アンコールは受け付けない
「銃が……!」「マズイぞ!」
『マリア!』
『うん!』
「ルネさん、加勢します!!」
俺とマリアは銃を失って戸惑っている銃士たちの前に飛び出した
そして「あっ」っと驚いたその顔に剣の平を食らわせた。
「活人剣の壱――みね打ち!」
俺は銃士にむかって「みね打ち」を使った。
連中はデカくて頭悪そうな銃を失って、完全な丸腰である。
つまり、今なら無抵抗の相手をボコってスキル経験値稼ぎ放題というわけだ。
折角のスキル上げのチャンス、逃すわけ無いよなぁ!?
おらボーナスステージの開幕だ! 経験値落とせ!
<ごんっ!!><ぼこっ!>
鋼が骨に当たる鈍い音が石造りの部屋の中にひびく。
音だけでもめっちゃ痛そうだ。
「んぎゃっ!」「ぐぉっ!!」
俺の『みね打ち』スキルの効果か、銃士は一発で昏倒している。
マリアも銀剣を
「
ペンナックが声を張り上げると、銃士たちは銃剣を抜いた。
ルネのスキルは銃をネジ一本にいたるまで完全に分解したが、バヨネットのようなシンプルな造りの武器は分解できなかったようだ。
「クソガキめ、調子に乗りやがって!……耳と鼻をそいでやる!」
「そのセリフ、おまわりさんじゃなくて完全にギャング……」
「やかましい!」
<シュッ! キン! シャッ! カッ!>
「わわっ!」
バヨネットを使う銃士の動きはかなり良い。
急所を狙ってくる突きは驚くほど速く、キレがあった。
ショートソードで弾くのがやっとだ。
……そうか! こいつら、スキルはなくとも銃を使ってモンスターを倒している。
だからレベルだけは高いのか!
サイゾウによると、レベルが高いと身体能力が底上げされるらしいからな。
スキルがなくてもこれって、かなり厄介だぞ……。
「へっ、顔色が変わったな小僧」
「ちょっとめんどくさいのが来たなって」
「ぬかせ!」
ヤクザにしか見えない銃士は、素早くバヨネットを突き出す。
くっ、このままじゃいつか押し切られる。
活人剣でどうにかできないか――いや、きっとできる。
ルネさんが銃を分解したような技が俺の活人剣にもあるはず。
活人剣は人を殺さず、活かす剣。
なら、敵から武器を取り上げるような技があってもおかしくない。
そうだ、イメージしよう……!
武器を振るわせない、剣が武器として命を持つ前に絶つ。
そんな技を想像するんだ……――来た!!
「活人剣の
スキルを使うと俺の体がグンッと加速する。
神経、筋肉、全てがショートソードの切っ先に集中しているのがわかった。
『そこだ……そこを――打つ!!』
<ボキンッ!!!>
「えっ」
「が、ぐぉっ!? ぐああああああ!!!」
俺が「剣落」を使うと、剣がチンピラ銃士の腕に吸い込まれるように動く。
俺が突き出した剣はバヨネットをにぎっていた手、そして前腕の順番にたたき――
ものの見事に手の指と腕をポッキリとへし折った。
銃士の手の指は花が咲くように折れまがり、腕も変な方向に曲がっている。
ちょ、えぐいよっ!?
使っといて何だけど、我ながらドン引きだよ!!
ランスロットさん、どうなってるのこれ?!
ーーーーーー
「
すなわち、相手が武器をふるう前に腕を完全破壊すれば、武器は意味をなさない。
そういったごく自然な発想と事実に基づいた剣技である。
狂人とは理性を失った人ではなく
理性以外を失った人のことであるのかもしれない。
ーーーーーー
「うわぁ……ひくわ」
「あの小僧、ペンナックよりやべぇかも」
「ちがうの! これはスキルが勝手に!」
「調子に乗りやがってクソどもが!! これでも見やがれ!!」
戦いのさなか、ペンナックが声を張り上げる。
みると、ヤツの手には鉄製の黒いボールがある。
ボールには、ちょこんと生えた毛のような導火線が見える。
もしかしなくても、あれって……爆弾?!
「へへ、銃はバラせたが、こいつはバラせるか~?」
「ルネさん!」
「あのタイプの爆弾は無理ね。シンプルすぎる……」
「おいペンナック、何を考えてる!!」「俺たちも吹き飛ぶぞ!」
「やかましい! こいつは研究所を吹き飛ばすのに使うつもりだったが……このさい仕方ねぇ。お前らごとブッ飛ばしてやるわ!!」
「――ルネさん、聞いて下さい。ヤツが爆弾に火をつけたら、イゾルデさんのところへ集まってください」
「……どういうつもり?」
「説明はしません。信じてください」
「――わかったわ」
ペンナックは爆弾の表面でマッチをすり、導火線に火をつける。
すると短いヒモが猛然と白い煙と火花をあげた。
「死にさらせぇ!!」
『マリア、ベルトを!』
『うん!』
ペンナックが黒い爆弾をポンっと投げた。
それに合わせ、俺とマリアはベルトのバックルのボタンを押す。
パッと光の泡がふくらみ、俺たちを包みこんだ。
優雅な放物線を描いて飛来する爆弾は、俺たちを包む泡に触れると――
<ゴンッ☆>
小気味よい金属音を放って、元の主のところへ帰っていった。
「はいいいいいい~~???」
<ゴンッ、ゴン、ゴン……>
「にげ――」「待て!」
<ズゴオオオオオン!!!!>
耳をつんざくような爆音とともに、巨大な炎が生まれてシールドを叩く。
爆炎がシールドを包み込むと、その表面を壊れたテレビのようなデタラメな色がバチバチと縦横無尽に走っていった。
「……終わったか?」
「そのようね」
爆発は研究所をメチャクチャにしていた。
床にはボロきれのようになった銃士たちが転がっている。
円を描くような俺たちの周囲は無事だがその外はひどい有り様だ。
「――ペンナック、まだ無事だったのか!」
「
「ひぃ、ひぃ……」
死体、いや爆発の前には生きていたのだろうが、銃士の体を押しのけてススだらけのペンナックがはい出してきた。爆発の前に近くにいた銃士を盾にしたのだろう。
「も、もう勘弁してくれ! わしの負けだ、降参だ!」
「ああいってますけど……ルネさん、どうします?」
「……そうね。最後に踊ってあげて、それで終いにしましょうか」
「いいんですか?」
「だって、私に彼を裁く権利はないもの」
「ほ、ほんとうか! ありがとう、ありがとうルネ! お前は本当にいい子だ!」
<しゃん、しゃん、しゃん>
ルネは焼け
そして
「姉妹たちよ、我らを見ておぞましく思うなかれ、かつては
不穏な歌詞とともに、ペンナックの周りに薄色の踊り子たちが現れる。
亡霊のように透き通った彼女たちは、手に拷問器具のような道具を持っている。
彼女たちの姿をみたペンナックはひどく怯えている。
まさか……この踊り子たちは全部、ヤツが殺した娘たちなのか?
「や、やめ――」
「貴方は私の、そして彼女らの声を聞かなかった。聞いてもらえるとでも?」
「……そんな!」
「さようなら、ペンナック。これがフィナーレよ。」
ルネは踊りの最後に「タン」と床をヒールの先で叩いて打ち鳴らす。すると、まるでそれが合図だったかのように、踊り子たちがペンナックに殺到した。
『うふふ、私は目をくりぬくわ』『じゃあ私は耳』『私は指をパチンと切るわ』
透き通った踊り子たちは手に持ったノコギリ、火箸、そしてハサミやナイフといった物騒な道具を怯えるペンナックに向けた。そして――
<ザシュ、ザク! バツン! ガリ、ゴリ、ザクッ!>
「やめ、ぎゃ、ひぐ……ぐわぁッ!」
「これにて閉幕――。
お
◆◇◆
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