第7話 事案『ょぅ❘゛ょ』出現!
異世界3日目 ダンジョン入口にて 仲間 召喚師ノーラ、洞窟コウモリ
「マスター。このフィギアを召喚してはどうでしょう」
話し相手? 何で?
お婆さん、茶飲み友だちがほしいのかな?
お婆さんの提案の意図が掴めずに、俺は多分困惑した顔のまま考え込む。
「いえいえ、マスターを守るためのモンスターが側にいた方がええ」
横に毒ガエルがいたら逆に安心できないよと懸念を伝えると、婆さんはゆっくりとかぶりを振る。
「このフィギアの子は召喚が可能です」
おお、それは朗報だ。
洞窟コウモリと非言語コミュニケーションだけでは寂しいので、お願いすることにする。
「分かりました。では」
ノーラ婆さんは箱の中から少女のフィギアを取り出し、ゆっくりと地面に置く。
こいつは置いただけではダメなんだな。
婆さんが呪文を唱えると、地面に置いたフィギアが青白く輝き、煙と共に少女が現れた。
年の頃は12歳くらい?
美少女といって良い、整った顔立ち。
髪の毛も瞳も何もかもライトブルーの妖精が現れた。
事案発生じゃね?
「ノーラさん、こいつは何?」
って、お婆さん、フィギアに戻ってるじゃん。
ケースに触ったのかな?
誰かに襲われてもいけないし、ま、いいか。
そんな俺を見つめながら、少女は唇に右手の人差し指を当て、ウインクしながら挨拶をかましてきた。
「ご主人様、私は水の妖精クリュティエです。誠心誠意、お仕えします」
……ダメだろ、これ。
背徳感が半端ないよ。
声優の上坂すみ〇みたいな声じゃん。
オタ的にはドストライクなんだろうけど。
ステータスを確認すると、
水の妖精 体力26 力強さ1 魔法4 技量(攻)5/24 (防)5/24
習得魔法 泉LV1 水球LV1 水癒LV1
※特記事項有り
とある。
ステータスを見ながら、クリュティエをじろじろと確認する。
こいつ、水の精だかなんだか知らねえが服装がすでにアウトなんだよ。
ひらひらしたスクール水着っぽいものから、ふとももがばっちり出ちゃってるじゃん。
間違いなく保護条例に引っかかっちゃうよ。
俺の戸惑いを感じたのか俺の目の前に正座し、首をかしげながら、すっと目を見つめてくる。
「ご主人様?」
その言い方もアウト~!!!
お巡りさんに「君、ちょっと詳しい話を聞かせてもらえる」って職質されちゃうレベルですよ。
そんな俺の懸念をよそに、クリュティエはさらに顔を近づけてくる。
やばい、こんな時は、あの呪文だ!
「ノーロリータ! ノータッチ!!」
クリュティエの接近は止まり、ポッカーン状態で俺を見つめている。
俺にロリータ趣味は全くない。
そんな修羅の道よりも、レウコトエーさんみたいな綺麗なお姉さんが好きなのさ。
大きな、おっぱいもね。
そもそも、こいつ電信柱みたいな体型だよ。
凹凸がないのがよくわかる。
せめて、服装を変えてもらえないかな。
「クリュティエ、お前、別の服はないのか?」
初めての会話がこれ……。
「この服、お気に召しませんか?」
そう言うと、その服を脱ごうとする。
ああ!! 駄目だダメだ!!! 絶対ダメだ!!!
俺は後ろに振り返ると、目を瞑りながら、しばらく素数を数えることにする。
2、3、5、7、11、13、17、19……。
俺を修羅の道に引きずり込まないでくれ。
後ろ向きになった俺を尻目に、何かごそごそとやってるな。
どこから服を出してるんだ?
「はい、これでどうでしょう?」
振り向くと、ま、まあ、中世ヨーロッパでよく見るチュニックを着ていた。
これでいいか。
「で、クリュティエ。お前は何が出来るんだ?」
「はい。水を生み出すことと、水を前に飛ばすことができます」
ん? 水を生み出す? 本当か?
「水を生み出してくれ!」
クリュティエは両手をお椀みたいに丸め、その中に水を満たす。
これで水不足は解消だ!
生きられる時間が長くなったあ!!
「これは飲めるのか?」
「勿論です」
そう言って俺に差し出すので、俺はその手から直接水を飲むことにする。
何というか、どうしてこんなに犯罪者めいた気持ちになるんだ?
この絵面も端から見たら、まずいんじゃなかろうか?
「あ、ありがとう」
お礼を言いながら飲もうとした瞬間、顔に手がぶつかって、水がクリュティエの顔にかかる。
「ああ、もう……濡れちゃった……」
恍惚とした表情になっている。
お婆さん、もう、こいつ元に戻してくれよ。
なんというか、いちいち駄目なんだよ。
元に戻すためには、お婆さんと同じようにすればいいのか?
とりあえず距離を取りながら、コミュニケーションをとることにする。
「クリュティエ。お前を元のフィギアに戻すにはどうしたらいい?」
「お気に召しませんでしたか? ご主人様。やっぱり胸がないことですか?」
そういうとこだぞ。
「いいから教える!」
「黒いスーツケースに触れると元に戻ります。でも、ご主人様。ずっとお側にいさせてください」
健気にも深々と頭を下げているのを見ると、すぐフィギアに戻すのもためらわれる。
この黒いスーツケースって一体何なんだろう?
「それと、俺をご主人様と呼ばないでほしい! マスターでいい」
「マスター様?」
「マスターで!」
分かったと言うふうにクリュティエはニッコリする。
こいつ美少女だなあ。
あと10年もしたら、いい女になりそうだ。
「じゃあ、クリュティエ。ダンジョンのことを教えてくれ」
こうして、俺は洞窟コウモリ、『ょぅ❘゛ょ』とともにダンジョンで夜を明かすことになった。
これ、どういう状況なん?
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