第9話 ダンジョン内に侵入者アリ
異世界5日目 ダンジョンの奥にて 仲間 ノーラさん、洞窟コウモリ×3、水のょぅ❘゛ょ
朝、ダンジョンの入口を警戒していたコウモリが、俺の部屋に来て警戒音を出す。
ついに冒険者が俺のダンジョンに侵入してきたらしい。
クリュティエに報告させると二十歳くらいの若者で、いかにも初心者ですという安い革の防具を身にまとっているとのこと。
「よし! 練習の成果を出してやれ!」
まずクリュティエで男の気をひくことにする。
誰だってダンジョン内に、いきなり『ょぅ❘゛ょ』が現れたら驚いて隙ができるだろ?
しかし、その冒険者は俺の予想より遙か斜め上の反応を示してきた。
クリュティエを見るなり、
「イエス!! ロリータ! ノータッチ!」
と叫んで、※プラトーンばりのガッツポーズをしたのだ。
嗚呼、この世界にも業の深い男たちが存在しているのか。
結局、味方が連携することなく、洞窟コウモリの連続攻撃で男にダメージを与え、持ち物を全て奪い取ってやった。
「何というか、思ってたのと違うなあ」
俺の溜息とともに、クリュティエはパンツ一丁の男を無造作にダンジョンの外へ放り投げる。
ま、手加減したので死にはしないだろう。でも、男が満足そうだったのは何故だ?
今回の戦闘? で革の防具一式と、ショートソード1本、上着、麻袋、パンと林檎が2つずつ、水の革袋が1つ、2枚の銅貨を手に入れた。
「ついに、お金ゲットかあ」
クリュティエに聞くと、銅貨1つで林檎が1個買えるらしい。
その日はこの冒険者だけしか侵入者はなかったが、ショートソードは俺のダンジョンマスター魂に火をつけた。
「これで、落とし穴が掘れるよな!」
作業が楽しい! 大汗をかきながら入口付近に2つの段差を作る。
足元が暗いと、こういった段差に冒険者が思わず躓いてしまうんだ。
そのタイミングで攻撃すれば、防ぐのが難しい。
昼に発生したのはまた洞窟コウモリだった。
それを横目に見ながら、ついにノーラさんは別のモンスターを召喚することに成功する!
「こりゃあ、召喚のレベルが上がったんだろうねえ」
目の前に現れたのは角モグラだった。
すぐにステータスを確認する。
角モグラ 体力20 力強さ2 魔法0 技量(攻)5/24 (防)7/24
モグラには頼みたいことがいろいろあるしラッキーだな。
すぐにコミュニケーションの練習をし、すぐに俺の言うことを聞けるようになったのは夕方になってからだった。
「さあ、ダイスケ! ご飯を食べてゆっくり眠りましょう」
ちゃっかり、俺の横に麻袋をしいていたクリュティエを足で踏んづけてどかし、一人で眠ることにした。
クリュティエは親指を噛みながら、
「ご主人様は、このような亭主関白プレイがお好きなんですか」
と拗ねた声を出す。
俺は聞かないようにして、ゆっくりと眠ることにした。
明日は、いろいろやることが多いぞ。
§
異世界6日目 ダンジョンにて 仲間 ノーラ婆さん、洞窟コウモリ×4、角モグラ、水のょぅ❘゛ょ
「本当にお前はよく働くなあ」
洞窟コウモリは子バエや蚊なんかを食べてくれるから、洞窟内は常に快適だ。
この1匹は言うことをよく聞いてくれるし、健気に戦闘までこなしている。
可愛い奴だよ。
背中をつついて甘えてくるしな。
「マスター。こんな顔がネズミっぽい奴とよく仲良くできますね」
クリュティエは、眉をひそめながら侮蔑の声を吐く。
仲間である洞窟コウモリへの優しさが全くない。
本当にお前は、心が真っ黒だな!
「クリュティエ、仲間ともっと仲良くしろよ!!」
「はいはい」
肩をすくめて、向こうへ行ってしまう。
本当にこいつはもう……。
ほら、コウモリが天井でしょんぼりしてるじゃねえか。
「お前、気にすんなよ。いつもよく働いてくれるし可愛いよ」
指で頭を撫でながら、洞窟コウモリを励ます。
何といっても、俺の代わりに戦闘してるからな。
嬉しそうに俺を見ているその顔は、やっぱ、ケダモノっぽいです……。
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※プラトーン(洋画 / 1986 ベトナム戦争を舞台に人間の闇を描いた作品。ジャケットのポーズが有名)
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