未来のベッド
「おぉ……!」
「…………!(ぱちぱち!)」
グレムリンが作り出した未来的なベッドに対し、俺たちは驚嘆の声を上げていた。
もしやと思ったが、想像以上にうまくいってしまった。
レコンヘルメットを改造した彼の作品を見た俺に、ある考えが浮かんだ。
俺の出した機械を使って、この子ならベッドを作れるのではないか、と。
そして、それは正しかった。
俺は石の塔にネコチャンを連れて行って、創造魔法で出せるだけの機械を出した。
そして「ベッドを作ってくれないか?」と、この子にお願いしてみたのだ。
最初のうちはぐでんと横になって、尻尾をふりふりするだけだった。
風呂敷の上に並べられた機械を、グレムリンは金色の瞳で気だるげに眺める。
やる気なさげなその様子に、一時はダメかとおもった。
だが、グレムリンはふと何かを思いついたようにして立ち上がると、セントリーガンとシールドベルトを一瞥して5本の尻尾で解体し始めたのだ。
まず彼は、セントリーガンの中からいくつかのパーツを抜き出した。
砲座を保持するための鉄の足、そしてバッテリーやモーターらしきもの。
その次にグレムリンはシールドベルトに視線を向けた。バックルをパカッと開き、中にあったディスク状の物体をセントリーガンの足に取り付ける。
作業を見守っていると、突然「ブン!」と音がした。
みると、セントリーガンの足の間にぼんやりと輝く光の膜が張られている。
どうやったのかわからないが、グレムリンはシールドベルトが展開するシールドを使って、巨大なハンモックベッドを作ったのだ。
セントリーガンの足が作った三角形の間で、光の膜がチカチカとしている。
当のネコチャンは、制作者の特権を駆使してそこで寝そべっていた。
ネコは呼吸するたびに小さなお腹を上下させていた。息を吸って吐く。その繰り返しに合わせて、タンポポの綿毛のような細やかな腹の毛が泳いでいた。
「…………!(そ~っ)」
マリアは寝そべっているネコチャンの横に忍び寄るようにして座る。
おぼろげな光の膜は、しっかりと彼女の体を支えていた。
『わ! ジロー様、これ楽しいよ!』
輝くハンモックに乗った彼女は、そういって満面の笑みを浮かべる。
光の膜は、強い弾力を持つようだ。
彼女が光の上で立ってジャンプすると、光はマリアの体をトランポリンのように押し返して、天井近くまで小さな体を持ち上げた。
しかし、ジャンプの余波でネコチャンが激しく揺さぶられている。
うみゃうみゃと鳴いて、とても迷惑そうだ。
『やめなさい、一緒に寝てる子が迷惑するでしょ!』
『あ、ネコさんごめんね……』
ジャンプをやめたアマリアは、ネコチャンによしよしする。
が、彼は不機嫌そうにぷすーと鼻を鳴らした。たいそうご立腹の様子だ。
なおもマリアがなだめようとするが、その思いは通じなかった。
グレムリンはベッドのはじっこ目がけ、転がるように逃げていった。
『ネコチャン、あー、ネコチャンいっちゃった』
『さて、僕も乗ってみるとするか……おっ?』
マリアに続いて、俺も光のベッドに乗ってみた。
そこで感じたのは、今までにない新感覚だ。
『これは……天国か?!』
『ね! このベッド、雲の上にいるみたい!』
普通、ベッドというものはどこまで柔らかくても「底」がある。
綿やスプリングはいうまでもなく、ゴミ袋に水を入れてウォーターベッドだぜ~!ってやって妹たちと遊んでいた時ですら、浮遊感の下に、独特の刺激があった。
だが、この光のベッドにはそれがない。
シールドベルトから取り出されたシールドは俺の体をしっかりと支えている。
がだ、そこに俺の体を押し返すような無粋な力は存在しない。
体重が全くのゼロになったような、なんとも不思議な感覚だ。
『すごい……』
俺はマリアのようにベッドの上に立ち上がってみた。
ふわふわとして奇妙な感じだ。
俺は試しにジャンプしてみた。
するとベッドは、俺の体をより高い場所に持ち上げる。
押し返す感じがないということは、反作用がないということだ。
なのにトランポリンのように跳ねられるなんて、どういう仕組だろう。
さすが未来のテクノロジーといったところか?
いつかの時代、どこかの文明の超科学は、俺の理科や物理の知識を超越している。
しかしそれでも、唯一明らかになっていることがあった。
『これなら子どもたちを雑魚寝させることができるね』
『うん!』
仕組みはどうあれ、ベッドがあるという事実のほうが重要だ。
これでもう、背中の痛みとはおさらばだ!!
◆◇◆
※作者コメント※
宇宙空間とはまたちがう、重力下での無重力ベッドとかどんなのだろう…?
Q:何でベッドなのに三角形なの?
A:ベッドを四角形にすると、足の位置によって力場の対角線が重なり、どの面に力場を張るべきか機械側が判断できなくなるというエラーが発生するためです。その問題の回避のために、(ΦωΦ)は面としての最小単位である三角形を採用しました。
さて、ほんわか日常パートが続きましたが、そろそろ戦闘パートの準備に入っていきますよ。フフーフ……。
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