第20話 これからは仲良しさん
今になって思えば僕が話をしている間ずっと雪ちゃんの顔を見ていなかった。
だからあの時、雪ちゃんがどんな顔でどんなことを思って僕を暗闇から引っ張り上げくれたのかわからなかった。
でも話を聞いていたら、雪ちゃんは雪ちゃんで友達がいなくて、ひとりでいる僕に話し掛けてくれたのかも……自分を可愛いって言ったのも僕を笑わそうと自虐ネタを言ってくれていたのかもしれないのだと、当時の僕はそう思っていたのだ。
「私の名前は
「僕は小学3年生。
「雪ちゃん、か。私そんな感じで呼ばれたことないから今すっごく嬉しい! 私は桜田君のことゆー君って呼ぶね。何か良いと思わない? ゆー君と雪ちゃんって呼び合うの。ほら距離が縮まった感じがして、これからは私たちは仲良しさんだね!」
雪ちゃんはそう言って微笑み掛けてくれる。
この時、初めて僕は雪ちゃんの顔をまともに見た気がする。それまではチラチラ見たり、目を合わそうとはしなかったから。
「これから私たちは仲良しさん」こんなの誰でも言える言葉のはずなのに、雪ちゃんが言うと妙に説得力がある気がして、親から貰ったプレゼントや褒め言葉なんかより何倍も何十倍も、いや何百倍も嬉しかった。
心の底からそう思えたんだ。
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