こりないやつら

「行け。そして仲間たちにこのことを伝えろ」


「は、はいッ!!!」


 銃士たちを開放すると、彼らは何度もこちらを振り返りながら去っていった。

 仲間に伝えろっていってるんだから、背中を撃ったりはしないでしょ!

 もう、信用ないなぁ……。


『ジロー様、これで一件落着、かな?』


『そうしたいところだけど……あと一手かな』


『?』


『魔国を攻めるという王女の狙いがある限り、彼らは何をしてでも転移者のレベルを上げようとするはずだ。モンスター狩りができなくなれば、他の方法を探すはず』


『あ、そっか……』


『次は何が狙われるかわからない。連中の動きをよく見ておかないと』


『モンスター以外のモノを襲う、かも?』


『そうだね。レベルはエーテルを持つ存在を倒すことであがる。だからモンスターに限らず、人間もその対象に入ってしまう』


『またスラムが襲われたら大変……!』


『他にも想像できるね。たとえば、狼人のような人間以外の種族を狙ったり、少数の部族を狙って攻撃を仕掛けるなんてこともやりかねない』


『うん……森に手を出せなくなったら、もっと弱い相手を狙う、かな?』


『でも、連中をずっと見張ってるわけにもいかないんだよなぁ。今回はたまたま見つけられたけど、他にもレベル上げをしている部隊はいるだろうし』


『キリがないね……』


『そうだね……あ、そっか。人工衛星自体に監視をお願いできないかな?』


 レコンヘルメットにはAIが搭載されている。

 ヘルメットのパーツを積んだ人工衛星にもAIが入っているはずだ。

 それを使ってなんかうまいことできないだろうか。


『ヘルメット、王都を中心をして、地上の軍事活動を監視できないか?』


肯定ポジティブ:指示により24時間の監視活動を開始します。報告のしきい値を設定してください』


『しきい値?』


『説明:報告を必要とするエーテル源の移動数、また規模を設定してください。推奨設定<小隊規模の軍事活動>エーテル源移動数50。サイズ、中。』


『うーん……よくわからないけど、それで設定するとどうなるの?』


『説明:小規模の軍事活動の発見が可能です。報告のしきい値をこれ以上小さくすると、日常的な物資輸送や警備にも反応する恐れがあります』


『そっか。毎朝のおまわりさんの巡回で引っかかってピンピン鳴られても困るな……。うん、それでお願いするよ』


『報告:パラメーターを設定しました。初期スキャンを開始……活動を検知』


『えっ?』


 衛星からの画像がぐっと引きになると、水面に石を投げ込んだような波紋がいくつもひろがっていく。波紋は大小さまざまで、東西南北、いたるところにある。


 いや、多すぎでしょ。


『えぇ……?』


『報告:設定されたしきい値で検出された軍事活動の兆候はXXX個です。』


『いやだから多すぎでしょ!』


 いや、まてよ? 冷静に地図を見てみると、波紋は目の前の森の中にもある。

 きっとシュラウトたちだ。

 なるほど。手当たり次第に表示してるからこうなってるのか。


 もしやと思って湖をみてみたが、湖の中にも特大の波紋があった。

 輪の大きさと太さは……だいたいだけど、シュラウトの5,6倍くらいかな?

 うん、これは見なかったことにしよう。


『ヘルメット、さっきの銃士隊に限って表示できる?』


『肯定:エーテル源をソート……設定で検出された兆候は3個です』


『でかした! これでかなり見やすくなったぞ』


 ヘルメットに指示すると、衛星地図に広がる波紋はたったの3つになった。

 いま活動している銃士隊はこれで全部か。


 1つはいま俺が衛星砲でぶちのめした部隊で、あとの2つはここからみて南北の離れた場所にいる。


 北の部隊はここからずっと北にいったツンドラに展開していて、どでかい野戦用の大砲を並べている。いったい何を相手にしているやら……。


 他方、南のいる部隊は海に面した岬にキャンプを張っていて、沖に1隻の水上艦が浮いていた。軍艦を用意してるってことは、海のモンスターを相手にしてるのかな?


『連中、こんなところにまで足を伸ばしてるのか……』


『ジロー様、どうするの?』


『うーん……ぱっと見、この2つはまだ動く様子は無さそうだね。人工衛星に監視を任せることにするよ。何かあったら報告してくれ』


『報告:対象をマークしました。監視を継続します。』


『うん、ありがとう』


 俺はふと、トラックが逃げ帰った先が気になって視点を移してみた。


 銃士隊はここからすこし離れた場所に宿営地を作っているようだが、上空からみてもわかるくらいに、てんやわんやになっていた。


 戦車を失った彼らは、シュラウトに逆襲されることを恐れたのだろう。

 宿営地にあるものを手当たりしだいトラックに押し込めて店じまいを始めていた。

 トラックが出発するまでに、戦車兵がキャンプにたどり着くと良いが。


『よし、このまま帰ってくれよ……』


『ジロー様、私たちはこれからどうするの?』


『うーん、これまでと変わらないかな? いつも通り冒険者として依頼をこなして、ランクを上げるだけだよ。こりないやつらには星を落とすけど』


『うん、わかった!』


 今日のところはこれでオールドフォートに戻ろう。

 人工衛星を打ち上げにきただけなのに、何か大事になっちゃったなぁ……。



◆◇◆



※作者コメント※

報告:本時刻をもって新要素が追加されました。


説明:大規模討伐に失敗した銃士隊は、より小規模なモンスターの討伐を試みるようになりました。クエスト中に転移者、または銃士隊が乱入する可能性があります。


結論:難易度☆爆増☆

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