第8話 猪熊の出現

 作業所「ハトさん」には、心配していた支援員のソルトさんが見たことのある、禿げ頭でヨレヨレの紺色ジャンパーを着た男が来た。ズボンには朝食べた食べ物の残りカスがついて茶色くしみていた。


 その不潔な男は猪熊聡という。

 猪熊は作業所「ハトさん」の仲間たちに恐ろしい様子で接し、汚い言葉で罵る。

 仲間たちが話していると、猪熊は突然割り込んで話を仕切ろうとし、主導権を握る

と、彼らを怖がらせながら声高に自己主張し、自分の意見を押し付ける。


 作業所の皆は猪熊の行動を不快に思い、彼を残飯を漁る汚い奴、理由もなく怒り狂うイノシシのようだと心密に馬鹿にしていたが、猪熊はそれに気づかなかった。

 問題は、新潟の厳しい暑さに負けて避暑地のように作業所「ハトさん」に来るようになった猪熊が、問題を起こすようになったことだ。


 ある日、誠が作業所に行くと、騒がしい異変に気づいた。

 どうやら猪熊が弱い利用者を狙って争っているようだ。

 「馬鹿野郎、俺の言うことが聞けねぇのか?」

 クロウは猪熊に怯えていた。

 猪熊の目的は作業所「ハトさん」でボスになり、恐怖を使って皆を支配することだった。

 彼は仲間たちを見下し、彼らの価値を落とすことで自分を優越感じていた。

 猪熊は下等な喜びを感じるために、皆を馬鹿にすることを繰り返していた。

 それは、誰かが丹精込めて耕した幸せの大地の果実を、猪熊が暴力で奪い取り、自分だけ幸せになるためだった。

 猪熊の夢は作業所「ハトさん」で一番の幸せ者になることだった。


 猪熊が目を付けたのは、誠たちが一生懸命に作った幸せの果実だった。

 しかし、猪熊の企みは何となく阻まれていた。

 障壁になったのは、誠とその仲間たちの集まりだった。

 猪熊は誠を潰す決意をし、信義と寅蔵を招集した。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る