戦いの前のレベルチェック


 吸血鬼の存在を知ったアインは、完全に縮み上がっていた。

 これでは戦いの役に立たないどころか、逆に危険だ。

 そのため、俺はいったんアインをトンネルから出すことにした。


 外に出ると、ヤツはホッとした様子で仲間のところに行くと言い出した。

 イヤな感じがしたが、止める理由はない。

 俺は仕方無しに彼を仲間のもとに送り出した。


『ジロー様、よかったの?』

『あのまま居られてもジャマにしかならないし、君の頭痛がひどくなる』

『うん』


 即答!? 本当に嫌われてるなぁ。まぁ……実際好かれる要素ないよね。

 俺とマリアに初手罵倒かましてきたし。


 人によってはアレに痛快さとか感じる場合もあるんだろうか。

 でもヘイトスピーチかまして集まる人間関係って、すぐ崩壊しそう。


 ――さて、土手に腰を降ろした俺たちはステータスを確認する。

 さてどうなったかな……。


「ステータスオープンっと。――お?」


『ジロー・デガワ LV5 創造魔法 活人剣』

『マリア LV14 聖騎士』


 俺とマリアはふたりともレベルが上っていた。

 俺は2、マリアは1あがっている。

 一回の依頼ごとにレベルが上がるなんて、なかなかいいペースだ。

 ま、最初のうちだけかもしれないけど。


『スキルもちょっとあがったみたい!』

『ほうほう?』


・聖剣技   LV8 > LV9

・神聖魔法  LV2

・加護    LV4 > LV5


 マリアのスキルが地味にあがっている。

 聖剣技はもうすこしで10か。

 こういうのって、10になるとなんか覚えそうな雰囲気があるよな。

 たのしみだ。


 さて、俺のスキルは……


・クリエイト・ウェポン LV1

・クリエイト・アーマー LV3

・クリエイト・フード  LV3

・クリエイト・ドラッグ LV1


『うん、変化なし! 創造魔法は物をつくらないと上がらないからなぁ。

――というわけで、早速スキルを使っていきます!』


『わ~! ジロー様、何を使うの?』


『そうだなぁ……クリエイト・ウェポンはあんまり使ってなかったね。これにしよう。もしかしたら今回の戦いに役立つものが出てくるかも』


『うん、きっとでてくるよ!』


「――よっしゃ、まずはいつもの『クリエイト・ウェポン』!」


 俺は呪文を唱え、未来の道具――「タキオンランス」を作り出した。


 うん。あいかわらずオモチャにしかみえない。


 しかしこの銃は、先の戦いでゴーストのスキルを跳ね返し、そればかりか光の刃をつくり出して、相性なんかではどうにもならない実力差のある相手を一撃で沈めた。


 武器としての性能だけをみれば、はるかに現代兵器を上回っている。

 きっと、どこか未来の世界で使われている兵器なんだろうな。


『これ、ふたつめはマリアが持ってくれるかな?』


『え、いいのジロー様?』


『あぁ。この武器はマリアに持っててほしいんだ。ほら、マリアがいってた〝ブラッドサッカー〟って、姿を消して襲いかかってくるんだろ?』


『う、うん……』


 マリアは俺が差し出した〝タキオンランス〟をそっと手に取って抱きしめた。

 そ、そこまで大事にしなくてもすぐ出せるから……まぁいいか。

 粗末に扱ってるわけじゃないし。うん。


『無名戦士のゴーストと戦った時、雪崩なだれを起こすスキルを使われてもうだめだって思った時、なぜか消えたでしょ。実はこの道具がやったみたいなんだ』


『そうだったの?』


『あぁ。だからお守り代わりに持ってて。きっと守ってくれるはず』


『うん、わかった!』


『あとはあの光る剣も出せるみたい。これでおそろいだね』


『――え「光の剣」もそうだったの?!』


 彼女は突然目をキラキラさせて銀色のピストルを見つめた。

 その様子は、あこがれと夢が一緒になって瞳に詰まった感じだ。


 お、おぅ……?


 マリアをそんなにさせる「光の剣」ってなんだろう?

 この異世界に伝わる伝説の武器かなんかだろうか。


『マリア、その「光の剣」って何のこと?』


『えっとね「光の剣」は昔々、星の光から作られた剣なんだって。太陽が隠れて、世界が真っ暗になったときに現れて、新しい光になるんだって……』


『古いおとぎ話のなかに出てくる伝説の剣、みたいな?』


『うん。その者、星の光が宿りし剣を手に闇を払う……大地と空に悪が満ちる時、くらやみの雲を払い、星の光が大地を貫かん。空と大地に光が満ちあふれ、暁来る……ランスロットおじさんが教えてくれたの』


 う……。これからその瞳をがっかりさせる話を伝えなきゃいけない。

 ちょっと心が痛む。


『実はこの武器、いつもは使えないんだ。持っている人に本当の命の危険があった時しか力を発揮しない』


『えっと……眠ってるっていうこと?』


『うん、そういうことかな』


 タキオンランスは本当に必要なときにしか使えない。


 この武器には、現代兵器以上にきびしいセーフティがついている。

 所有者に命の危険があるまで、ただのオモチャと変わらない。


 まぁ、それも当然だ。

 おそらくこの武器は、今よりずっと先の時代、未来に存在する強力な武器。

 現代兵器以上に安全に気を配るのは当たり前だろう。


 ディストピア飯からはなかなか想像しづらい。

 だが未来人はあんがい「正気」だったのかもしれない。


 こんなの見境なくブンブンしてたら、この国あっという間に滅びそうだもん。

 もとの世界だってあぶなそうだ。


『マリア、がっかり……――してないね?!』


『ふだんは眠ってるけど、いざというときに目ざめる力……カッコイイ……! 眠りし聖剣は、所有者の危機で目がさめる……!』


 あかん、マリアって案外ミーハーだったの?!

 すごい勢いで誤解されてるぅ!!



『ジロー様、どういう武器をそーぞーするの?』


「そうだな……どういう武器を創造してみるか……」


 今回の相手は姿を消して、俺たちを襲おうとするだろう。

 なら、敵を探すことに特化した武器なんてどうだ?


 敵を探し、追い詰める。そしてバシッっとやっつける。

 そんな武器を想像するんだ……さあ――こいッ!


「クリエイト・ウェポン!!」


 光が集まり、細くて四角い形を取る。

 さぁ、いったい何が来る……?


<――カッ!>


「わわっ!」

「…………!(ビクッ!)」


 光が収まると、創造された武器が姿を現した。

 見た目はそう……メタリックなアタッシュケースって感じ?


「おっと、まずこれの名前を確認してみよう。機能とか使い方がわかる、そのまんまな名前だといいけど……」


 俺はステータスを開き、名前を確認する。

 さてはて……。



・クリエイト・ウェポン LV3

     :タキオンランス

 NEW!!:セントリーガン…



 お、今回はわかりやすい名前のが来た!!

 セントリーガンってゲームでよく出てくるやつじゃん!!


 セントリーガンとは、ビデオゲームに登場する自動砲台のことだ。

 その役目は、敵を自動で感知して攻撃すること。セントリーガンはセンサーで周囲を監視し、動くものを見つけるとその方向に向かってレーザーや弾丸を発射する。


 ゲームに出てくるこの手の武器は、かなり頼りになる。 

 プレイヤーが設置すると、エリアに侵入する敵を自動的に倒すのはもちろん、敵の攻撃を防ぐオトリになったりもしてくれる。


 うむ。今回の吸血鬼相手にはもってこいの武器じゃないだろうか。


 しかし、名前がなんか変だな。

 セントリーガンのあとに付いてる「…」ってなんだ?

 あ、ひょっとして名前が省略されてるのかな。

 押したら全部表示できるかも。 えいっ!



・クリエイト・ウェポン LV3

    :タキオンランス

NEW!!:セントリーガン_最新_修正版(3)_Fixのコピー_最終ver2



 ……やっぱ駄目そう。



◆◇◆



本作、13日目にしてとうとう10万字突破しました。

何かこれまでにないすげー勢いで書いてますね。実際書きやすいんですが…

ちなみに第一章の完結は12~14万字を予定してます。

今しばらくお付き合いの程を…

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