資料集:手話リスト

 ※重要※

 本話は飛ばしても本編の理解には問題ないです!


 こういう設定系を読むのが好きでたまらんという業の深い方向けです。あと、もうこの意味の手話考えたっけ? ってなってる作者のために作られています。


 以下は一章終了時点で判明している、異世界の手話のリストです。


「ついてこい」

 体の前で両手の人差し指をくっつけて、すすすっと右から左に動かす。


「2対1」

 左手に2本の指を立て、右手に1本の指を立てる。

 そして指どうしを激しくぶつける。


「長い」

 両手の指をコの字にして左右に広げる。汎用表現。

 注:汎用表現とは、他の手話と組み合わされる表現のことです。


「わかりました」

 手をあわせて、頭でうなずく。


「打ち消し・ない」

 人差し指と中指、2本の指を伸ばして左右にチッチッチと振る。汎用表現。


「疑問形・?」

 首を傾げる。汎用表現。


「静かに」

 人差し指を伸ばして唇に当てる。


「急いでやる」

 左手で握りこぶしを作り、右手の指差し指でこぶしを何度も素早く指さす。

 握りこぶしは「何かのモノ」をあらわす汎用表現。

 左手の握りこぶしが人差し指と小指を伸ばして横になっている場合、それはモンスターをあらわし、意味は「モンスターを早く倒す」になる。


「それは何?」

 指で何かをつまむようなジェスチャーをして、首を傾げる。


「あっちにいけ」

 指を伸ばしてそろえ、扇状にした手で下から上に払う。

 水平に払うと逆に「こっちに来い」の意味になる。


「やんのかコラ・あれを攻撃する」

 対象を指さしたあと、拳で素振りをする。


「処刑・罰を与える」

 人差し指と中指を立ててそろえ、首の前をかするように振る。

 首を指で切るような仕草。


「いっぱい・たくさん」

 両手で大きなさかづきをつくる。


「協力する」

 左手をチョキの形にして、ハサミのように指を閉じたり開いたりする。

 そしてもう片方の手でチョキの手を包みこむ。

 チョキを動かすのは、人が何かをやっている様子をあらわしている汎用表現。


「危ない」

 熊手のように開いた手を胸に当てる。

 モンスターに心臓をつかまれるようなジェスチャー。


「安全・守る」

 盾を使って剣を弾くことがモチーフになったジェスチャー。

 拳を握った左手を盾を構えるように前に出し、右手で前腕をチョップする。

 チョップは外側から、左手に弾かれる様に動かす。





●異世界の手話の背景


 異世界の手話は、複雑な歴史と文化的背景を持っている。

 それを説明していこう。


 ジローたちが転移した異世界では、手話が広く使用されていた。

 この世界では聴覚障害者だけでなく、発話に制限がある奴隷や亜人、さらには知性を持つモンスターまでもが手話を使用している。


 というのも、この異世界では手話が普及する条件が揃っていたいたからだ。


 異世界ではかつて、「交易共通語」という多国家間で通用する人工言語を作成する試みがあった。しかしこれに他種族も入ってくると、手話の方が実用的だった。


 狼人族や魚人族などの亜人種は、人間と発声器官が異なる。

 狼人族は唇を閉じれず、舌が長く人間と同じ発音が出来ない。そして魚人族も水中に生息しているため、空気を振動させる器官を持っていなかった。


 発声器官が異なる亜人たちは、交易共通語を使っての会話ができない。

 そのため、亜人との対話には古くから手話が重宝されていた。


 亜人は人間と同様に五指の手、頭部、表情筋を持っている。

 ゆえに手話を使うことに何の問題もなかった。


 辺境で行われていた亜人との交易では手話が伝統的に用いられ、時間をかけて手話が表現できる事柄が増え、語彙が充実していった。


 また、異世界人は言葉がしゃべれないことに対して、とある〝偏見へんけん〟を持っていなかった。これも手話が世界に広まった理由だった。


 ジローたちの世界では、聴覚障害者に対する偏見が根強く存在していたのだ。


 例えば、古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「耳の不自由な者は、決まって知能が低い」と考え、古代ローマでは、「耳が聞こえない者は読み書きを学ぶことができないため、物事を理解する能力がない」とされていた。こうした偏見が、ジローの世界で長らく手話の発展を妨げていた。


 しかし、異世界ではそのような偏見は見られない。


 この世界では、農民から王族まで、幅広い階層で身振り手振りを使ったコミュニケーションが行われていた。彼らは「言葉が喋れないものは、必ずしも知性が低いわけではない」と、経験則から知っていたのだ。


 また、異世界の手話の発展には、冒険者ギルドが大きな役割を果たした。

 400年前、シルニアの冒険者ギルドが戦闘で使用するジェスチャーをもとに正式な手話を考案し、手引書を作成する。これが手話システムの洗練と発展に繋がった。


 異世界の手話は改良が続けられ、単なるジェスチャーの連続ではなく完全な言語システムを持つにいたった。統語構造を有し、手指や腕の動作のみならず、顔の表情、足踏みなども重要な要素として含まれている。語順はSVO型であり、平叙文、疑問文、否定文、条件文など、音声言語に見られる標準的な構文が存在する。


 異世界の手話は、単なるコミュニケーションの手段を超えた〝文化〟だ。


 手話の成り立ちは異世界に住む他種族の文化や歴史が関係し、人間だけでなく、亜人やモンスターに由来する表現も多々盛り込まれている。


 異世界における手話は、ヒト以外の知性ある生物とのコミュニケーションを可能にしただけではなく、他種族の受容といった思想、文化面にも影響を与えている。


 異世界の手話は、ジローたちの世界のそれとは全く異なる背景を持っているのだ。



◆◇◆



※作者コメント※

これ以上設定書くと「耳が聞こえないからと実家を追放されましたが、手話を使って亜人やモンスターたちを仲間にして最強です」とか作れそうな気がしてきた…

いや、それもそれで面白そうだな? 今度やるか?(お目々ぐるぐる)

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