第20話:ファーストキス。

3度目のデートだったと思います。

その日も県外へ遊びに行って麻美子ちゃん「嫁」の家の門限に間に合う

ように、あわてず、さわがず急いで彼女ちゃんを送っていく途中だった

のです。

そんな時に僕は急にトイレに行きたくなったんですね。


漏れそうだったから・・・彼女ちゃんの家までは絶対もたないって

思ったんだけど麻美子ちゃんがいるのに、まさかその辺で立ちションって

わけにもいかないし・・・。


だけどそこはうまい具合に、この先に公園があるってことを僕は思い出した

んです。

公園に行けば確実に公衆トイレがありますからね。


そして迷わず駐車場に車を止めます。


その公園には昼間に来たことはあるんですが、夜に来るのは初めて

でした。

花見の時くらいしか来ない公園。


こんな夜の公園に来るのはホームレスかエロいことするカップルくらいだ。

街灯も少ない、薄暗い公園。

切れかけた街灯がチカチカしている。

僕は麻美子ちゃんをこんな場所に、車の中にひとり置いていくのは心配だった。


でも、もう他を探す余裕はない。


「すぐだから、待っててね、ごめんね」


麻美子ちゃんは、「うん」ってうなずいた。

僕は彼女ちゃん一人残して男子トイレにかけこんだのです。


(かっこ悪る〜)


けど背に腹は変えられない。


でも、出物腫れ物ところ嫌わずって言うわけで、公園のトイレでね。

しかたがないよ。

用を済ませて出来てきたら、ホッとしてなんだか気が抜けたのです。

止めた車まで戻ると麻美子ちゃんは一人でどこへも行かず誘拐もされずに

待ってました・・・ちゃんと助手席にね。


さて、こんな怪しげな公園にいるのは、いい気持ちがしないので早く退散

したかったんだけど・・・魔が差したんですね、僕は。

ふっと何かに押されるように僕は急に麻美子ちゃんとキスがしたくなった

のです。

でも僕は、麻美子ちゃんキスにしていい?って聞きもしないでいきなり唇を

奪おうとしたんですね。


そしたら麻美子ちゃんが自分の口を押さえたんです。


「あ、ごめん」


って僕は麻美子ちゃんに謝りましたかね。


「急に来るから・・・」


「あは、そうだよね・・・ごめん、魔が差した・・・」

「リセットするからさ・・・だからキスしていい?」


麻美子ちゃんは、どうしよっかな〜みたいな雰囲気醸し出してましたけど

ここまで来たら引けませんでしょ。


「キスしたい」


って言ったらば、


麻美子ちゃん小さく「 うん」ってうなずいたので・・・。


こんな薄暗い公園、誰か見てるかもしれないのに早く退散するに限るに・・・。

それが僕と彼女ちゃんとのファーストキスでした。

ちっともロマンチックじゃないでしたけど、まあそんなもんかも〜。


キスの後、シラけるのが嫌だった僕は麻美子ちゃんを優しく抱きしめました。

僕は「愛してるよ 」とは言えず 「好きだよ」って言ってました。


つづく。

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