第5話:バズり後の初配信

「うわぁ、通知止まらねぇ」


 流石にあり得ない数のフォロワーが増えたのに告知しないと不味いと思った俺は、自分のSNSアカウントで配信しますって宣伝したんだけどその瞬間からスマホの通知が止まらなくなった。


「バズって……こわぁ」


 こんなの当たり前だが経験したことが無い。

 今までスマホがここまで振動したこともないし、通知音が鳴りやまないことなんて見て事が無い。

 今まで来た通知なんてよくやるゲームのお知らせとか、他の配信者の配信告知ぐらいだったのに……現代のネットって怖い。


「えっと……こん、にちは?」


 そして配信を始めて挨拶しただけなのに、ばっとコメントが流れてくる。

 その数は異常であり、目で追えるものの速すぎてそっちに意識を割く必要が出てくる。


[ちわー!]

[どこのダンジョンだここ?]

[鬼のお面アップはやめろw]

[なんだこの精巧な面]

[迫力ありすぎw]


 溢れるコメント増える接続数。

 開始数秒にも関わらず数百人を突破して、それどこか十分が過ぎる頃には一万を超えてしまい……。


「え、四万人!? ――は、これ俺の配信であってる?  というかありがとうございます!」


[慌てすぎや]

[ちゃんとお礼を言えて偉い]

[反応が初心すぎるな]

[絵面は酷いけどな]

[声で凄い喜んでるのが分かる]


 浮いているスマホのコメントを確認しながらも好意的なコメントが多いことだほっと胸を撫でる。下手にバズったせいで何か言われると思ったから心配だったけど、それは杞憂だったようだ。


[そうえいばここどこのダンジョン]

[確かに、気になる]

[ここ知ってるぞ――黒塚の]


「あ、そうだな。東京の黒塚のダンジョンだ――結構よく行くからここを今日は選んだんだよ」


[なんであんな一瞬のコメントに反応できるんだ?]

[え、ありえんだろ]

[まさかそんな]


 コメントに目を通しながらもそういえば、なんか急にコメントが加速した。

 なんでだろうと思って見てみれば、なんとなく理由を察する。


「見えてるぞ、質問に答えるならこのお面と着流しは昔攻略したダンジョンのアイテムだな、初めての戦利品で気に入ってるから付けてる」


[そんな初心な理由で絵面ホラーになってたのか]

[そのコメントもう見つからないんだけど]

[まじで見えてるのか]

[動体視力やばすぎw]

[白雲早苗:この前は本当にありがとうございました]


「あ、どういたしまして……無事でよかったぞ」


[本物キチャー!]

[本人降臨!!!!]

[本物だ! チャンネル飛んだら公式マーク付いてる!]

[神回確定]

[白雲早苗:お礼が遅れてすいません、色々あって]


「気にすんなって、俺は気にしてないし」


 信頼していただろうカメラマンに置いてかれたのだ。

 その心の傷は計り知れないだろうし、何より事務所で何かあったとかも予想できる。それを考えるとお礼を言うのに時間がかかるのは当たり前だろう。


[二人はどういう関係?]

[あれから会ったの?]


「えっと……俺は白雲さんとは一回も会ってないぞ、それに昼までバズってたのも知らなかったしさ……」


 一応SNSを確認した限りDMも彼女から届いてないし、ちゃんとしっかり距離を取ってくれてるから本当に助かってる。それがあるおかげで、余計な噂も否定できるからだ。


[あのバズ気づかないことあるんだ]

[誠実だな]

[事務所所属してるしね、早苗ちゃんは大人だしちゃんとしてるでしょ]


「じゃあ配信に話題を戻すんだが、俺が今いる黒塚のダンジョンは鬼系の妖怪や西洋系のワイバーンとかがよくいるダンジョンだ。空からの奇襲や力の強い鬼が多くてさ……あ、今日いるのはそこの下層なんだけど……」


 そうしてコメントを読みながらも俺は今いるダンジョンの解説を始めたんだが、なんかさっきよりもコメントが加速した……どころか、困惑の声が多く見える。


[鬼は知ってるけど、ワイバーンはいなくね]

[……え、待って下層って言った?]

[解放されてない筈なんですが……]

[中層のボスで攻略止まってるはずだぞ?]

[――流石に嘘だよな?]


 ……そうなのか?

 確かに中層にはあいつのボス部屋があったけど……あ、そうか証拠見せれば良いのか!


「ちょっと待ってくれ、今証拠見せるわ――ほらこれ、鬼の生角~!」


 昔はやったアニメのイントネーションでそう言って取れたてほやほやの角を配信に映す。見せるのは金色の捻れた角、あのボスの特徴的なのってこのぐらいだし、多分証拠になると思って見せたんだが……。


[――金剛童子の角だ]

[え、誰そいつ]

[配信で誰も倒せてないはずだろ?]

[偽物……じゃないのか?]

[データベース見たけど完全一致してるぞ!]

[こわ]

[それを配信しろよ!?]


「え、でもよく戦うし……新しさ無いかなーって」


 それにあの鬼には完全に顔を覚えられてるのか、毎回一礼してくれるしそんな絵面は見せられない。それに、今日はここに来るために空を使って全力出しちゃったから配信に映せないし……。


[分かったこいつやばい]

[それは今更だろw]

[やべーのは分かる]


「解せないんだが?」


[自覚症状無しっと]

[まじでこの先が愉しみすぎる]

[それで今日は何するんですか?]

[気になる]

 

「あ、えっと今日は下層の探索で……ワイバーンかっこいいし見せようかと」


[そんな理由で倒される中層ボス君]

[可哀想]

[持ってる武器は……え、鎖と刀一本?]


「今日はいつもの武器が使えないから、さっきボスから落ちたこの二つで戦っていくつもりだ」


[縛りプレイは草]

[やっぱり頭おかしい]

[でも……見たくね?]

[まじで何する気なんだよw]


「じゃあ――攻略始めていくぞ!」

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