「…彼方…」

　寝室で、そう呟く。

　彼方は、私と出会って救われた。って言っていたけれど、本当なのかな。

　…自殺したいと思うほどに辛かった彼方を、私が救えたのかな。

　分からないけれど…分からないけれど、今の彼方はすごく楽しそうだと思う。

「無茶、してないよね…？」

　…同情は、しないほうが良いかな。

　もし、彼方が辛かったその時に、私が彼方と出会っていたら、どうしただろう。最初は、守るって言って、結局は自分が虐められたりするのが怖くなって、次第に彼方を避けて、そうしたら彼方は自殺しちゃっていたかもしれない。そうしたら、あまっちや由希ちゃんも、今よりも少しだけ、不幸だったかもしれない。

「そう考えると…出会ったのが高校生になってからでよかったのかな」

　お父さんが、お義母さんともっと早く再婚していたら？

　彼方にも、居場所ができていたのかな。

「…もしも、じゃなくて、今幸せだから良いよね…」

　過去にあったIF（もしも）じゃなくて、今ある、この幸せを、噛み締めていよう。

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作者's つぶやき：本編が暗くなるとやっぱり番外編も少々暗くなりますね。まあ、正直な話水香さんと刀祢さんがもっと早く再婚しても、彼方くんにとっては辛かったかもしれないですが。

何でかって言いますと、自分よりも優れている伶衣さんに慰められても、『何も…なにもわからないでしょ…優秀な義姉さんには…』ってなってそうなので、本当に最適解なんですよね、このタイミングが。

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