第17話 僕の宝物
ゆーくん、そんな呼び方をするのはただ1人。
会うといつも明るくて、元気で無邪気な女の子だった。その子のことを僕は一度たりとも忘れたことはない。
だってその子がいたからこそ、僕は小学生のとき楽しく過ごせていたんだから。
大切な思い出、いやそうじゃない僕にとってはかけがえのない宝物だ。
あの子が弱い僕を認めてくれた、それに人の優しさを教えてくれたのだ。
だがらこそ僕は今になっても弱いままでいる。
彼女が『それでいいんだよ』って言ってくれたから。
「雪、ちゃん?」
「やっと思い出してくれた? 私はあなたの初めての友達でしょ」
「やっぱり雪ちゃんなんだよね?」
「だからそうだって――」
僕は堀宮さん、いや雪ちゃんの胸の中に飛び込んだ。
いつぶりだろう?
こんなにも嬉しくて心にぽっかりと空いた穴が満たされていったのは……。
「雪ちゃん雪ちゃん!」
「はいはい、今までよく頑張ったね。よしよし」
久しぶりの雪ちゃんとの再会に嬉し過ぎて涙が溢れてくる。
「相変わらず泣き虫なのね。でも私はちょっと嬉しいかも……ゆーくんがあの時のままでいてくれて」
この温もり、匂い、話し方、何で今まで気づかなかったのだろう。
ここに来てからずっと僕の側にいてくれたのに。
そんな罪悪感で僕は一杯になっていた。
雪ちゃんはずっと僕を覚えていた。
おまけにアピールまでしてくれていた。
でもあえて自分から言わなかったのは、多分僕自身にきちんと思い出して欲しかったからなのだろう。
いつも一緒にいたあの日のことを……。
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