第6話 仲間はいないのか?
異世界3日目 ダンジョン入口付近 仲間0
え?
こんなことある?
しばらく呆然としたまま、力が抜けて動けない。
テツロー作フィギアに檄似の美少女が連れて行かれたぞ?
こんなにあっさり?
俺は外の景色を眺めながら、あまりにも急激に変わる環境についていけなかった。
あんな美人さんが膝枕までしてくれたんだぜ?
他人にいいように弄ばれちゃうの?
様々な感情が俺の胸中を渦巻く。
やがて、その感情は言いようのない怒りへと変わっていった。
「ふざけんな!!!!」
マーガロスが俺に放った袋を思い切り壁に叩きつけると、中から潰れた林檎が2つ転がり出てくる。
俺はそれを拾い、涙ながらに頬張ると、体中に水分が染み渡っていくことが分かる。
甘酸っぱい味がレウコトエーを思い出させる。
あいつのダンジョンを攻略して、絶対に取り戻す(怒)
林檎を2つ食べ終わった頃、頭がようやく冷えてくる。
最優先事項をレウコトエー奪還にし、元の世界に返る方法についても平行して情報収集に務めることにする。
時間は太陽の位置から考えて、昼くらいと判断する。
今日も外の世界はのんびりしており、人っ子一人見えなかった。
今、所持しているものを確認して、使えるものは使っていかないといけないな。
投げつけられた袋は大きさが60cmくらいの麻製で、寝るときの下敷きに仕えそうだ。
あと、硬いパンが6個、2リットルくらい入りそうな革の水袋が2つ、林檎が残り3つ、15cmほどの丸いチーズが1つ入っていた。
ぎりぎり1週間ほど生きられる。
そのとき、目の前にいきなり1つのモンスターが出現した。
20cmくらいの黒いコウモリで、昨日の洞窟コウモリと同じに見える。
近くに寄ってくるところを見ると、昨日の個体より意思疎通は簡単にできそうだ。
ステータスを確認すると、
洞窟コウモリ 体力5 力強さ1 魔法0 技量(攻)5/24 (防)7/24
昨日のコウモリより少し強いのか。
個体差もあるんだな。
「よし、お前。ダンジョンの奥に何かいるか見てこい」
コウモリはパタパタと音をたてながら奥まで飛んでいき、すぐに戻ってくる。
昨日の個体より賢そうなのが気に入った。
「何かいたか? いたら1回、いなかったら2回、俺をつつけ」
すると、背中を2回、つついてきた。
そして、そのまま天井に飛んでいき、土にぶら下がるようにして休み始めた。
案外、いい仲間になりそうだ。
ただ、洞窟コウモリ1匹では、ダンジョンはすぐに攻略されてしまう。
罠を仕掛けようにも、掘るモノが何もない。
レウコトエーの話していた危険が、今も俺の側にまとわりついている。
持ち物で役に立ちそうなのは、副賞の純銀フィギアだ。
レウコトエーだって人間になったんだし、仲間が入っているかもしれない。
剣士やドラゴンが入っていれば、マーガロスを倒せるじゃないか。
それに……箱の中に綺麗な女の子が入っていたらハーレム状態になるんじゃね?
よっしゃあ、少し気分が上がってきた!!
張り切って開けた箱の中には、2つの純銀製のフィギアが並べられていた。
「モンスターのフィギアだな……」
俺のささやかなハーレム願望は、あっさりと打ち砕かれる。
伝説の剣士やドラゴンは入っていなかった。
しかも、フランス語のキャラ説明は全く読めないよ。
でも、見た目でモンスターの種類が何となく分かる。
1つ目は、ょぅ❘゛ょ? どう見ても、大人のお姉さんには見えない。
俺はノーマルだから正直興味ないし。
というか、この種族、何?
あんまりマジマジと見ないようにして元の場所に戻す。
俺は普通のお兄さんだからね。
2つ目は服装からして魔術師っぽいな。
老婆だからハーレムには入れないけど……。
フィギアを手にとっても何も起こらない。
もしかして、呪文があるのか?
レウコトエーはどうやって実体化したんだろう?
「駄目だこりゃ」
思わず地面に放り投げる。
地面についた瞬間、通路に1mほどの灰色の煙が広がり、その煙が収まる頃、身長140cmほどの老婆が現れた。
ローブを身にまとった……アニメでよく見るタイプのお婆さんだった
「はい、はい。なんでしょう? マスター」
レウコトエーと同じマスター呼びでも、嬉しさが全くわいてこない。
田舎のお婆ちゃんとの夏休みを思い出すな。
でも、話ができることは正直ありがたい。
ステータスを確認すると、
召喚師 体力16 力強さ1 魔法1 技量(攻)2/24 (防)3/24
習得魔法 召喚レベル1
戦闘は無理だな。
思わず正座になり、お婆さんに質問する。
「お婆さんは何者ですか?」
「
えっ? やっぱりステータス通りですか?
よっしゃあ!!! これで、ドラゴンとか召喚すればいいじゃん。
安泰のダンジョンライフが始まるんだね。
見てろよ、マーガロス! すぐにドラゴンブレスで焼き尽くしてやるからな!
「無理。私の召喚レベルまでのモンスターしか召喚できんよ。1日に1回ね」
え? あっさり否定。はい、終わった。
でも、魔法1ってのは、魔法を唱えられるのが1回ってことだな。
ますます、ゲームとそっくりだ。
「俺の名前はダイスケ。お婆さんのお名前は?」
「わたしはノーラと申します。マスター」
再び、話し相手ができてよかった。
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