2 思い出の樺太 (2)大泊の思い出【大泊中学入学志望】

 伏子の小学校を卒業した私は、二里程離れた留多加の町の高等科に入学した。最初の頃は、ここを卒業したら家業を手伝って漁業をやることになるだろうと、おぼろげながら考えていた。ところが私の入った高等一年のクラスは、このクラスが六年の時のこのクラスから四、五人の生徒が大泊中学に入ったことを知ったし、一年間このクラスで勉強しているうちに、猛烈に勉強したくなってきた。何とかして中学に進みたいと思った。懸命に勉強もした。一月の末頃だったと思うが、思い切って父に中学進学のことを頼んでみた。その頃は不景気の頃だったので、傍で聞いていた母は賛成でないようだったが、父はやる気があるならやってみよ、ということだった。これを聞いた時は本当に嬉しかった。


 中学の入学試験は、大して難しいものではなかった。この年留多加の小学校から尋常科高等科合わせて七人が大泊中学に合格したその中の一人が私だった。昭和二年四月六日、私は中学に入学するため、父に連れられ柳行李やなぎごうりを背負って伏子をたち大泊に向った。この頃は南樺鉄道が開通して間もなくの頃だったが、留多加から汽車に乗り新場を経て一時間程で大泊についた。

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