第3話 庇護の痛み

天使族の壊滅から本作の主人公セアについての情報を得るために宇宙国家アウル帝国ヴァルチャー都市に赴いたノーヴァ

昔の旧友にも会え、死の溜まり場”デスポピー”という存在を知る


宇宙は七つの海”パイレーツ”と領域から外れた3つの海”禁海”に分かれている。宇宙国家の中でも頂点に君臨する、アウル帝国、倭雷光国、アトランティス帝国、パピリオ、アルケミスト、チップテトラ、ウロフタル、神の国”アウグスティヌス”

「クリスに頼まれて宇宙の基礎を叩き込めと言われた時には…どこのお子ちゃま、いえ、世間知らずとは思いましたが…あなたか…」

紫がかった黒く短い髪をオールバックにして、インディゴの瞳をメガネで隠す黒のタートルネックを着用した男、双翼の三本柱の一つ友愛社ボスヴァイス•ハウプト

「すまんなー」

「七大一族に関しては貴方が一番知っているでしょうから、説明は省きます」

ヴァイスがそう言うのはノーヴァが七大一族の一つに数えられる夜の一族初代長であるからだ。ちなみに、ヴァイスも夜の一族の元NO,2であり、どちらの座も二人の娘たちが引き継いでいる。

「私はクヴァレという帝国をあまり知らないのでなんともいえませんが…あなたが眠った後大きく変わったのは、元祖に代わる支配者の台頭」

「…強いのか?」

「それは勿論…クヴァレに対抗する手札十神王と称される10人の最強、守護者”ガルディ”」

ふむ、とノーヴァは整理する。

(この1000年間で兄弟たちとの争いが冷戦状態だったのは守護者”ガルディ”によるものだとするのが妥当…)

「……この最強どもには後々会うことになるので、それより、ノーヴァ…貴方に頼みたいことがあります」

ヴァイスが立ち上がって隣の部屋へと案内する。そこには一人の男性が眠っていた。かなり衰弱しているようだ。ヴァイスが近づく。

「私の側近の一人、フィラ…あなたがここに訪れる前に堕神の討伐に行ったのはいいです」

「それでやられてきた、と…」

「はい、出来ることなら治していただけませんか?」

ヴァイスが深々とお辞儀をして頼んできた。

(治せるには治せるが…もう長くは持たんだろうな)

ノーヴァは自分らしくないことを考えながらも、フィラの額に触れる。すう、と青色の光が光り始めて、ノーヴァの顔色が悪くなる。

「…フィラは故郷とその者達を大切にしていたのだな」

「こいつは人一倍故郷を想っていて誰よりも故郷の安全のために働いていました…最期くらいは故郷で過ごさせてあげたいんです」

「そうか」

治療が終わったようでノーヴァは近くに用意された水を飲む。そして、フィラを見て、

(これは、庇護の痛みにしておくか)

ピロん、とスマホの通知がなる。ヴァイスはメールの内容を確認する。

「すいません、天皇様が貴方に今すぐに来るようにと」

「まだ1週間経ってないのだが」

「そうですね…私もこれから100冊分の宇宙情勢をノーヴァに教えようと思っていましたし…断っておきますね」

「やはり、妹の頼みは聞かないとな」


ヴァイスの地獄講座から逃げてヴァルチャー都市の天皇の城に来たのはいいものの、明らかに不機嫌な天皇が鎮座していた。

「あの~」

冷や汗をかきながら恐る恐る天皇に声をかける。

「貴様…何故レヴィアタンに接触したことを告げんかった!」

「そこまで重要とは知らず…」

正座して小さくなるノーヴァを、やれやれといった態度で煙管を咥える。

「まさか、天使族とレヴィアタンが接触なんぞ…あやつになんと言われるか…」

「あんのー」

「そうじゃな…堕神を倒したことじゃ、朕とあの者の昔話をしよう」

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