第5話 目指すゴール

 誠は、そこで、この窮地を突破する為に、博学な悠作に再び、アドバイスを求める事にした。悠作は、大きな頭を、くらくらさせて、休憩室のソファーに、座っていた。

 誠は、その隣に座って、やる気のなさそうな悠作に、話しかけた。

 「悠作、話をして良いかい」

 悠作は、誠を見て、つまらなそうな顔をした。

 「いいよ」

 「はい、それでは……」

 誠は、悠作に、疑問をぶつけた。

 「私の聴き方が、上手に出来ないんだけど、それをどう思うか? 聞かせて」

 悠作は、やれやれといった感じだった。

 誠は、素早く、メモ帳を取り出した。

 誠は、考えていたことを、メモにした紙を、見せながら、悠作に、一生懸命になって話した。

 悠作は、そのメモを見ながら、少し考えた後、慎重に口を開いた。

 「人って言うのは、自分の話を聞いてもらいたい生き物なんだ、「それ、どうゆう事?」「もっと聞かせて」「それ、教えて~」と、言って、一段下がって、相手のかゆい所を、見つけて、話を引き出すことが大切なんだ」

 「おぉ! そうだったのかぁー」

 誠は、悠作のアドバスに、突破口を見いだし胸躍る心地がした。

 その数日後、誠は、光ちゃんと話をして、アドバイスの効果を確かめることにした。

 作業の終えた後の休憩室で、光ちゃんを誘った。

 「光ちゃん、ガンプラの「百式」買ったんだって」

 「うん」

 二人は、ソファーに座る。

 「ハイグレードの奴で、武装が充実している良い奴だ」

 「へぇ~凄いね!」

 誠が驚いた後、光ちゃんの声が大きくなった。

 「可動範囲が多くて、色々なポーズがとれるんだよ」

 誠は、オーム返しをする。

 「ホント、それ色々なポーズがとれるんですね」

 「うん、とっても、かっこいいんだ」

 誠は、質問する。

 「ガンプラは、他にもあるんですか?」

 「うん、3体ある」

 「3体あるんだ、……凄いね!」 

 誠は、話を掘り下げる……。

 「ガンプラについて、もっと聞かせて……」

 「ガンプラはね、作るだけじゃなくて、飾って眺めると、楽しいんだ……」

 「分かる」

 「こいつは、指揮官タイプの奴で、人気があるんだ、でも、あんまり飾る場所がないけどね」

 「ガンプラを、戦う様子にして、かざりつけるのは、いいもんだね」

 「ははは」

 その後、会話は延々と続いた……。

 誠は、光ちゃんとの会話が、上手くいき、宿願だった、話し上手のコツをつかんだ。

 しかし、それでも、合格点をはじき出し、壁を超えることが出来なかった。

 リサは、最近活発な誠に元気をもらい、リサもリサなりに、コミュニケーションの研究をしていた。

 「マコたん、相槌を使いこなせば、話し上手になれるかな?」

 「出来るよ、リサぽん! 私も、リサポンを応援するよ」

 リサは、誠に「うん」と頷いた。

 お互い同士である事が、二人の間に、友情から淡い恋心となって深まっていった。

 周りから見ると、ちょっと可笑しな二人だった。


 一方の悠作は、今日も貧血気味なのか、皆と話をするが、億劫らしく何となく怠惰な様子だった。

 綾香と光ちゃんは、音楽関係の軽い話をして楽しんでいるようだった。それは、いつもと変わらぬ日常だった。





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