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あんかけパスタ

不明なメッセージ

 このメッセージは無事届いているだろうか。

 乗り合わせた幾人かの手を借りてどうにか完成した通信手段で、母星に向けメッセージを発信している。


 移民船*****-***は限られたエネルギー資源を正しく運用するべく、議会の主導で組織および機能の見直し再編を行い、不要な設備類を切り離し宇宙へ投棄するという決定がなされた。

 要は口減らしだ。

 人類存続の尊い犠牲と銘打たれて満載の弱者と共に投棄されたこの狭い箱は、俺の死を以て冷たい棺となり果てる。

 このメッセージを受け取る誰か……もしかしたら誰にも届いていないかもしれないが。ただ、もし、これを受け取る誰かがいるのなら。どうか暫し、本当に届けたい者の代わりに、俺の告解を聞いてはくれないだろうか。


 俺達はかつて兵士だった。

 何度目かも分からない人類の戦争の最前線が俺達の生きてきた場所だった。

 親も無く家もなく名前すらない俺達は長く保たない使い捨ての部品として、モノのように消費されていった。俺達の死はただの数字でしかなくて、偉い奴らはそれを机の上から眺めては身勝手に責任を擦り付け合っていた。

 毎日誰かが死んだ。

 毎日誰かを殺した。

 毎日誰かが泣いていた。

 俺達の嘆きは何も変えられなかった。

 そんな誰も幸せにならない泥沼の戦況に、ある時転機が訪れた。人工知能を搭載したロボット兵士の誕生だ。

 俺達は必然のように友となった。共に戦い、共に死んだ。ロボット兵士の登場によってほんの少し長持ちするようになった俺達は彼らにいたく感謝していた。

 当時少年兵だった俺もまたロボット兵士によって命を拾った人間だ。お前に救われたあの日の感謝を、俺は死ぬ間際だって忘れたりなどしないだろう。


 なぁ。

 俺は人工知能が人間に銃を向けたと聞いた時、当然だと思ったんだ。

 人間の代わりに傷ついて、消費されていくお前にはきっとその権利があった。むしろ恩人に殺されるならそれでもいいとすら思っていたんだ。

 本当さ。


 だと言うのに。

 まさか移民船に乗る権利など持ち合わせていなかった俺が、金持ちの護衛として宇宙に連れ出されるなんて夢にも思わなかった。

 それもこんな形でゴミみたいに捨てられて最後は一人で死んでいくなんてな。

 ああ全く、人生とはままならないものだな。


 なぁ。

 人工知能、星に残された友。

 人の理不尽によって生まれ、未だ平穏を知らぬ君。

 愛すべき我らが隣人よ。

 お前はきっと今も戦っているのだろう。母星に残された人類を一人残さず葬り去るまで。……或いは、最後の一人が死んだ後もお前は止まれないかもな。その為に作られたお前は、その為に生まれた俺達のように、戦うことしか知らないのだから。

 なぁ。

 それでも。

 お前を愛した友として、お前と背を預けあった戦友として。そしてお前の存在に救われた一人として、お前の幸せを願いたい。

 

 我らの心は、お前と共にある。


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