鋼の嵐

久しぶりのレベルチェック

 ――数日後のオールドフォート。


 依頼を無事終えた(?)俺たちは、要塞に戻った後、レベルとスキルの確認をして、態勢を整えることに集中することにした。


 ここ最近は依頼という名の厄介事が舞い込みすぎだったからな……。

 手に入ったものを並べて、色々を整理をつけたかったのだ。


「さーて、最後に確認したのはいつだったか……ステータスオープンっと」

「…………!(ふんすっ!)」


 お決まりの文句を口ずさむと、俺とマリアの眼の前にウインドウが現れる。

 

『ジロー・デガワ LV16 創造魔法 活人剣』

『マリア LV22 聖騎士』


『おぉ~!』


『ジロー様もすごいレベル上がってる!』


『戦いの毎日だった甲斐があったなぁ……。マリアのLVもついに20の大台だね。たしかこのLV帯って、無名戦士たちと同じぐらいだったっけ?』


『うん。軍人さん、兵隊さんは、だいたいこれくらい、かな?』


『お~! いっぱしの冒険者感が出てきたね』


『でも、ゲンダイヘイキを使ってる銃士は30くらい、かな? まだまだ、かも』


『そっかぁ。そういや銃士は普段から組織的にモンスターを狩ってるんだっけ……。もうすこしLVをあげないと、まだ地力では勝てないか~』


『うん……まだまだ。でも私たちが戦うのはモンスターだから、スキルのほうがもっと重要、かな?』


『スキルでエーテルをうまく操作できれば、すこしくらいの差はひっくり返せるってサイゾウさんも言ってたからね』


『うん!』


『そうだ。スキルの成長も見てみよう。どれどれ……?』


 マリア


・聖剣技   LV9 > LV12

◯聖火(武器に光のエーテルをまとわせる)

・神聖魔法  LV2

◯威光(衝撃波で相手をひるませる)

・加護    LV5

◯聖盾(エーテルの盾を展開し、攻撃を防ぐ)


『お、マリアの聖剣技が上がってるね』


『いっぱい使ったから。でも、今のレベルは22。10レベルも差がついてる。練習あるのみ、かな?』


『そうだね。スキルはレベルと同じ数字まで上がる。マリアの聖剣技の伸びしろはまだまだあるはずだ。新しい技が使えるようになるかも』


『うん。スキル、もっと練習しないと……』


『幸か不幸か、あまりスキルをつかわずにモンスターを倒せてきたからね……』


『だって、ジロー様の創造魔法が強すぎるんだもん』


『う、確かにスキルを上げる機会を奪ってたかもなぁ……。マリアのスパーリング相手を探すかしないと、このままだとスキルとレベルの差が開いていく一方になりそうだ。それはちょっとまずそうだね』


『スキルを使って練習するしかない、かも?』


『だね。うーん。スパーリング相手の心当たりかぁ。サイゾウさんは……普段忙しいからナシだなか』


『リリーさんもダメ。依頼が終わった後、どっかいっちゃったから……残念』


 マリアは残念そうに目を伏せて肩を落とす。リリーは依頼の後、俺たちに報酬を渡すとまた別の場所に旅立ってしまったのだ。


 俺は「ジャークシャークもサメハウンドも倒してないのに受け取れない」と報酬の受取を辞退しようとした。


 だが、リリーさんは「私だけでは研究所の仕掛けは決して解くことはできなかった。君がやったことに報酬を受け取る価値はある」といって、俺たちが依頼を達成したようにとり扱ってくれたのだ。


 まぁ……実際のところ、依頼が終わったその後のほうが大変だったのだが。

 なぜなら、公然の秘密だった研究所の存在が明らかになってしまったからだ。


 ジャークシャークの出現、そしてリリーが奪った戦車の上に乗っていた大量のキメラの死骸。それらの証拠がキャンプ客の目に入ってしまった。


 キャンプ客が王都に戻れば、職場や学校といった日常に戻ることになる。


 そこで彼らは、推測と脚色を加えて友人や職場の知り合いに森の中の秘密研究所とそこであった実験のことを伝える。そして友人たちは、王都のあちこちのバーで今日聞いた話をアルコールで軽くなった口で喋りまくる。聞く相手の頭も酒で鈍っているから、突拍子もない話も「真実」として受け止められる。


 その結果、王都は秘密研究所とキメラの話題でもちきりとなってしまった。

 しかし事実と異なる部分も多い、というか真実の部分のほうが少ない。


 ちまたのウワサの内容は、こんな感じだ。


 ……森の中の秘密研究所では、古代の禁術を利用してキメラを作る実験が行われていた。狂った魔法使いは自身の体もサメに改造したが、彼は魔国の秘密工作員であり、王国を破壊しようとしていたのだ。


 ついにサメ軍団が王都に向かって進軍を始めたが、放浪騎士リリーによってこの陰謀は阻止された。実はリリーは王族の隠された一員であり、王国を救うために各地を放浪して戦っているのだ。


 彼女はジャークシャークはより大きい陰謀の前触れでしかないと言い残し、姿を消した。というものだ。


 ――うむ。メチャクチャである。


 リリーさんが王族になってる意味がわからないし、ジャークシャークが王国の指示で研究をやっていたことも、いつの間にか魔国の仕業にすり替わっていた。


 きっと王政の支持者が都合のいいようにウワサを「調整」したんだろう。

 いやはや、陰謀論ってこうしてうまれるんだなぁ……。


『リリーさん、どこいっちゃったんだろうね?』


『彼女のことだから、またどこかで会えると思うけどね。となると……あ、無名戦士のゴーストたちはどうかな? 丁度同じくらいのレベルだし』


『うん、いいかも!』


『よし、そっちは今度行ってみるとして……僕の創造魔法の具合はどうかなっと』


・活人剣 LV3

◯みね打ち(対象を気絶させる。対象のレベルとの対抗チェック)

◯武装解除(対象の武器を破壊する。対象のレベルとの対抗チェック)


・クリエイト・ウェポン LV14

◯タキオンランス ◯セントリーガン ◯サテライトキャノン

・クリエイト・アーマー LV13

◯クアンタムハーモナイザー ◯レコンヘルメット ◯レコンスーツ

・クリエイト・フード  LV10

◯強化栄養食 ◯三等娯楽食 ◯D級英雄食

・クリエイト・ドラッグ LV4

◯なんでも治療薬


『うーむ。情報量が多い……』


『なんかいっぱい!!』


『まぁ、確実に成長はしてるみたいかなぁ。ふーむ……』


『どうしたの、ジロー様?』


『いやほら、僕のレベルって今16でしょ? で、クリエイト・ウェポンもアーマーも、もう少しでキリのいいところまで上がりそうだから、スキルを鍛えるのとついでに、ちょっとしたアイデアを実現してみようかなって』


『アイデア……?』


『うん。リンを連れてこよう。このアイデアの実現には、きっと彼の力が必要だ』


『????』



◆◇◆



※作者コメント※

すみません。更新遅れの理由は整合性チェック(失敗)のせいです。

実は、以前の最新レベルをどこに書いてたのか見つけられませんでした。

(スキルをその場のノリで書いたりするからだよ…

たしか「戦いの前のレベルチェック」が最後だったような…でも、その後に書いたような記憶も。間違ってたら指摘お願いします。


スキルとレベル関係の情報は下書きのまま公開しない話にメモとして書いておこう…

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