第41話
「ねえねえ何の話してたの?」
俺の混乱を知ってか知らずか、白崎はその豊満な身体をバスタオル一枚で隠せた気になったままニヤニヤと俺に近づいてくる。
「ん?」
「いや、そのぉ」
「あんたいい加減にしなさいよ」
そのとき姫は突然立ち上がり、鋭い目で白崎を見下ろす。白崎は驚いた表情の後、臨戦態勢のように挑発的な目付きに変わった。
「なぁに? せっかく前みたいに仲良くなれたと思ったのに」
「誰があんたみたいなヤリ〇ンと仲良くなるかっての」
「なっ……!」
顔を真っ赤にした白崎が言い返す前に、姫は白崎を鼻で笑い飛ばす。
「身体でしか恋愛出来ないなんて、サルじゃあるまいし。いや、サルにも失礼か」
「な、何なのよ急に! 言って良いことと悪いことがあるでしょ⁉」
「言い返せないんだ」
「っ……! そりゃ、武器だとは思ってる、けど」
「遂に白状したわね! あんたはいつもそうやって修司のことをたぶらかして、あんたのせいで一体どれくらいの人が……」
姫が誰かに噛みついているのを見るのは心臓に悪いが、今はちょうどいい。心臓から送られてくる血が少なくなっていくほど、冷静さを取り戻していける気がする。
「?」
「!」
そのとき、白崎と目が合ってしまった。
「ふーん、なるほどねぇ」
「ちょっと聞いてるの?」
「私に嫉妬してるんだ?」
「っ!」
次は姫が言葉に詰まる。対照的に白崎はいつものように悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「私のアプローチの方が黒部くんの気を惹いたから、悔しくて嫉妬してるんだ?」
「……」
「言い返せないか」
「ああもうわかったわよ! 脱ぎゃ良いんでしょ脱げば!」
「ちょっと姫落ち着いて! 流石に酔いすぎだよ!」
きっとアルコールを入れすぎたせいだろう、俺の目の前で本気で服を脱ごうとしている姫を必死に止めにかかるが、羞恥と怒りが半々の目に射抜かれて触ることすら躊躇ってしまった。
「あんたは逆に呑まなすぎ!」
「へ?」
「私らと同じところまで堕ちてもらうから」
「えっ? えっ?」
姫はそう言うと、コンビニの袋の中からロングのチューハイを取り出す。
「今日こそ本音を」
「ちょ、姫」
「吐いてもらうからね!」
「ま、待って!」
もしそれを飲んでしまえば、俺が吐くのは本音だけじゃないだろう。
「姫っ、落ち着いて!」
『テレンッ』
そのとき、背後で電子音が鳴る。それは携帯が再起動したときの音だ。
「ふぁ~、ちょっと仮眠取りましたぁ。あれ、皆さん、何を……」
ユリの顔を見た瞬間、全員血の気が引いていったのは言うまでもない。
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