第4話 切望の痛み

もう何年も昔のことの話じゃ

貴様が眠りについて400年ぐらい後、今から600年前にソロモンが悪魔サタンと契約をした、「自分の命を代償に人類を殺せ」という

クヴァレには好都合じゃろうが朕らには迷惑なことでしかなかった…

四凶、ソロモン72柱、サタン…魔界から進行してきた敵に投降を余儀無くされた宇宙国家も大勢あった…じゃが、それをたった一人の女がサタンを討伐したことで悪魔の勢いは衰えた、そのこは当時仲の悪い七大一族の手を結ばせて戦いに協力させた…

悪魔大戦と呼ばれる史上紅帝族最大の戦いもあやつがソロモン72柱を倒したことで終わりを告げた


「あやつは悪魔どもを倒した後、各地を回りその地に伝わる技術を学んだ」

モグモグと煎餅を頬張りながら天皇の話を聞く。

「ここに訪れた時に問うたことがある、あやつはな…」

『宇宙全土に結界を張る、有限の平和のためにな』

「阿呆」

天皇はすぐに考えを否定する。

「そんなものクヴァレを倒せばよい、堕神を倒せばよい、魔法の開発、それぞれの技術の進歩を待てばよい…非効率極まりない…と思っておったのじゃが、あやつのやろうとしていることの意味をようやっと理解した」

天皇は昔のことを思い出す。悪魔軍の残党、クヴァレの部下が町を襲ったあとの惨状。

「強者がいつも民を守ることはできない…終わりの見える平和でも時間稼ぎにはなる、その間に朕らの仲を取り直さねばならん」

「大変だな」

「それをやるのはお主じゃぞ」

他人事だと思っているノーヴァに苦言を呈する。ノーヴァは分かっていると声を出して笑う。

「ここからは朕個人の頼みじゃ」

「お前の?」

「ああ、元祖同士での頼みごとは契約が基本じゃ…」

元祖というのは裏切りなど日常茶飯事、だから長男であるノーヴァは契約を結びなさいと兄弟に言って、大切なことは本人らの合意の上での契約を結ぶことが常となった。

「150女末妹”鳳”の元祖大紫蝶はセアの復活のため如何なる手段を用いてノーヴァを支援することを誓う」

蝶がそう言葉にすると、ノーヴァの手の甲に花の紋章が現れた。

「そういうことじゃ…朕を含めたアウル帝国はそちの力となろうぞ!」

「ああ、ありがとう」

正式な契約を結んで二人は今後のことについて話し合う。

1.各海の強者に会って話をする

2.関係を良くしなくとも協力関係にする

3.セアの復活

「ところで、どうやったら復活なんて出来るんだ?」

「…白練とゆうたな…朕の前に出てこい」

白練の存在は話していないのに蝶は知っているかのように話しかける。ノーヴァのカバンから白練が出てきて、蝶に礼をする。

「”繋縛の水晶”と呼ばれるものじゃが、朕はこれが何かは正確には知らん…3つ集めて原初一族とオベロンならば解除は出来るじゃろう」

繋縛の水晶はセアの復活のために必要なもので、その一つが白練ということ…ノーヴァは頭を悩ませる。

(原初か〜…あいつらは人の頼みを素直に聞くタイプじゃないからな〜、ん?)

「なあ、蝶…お前身内でもないのにどうしてセアの復活を願ってるんだ?」

ノーヴァの質問に蝶はピタリと動きを止めて目をそらす。そして手を差し出して、

「痛みを複製して移すことはできるか?」

「できるぞ!」

意味が分からなかったから、蝶の手を握って、複製してから体に移す。

(おや、これは…)

蝶は顔を赤らめてゴニョゴニョと話し始める。

「朕と話したことなんぞ、あやつにとっては、道端で雑草を見るくらいの思い出じゃ…じゃが、朕はあやつともう一度話しとうてのぅ…」

「なるほど!切望の痛みだな!妹に想い人のような存在ができてお兄ちゃんは嬉しいな~」

ノーヴァの言葉に蝶は顔を赤らめながらも怒る。

「さっさと…次の海に往け!!この阿呆兄上!!!」

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