであった。



ここから王都まではちょっと距離が長そうだな。

王都の貿易路を進んで馬車に出会ったらついでに乗せてもらおう。

その辺の村人なら、フードを被るだけでこの頭に生えてる小さな角はバレないだろうし。

俺はフードを深く被り、王都への道を歩いた



「おーい!兄ちゃん!」


馬車の運転手が俺に向かって手を振っている。


早いな。もう捕まえられそうだ。


「王都まで行くのかい?」


「はい。」


「じゃあ乗りな!金は要らん!護衛はしてくれよな?」


ラッキー。俺は馬車の荷台に乗った。


「ありがとうございます」


運転手はガハハと笑いながら馬を歩かせた。


「兄ちゃん、この辺では見ない顔だな!」


「はい。最近ここに来ました」


「そうか!王都に何しに来たんだ?」


俺は少し考えた後に言った。


「観光...ですかね。」


「そうか!王都には色んなものがあるからな!」


馬車はガタガタと揺れながら進んでいく。


「兄ちゃん、名前はなんて言うんだ?」


運転手が聞いてくる。俺は少し考えてから 言った。


「ルクスです」


運転手は少し驚いた顔をしてから言った。


「珍しい名前だな!どこ出身なんだ?」


俺の故郷は魔族の村だ。なんて言えないしな……適当に誤魔化そう。


俺はちょっと笑って答えた。


「ずっと遠くの国です」


「そうか、いい所なのか?」


運転手はニカっと歯を見せて笑う。


「はい。」


俺は少し悲しげな笑顔で答えた。


あと数十分で王都には着くだろう

王都の門の警備をどう通過しよう

フードを取られるかもしれない

そういえば母さんから貰った本に幻覚魔法ってのがあるって言ってたな。

一応覚えておくか...


「兄ちゃん、王都に着いたぞ!」


門番がこちらへ近づいてくる。


「おいお前、フードを取れ」


僕は言われた通りフードを取ろうとする。

幻覚魔法で角を見えないようにして。


魔力の流れでバレるかもしれないから体内を通って角だけで魔法を使うイメージで...


「ふむ、怪しい奴ではないな。行っていいぞ」


ふう、何とか入れた……でも王都に入ったらまたフードを被らなきゃな。

顔を見られるのも苦手だ...




僕は馬車の運転手に頭を下げて言った。

「ありがとうございました。」


運転手は手を振っていた。

僕も手を振り返す。



とりあえず宿よりまずは冒険者ギルドだな

俺は現代文化とかでチヤホヤされるためにここに来たんだ!


それにしてもやっちゃいけないことをやってる時が1番ゾクゾクする...

興奮してきたかも...



その辺の通行人に場所を聞いて

俺は冒険者ギルドにたどり着いた。


「ここが冒険者ギルドか……」

冒険者は俺みたいな人間も結構多い。

だからフードを被っていてもあまり目立たないだろう……多分。


「よし、入るか」


俺は意を決してギルドの扉を開けた。

中は酒場と一体になっており、昼間から酒を飲んでいる人が多い。


「おい兄ちゃん!ここはガキが来る所じゃねぇぞ!」

と1人の男が俺に言う。

酒臭ぇ...


「あの、冒険者登録をしたいんですけど」


すると男は笑って言った。


「ガハハ!そんな弱そうな見た目で冒険者になろうとはな! だが冒険者の世界は甘くねぇぜ!おい!ビール1杯!」


とりあえず無視でいいか

関わるだけ無駄だ。


俺は受付のお姉さんに冒険者登録をしたいと伝える。

「はい。ではここに名前を記入してください」


俺はペンを取り、紙に名前を書いた。

「ルクス……さんですね。冒険者ランクはEからです。昇格条件は依頼を達成することで増えます」

「EランクでもSランク依頼を受けることができます。しかし命の保証はありません。」


「これも渡しておきますね」と言ってお姉さんは俺に1枚のカードを手渡した。

「それは冒険者カードです。身分証明書やギルドでの依頼を受ける際に必要になりますので必ず携帯してください」

俺は冒険者カードを受け取った。

これで俺も冒険者だ。

カードをポケットに入れ、その辺の椅子に座る。


とりあえずどうやって俺が普通に人間と関われるようにするか考えよう。


方法①

魔王を倒す。

魔王が変わってから人間と魔族の関係が悪くなったんだから魔王を倒せばって...

無理だろうな。


方法②

頑張って人間に魔族良い奴って事を知らしめる。

別に魔族が悪いやつって訳じゃないんだが...

魔王の命令で動かされてるやつが大半だからな...

今の所これが1番いい方法か...


「おーい...おーい!」


声をかけられている?...


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