第7話:下層攻略RTAパートつー
「えっと……はい、彼女は唯一無二である俺の相棒の空様です。むかしダンジョンで出会いました」
「ちゃんと言えて偉い」
むふーといった満足げな表情で空は笑った。
配信のコメントが無限に加速する中、どこか遠目をする俺はきっと悪くない。
あぁ……これだったらもっと早く攻略すればよかったなって思いながらも、親友の忠告を守れなかったこと、そしてその末路に目眩がする。
[ダンジョンで出会ったってなんだよ]
[詳しく]
[どや顔可愛い]
[ダンジョンに出会いを求めるな]
[色々気になることはあるけど、相棒って?]
[ソロ配信者じゃないの?]
「あー説明するか。頼むぞ空」
「ふふ、それでいいんだよ。やっぱり私が一番だから」
俺はそう言ってボスから落として使っていた刀にごめんなさいしながらその場に突き刺し、空に刀に戻るように頼んだ。
[武器になった!?]
[なんだそれ!?]
[え、フェイク? CG!?]
[俺達の空ちゃんはどこだ!?]
「さっき言ったとおり昔ダンジョンで入手した刀でさ、なんか人になれるんだ空は――えっとクラスは鑑定だと
本来の順序的には逆なのだが、流石にダンジョンで出会った人を地上に連れてったというのはやばい事案なので隠す。
[分かった俺は今夢を見ている]
[ミソロジー!?]
[なんてもん持ってんだ]
[というか羨ましすぎる]
[可愛いし武器だし、多分強いだろ]
[日本のミソロジー武器って……一桁台しか発見されてねぇぞ]
……え、そうなんだ。
あれ、これもしかして言っちゃいけない奴だった?
ちょっとやばいかもと思った俺は、とりあえず話題を変えることにした。
「まぁ色々質問はあると思うが、これ以上はRTAに支障出るから急いで行くぞ」
[こいつもっと詰めれば爆弾ばっか出てくるだろ]
[やっぱりずれてるし化け物すぎる]
[こんな奴実在するわけない]
[↑現に配信されてるだろ]
[そもそも黒塚の下層は解放されてないだろ]
「ちょっとコメ欄喧嘩しないでくれ……でも、確かに皆の言葉が確かなら、解放されてなのは無理ないと思うしな。なぁ、みんななんか証明する方法あるか?」
疑われるのは悲しいし、コメント欄で喧嘩されるのはいただけない。
だから信じて貰うためにもなにかすればと思って聞けば、
[真面目すぎる]
[良い奴なんだろうな]
[下層クリアすればアナウンスくるし、一応証明は出来る]
[どのダンジョンも下層クリアは謎の声がクリア報告するからそれ狙えばいんじゃね]
[まてやめろ愉快犯、それは危ないって……この装備だぞ!]
[それやったら信じてやるよw]
[乗る必要ないからな]
「分かった。俺も初めて挑戦するけど……やるか、攻略。それに止めてくれる皆も正直気になるだろ? だから俺が今日魅せてやる――杞憂も疑心も全部ぶっ飛ばす」
それに――俺には空がいる。
彼女がいれば、相棒がいれば負ける気などしない。
……それは皆には伝えないが、俺の中に存在する確かな真実だ。だからそれを信じて、最高の体験を――魅せてやろう。
[馬鹿かっこいい]
[見届けてやるよ]
[俺は……みたいな]
[ミスっても助けられない場所だからな、危険すぎる]
[【悲報】バズった配信者速攻で散るw]
[煽ってる奴なんか気にするな、頑張れ!]
……覚悟は決まった。
よし、やるか。
増える同接を見ながらも――一呼吸をして、一瞬の瞑想。
「――さぁいくぞ、相棒」
そして俺は走り出す。
鬼と飛竜の群れの中に飛び込んで……そのまま刀を振り続ける。
一撃必殺、余分な時間などかけられるわけが無いので――全ての攻撃で相手の首を刎ねるのだ。
四方八方から迫る鬼の群れ、階層を下るほどに強くなるそいつらに気を抜けばどうなるか分からないが……腕を落として、確実に首を刎ねて命を奪っていく。
動きを流れを意識して上下を注視、上から迫る飛竜の吐息を切り裂いて――。
[まじで凄すぎる!]
[は、え――これが本気?]
[さっきより速いし、あまりにも技が綺麗すぎる]
[ブレス斬った!?]
[訳分からん、まじで意味わからん!]
[目で追うのがやっとなんだが?]
[映画の無双シーンだろこれ!]
[!?]
[待って一気に全員が仕掛けてきたぞ!]
[危ないって!]
「大丈夫だ、見てろ」
チラリと見えたコメントで移る心配の声。
それを安心させるためにそれだけを告げて――俺は魔法を発動する。
それは空と契って得た力、俺が使える魔法の一つ。
「――
[かっけぇぇぇぇ!]
[何その魔法!?]
[目の前が焦土に]
[――はは、ほんと何これ]
[待て待て、オークにプレシオまで来てるぞ!]
[まじで未知すぎるだろここ!]
[でも当然のように――!]
[一撃だぁ!]
そして俺は無傷でボス部屋に辿り着く、巨大な扉。
中からは威圧感を感じさせ、俺ですら緊張感を覚えてしまう。
始めてくる黒塚の下層――そのボス部屋、視聴者を待たせるわけにもいかないので――俺はそのまま宣言する。
「じゃあ、行くぞお前等! この配信を見届けろ、これより先一切を見逃すなよ?」
問いかける用にそう言って、俺は笑う。
鬼の面で表情はみえないだろうけど、俺の気持ちは伝わるはずだ。
そして俺はその分厚い扉を押し開き、奥に広がる巨大な空間へと足を踏み入れた。
――直後、
「渇!」
その一声で大気が、ダンジョンが揺れた。
そこに広がるのは大森林、あまりの大自然が広がる中――そいつはゆっくり降りてきた。
「はは、鬼の次は――天狗か!」
それは三メートルはある空の妖魔。
団扇を構える長い赤っ鼻の化け物――巨大な白い羽を羽ばたかせ、俺の事を見下ろしている。
「さぁ――ダンジョン攻略を始めよう」
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