第2話 ヘル・ウルフ討伐
【アオバ視点】
見晴らしの良い和国の最高峰である富士之山山頂にて。ギルドマスタームッキーが信頼しているという偵察部隊の一団からの報告によると和国の最高峰である富士之山を囲むようにヘル・ウルフの数千…数万規模の大群がわらわらと押し寄せてくる。
「お主たち…いや、ソーエンとやら! 単騎で数万規模のヘル・ウルフを討伐なんて我がギルド最高ランクSSS級でも自殺行為だぞ!」
「ああ、理解しているとも。だがな? 俺様の力を甘くみられたら困るぜ。」
いつものように自信満々な師匠は長く青い髪をポニーテールにし束ねており青い瞳を細め標的であるヘル・ウルフの大群を視線だけで殺せそうなくらいにらみつけている。全身から蒼き火の粉が飛び交い宙を舞う。
「我ソーエンの名の下に集え蒼き焔(ほむら)よ。集いし火炎が舞い上がりし瞬間(とき)其(それ)は龍となり仇(あだ)なすモノ皆…破滅へ導かん……!」
ソーエン師匠が詠唱を唱えている間に群れは数を増していく。師匠の放つ蒼き焔の魔力が飛び交い蒼き焔の蝶々となる。その光景は美しくて私は思わず師匠の魔力に魅了されていた。
「師匠…放つのですね?」
ソーエン師匠は私に視線だけ向けてこくりと小さく頷(うなず)いた。
「獄焔爆龍波(ごくえんばくりゅうは)!」
蝶々のように飛び交っていたソーエン師匠の魔力が集まり巨大な蒼き焔の龍が顕現(けんげん)した。その一発の魔法で半数のヘル・ウルフの群れが葬りさられていく。さらには火炎の熱により富士之山の山頂から大半の雪が溶けて雪崩となりヘル・ウルフ共に襲いかかる。一人の魔法により災害が発生したんだ…。師匠は圧倒的すぎる。存在自体が反則級なんだ。私はしっかりと師匠の勇姿を見てますよ-と必死にアピールしている。それはもう、視線だけで師匠を殺せそうなくらいにはね。
「流石師匠ですね! ヘル・ウルフ共は駆逐されたも同然ですね!」
「ああ…! 流石は蒼き焔の剣士だ! 高額依頼のみ請け負っている理由…その一旦を知れたぜ!」
「……。ボスではなく雑兵のみしか葬りされなかったな。アオバ…お前は気づかなかったのか?」
「? 師匠の魔力がキレイだなあ…ってくらいしかわからなかったですよ?」
雑兵…要するに師匠にとって雑魚と認識している奴らは葬り去ったのか。私は師匠の逞(たくま)しい後ろ姿を見つめて自身の魔力を練り上げてみる。
「我アオバの名の元に集え蒼き焔よ…集いし火炎が舞い上がりし瞬間…其は龍となり万象尽(ばんしょうことごと)く灰塵(かいじん)と化せ!」
「ああ! アオバ! お前…放つんじゃない!!」
「獄焔爆龍波!」
師匠が何故か私を止めていたが私は何もしないなんて嫌だから…師匠の役にたちたいからその一心で師匠の真似をして魔法を放った。私の放った蒼き焔の龍の魔力は数千のヘル・ウルフのボスと見られる個体に命中する。
「弟子も相当な魔力持ってやがる…ってかお前ら何歳なんだよ?!」
「レディに年齢はたずねないでよ?」
「そんな無駄話している場合ではないぞ…お前ら!」
「「え?」」
ボスと見られる個体のヘル・ウルフはどうやら魔力無効の体質を保有しているらしく全く無傷。むしろ、私の放った蒼き焔を纏(まと)って力が増強されていたんだ。
「これは…これは。楽しめそうじゃねえか。もっと俺様を楽しませてくれよ?」
どうやら師匠は闘う気力に満ち溢れているようだ。
「師匠の役にたてましたか?」
「ああ…。面白い!」
「いやいや! どこが面白いんだよ? ってか役にたったというか敵に塩送ったよな? 弟子は足引っ張ったんじゃねえのか?!」
チャキン!
「弟子の悪口をこれ以上囀(さえ)ずるな…例え依頼人であろうと……斬る。」
やっぱり師匠はカッコいい。
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