第33話:誰か覗いてる。

隣町にイタリアンレストランがオープンしたって・・・。


口コミでは、そこそこ美味しいって評判なお店だったので

一応予約を取って麻美子ちゃんとデートの帰りレストランへ料理を食べに

行って来たんです。


麻美子ちゃんとテーブルを挟んで向かい合わせ。

僕も麻美子ちゃんも慣れてないイタリアン料理・・・。

車だから、シャンパンでもワインでもお酒は基本NG。


出てきたイタリアン・・・大きめの皿に少なめの料理。

コースじゃなきゃメニューなんか見たって名前なんか分かりゃしない。


でもって次の料理が出て来るまでの待ち時間がやたら長いのです。

退屈してしまう。

一度マンションに帰ってからまた来ても間に合うだろってくらい長い・・・。

麻美子ちゃんとしょうもない話をして時間つぶし。


食っちゃ、間が空く・・・食っちゃ、間が空く・・そんなだから、さほど

食べてもないのにお腹がいっぱいになったのです。

それがあんたらの、やりかたか〜って言いたくなる。

しかも味付け、薄い・・・。


僕にはイタリアンレストランは合いません。

いやいや、他のお店はどうかは知りませんよ、だけどこの店はもう二度と

来ないだろうなって思いましたね。


麻美子ちゃんもそうだったらしい。

連れてきてもらってる手前、麻美子ちゃんは文句は言わないけど、でもひとこと

「まあまあだったね」って言いましたね。


不味かったって言っていいんだよ。


口直しにレストランからの帰り、カフェに寄ってコーヒー飲んで、ちょっと

まったりした時間潰して、じゃ〜帰ろうかかってことに・・・。


外はすっかり暗くなって、満天の空に星が輝いていました。


なんとなくそのまま帰るのもな〜って思って、いつもふたりでデート

の帰りに立ち寄ってる埠頭の岸壁手間に車を止めて休憩することにしたんです。


入り江の向こう側は工場の夜間照明や煙突・配管・タンク群が見える。

僕は工場萌えじゃないから興味はないけど、それでも夜の工場は綺麗だ。


その埠頭のあたりは夜は誰も来ない。

だからホテル代が乏しい時はその埠頭に車を止めてラブラブしたりする。


その夜も久しぶりってこともあって、なんとなく僕も麻美子xちゃんもそんな

雰囲気になっちゃって・・・どちらからともなくキスして・・・。


そうなるともう気持ち止められないですよね。

コンドーさんはちゃんと車に装備してるからいつでもオッケーな状態。


でね・・・助手席の麻美子ちゃんとラブラブしてたんですよ。

そしたらね、麻美子ちゃんが僕の後ろを指差して


「◯◯ちゃん・・・誰か覗いてる」


って、言ったんです。


僕は慌てて麻美子ちゃんが指差した方向を見たら、ひとりのおっさんが車の

運転席側から車内を覗いてるではないかい?


そりゃびっくりですよね。

だから僕は、すぐに、おっさんを睨んだんです。

そしたら、おっさんは、すごすごどこかに消えて行ってしまいました。


まあ角度的におっさんの位置からは僕が麻美子ちゃんに重なってるところ

しか見られてないですけどね。

でも僕が腰動かしてるのはばっちり見られたと思いますけど〜。


でもまあ何事もなくてよかったと胸を撫で下ろしました。

これが、おっさんじゃなく、もっと若くてヤバいやつらだったら怖い

ことになってたかもです。


エッチどころじゃないです。


大急ぎで埠頭を離れて一目散に麻美子ちゃんを彼女の家まで送っていきましたよ。

その覗かれ事件以来、その埠頭には麻美子ちゃんを連れて一度も行ってません。

ちゃんと、するとこでしろってことですかね。


そうそう隣町のイタリアンレストランは一年、持たず閉店しましたね。

お気の毒ですけど納得です。


つづく。

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