転生剣士は九尾の狐と躍進中 ~大手ギルドを隠れ蓑に『集中力強化』を鍛えていた少年。不要だと匿名部署を解体されたので、表舞台に出ます。集中力が切れた地獄の職場よ。どうなっても知らんからな~
第80話 権力の指標として何の参考にもならない男。
第80話 権力の指標として何の参考にもならない男。
白昼堂々。アグリの部屋に突撃することを企画し、計画を進めていたポプラたち。
そんなポプラたちに襲い掛かった兵士たち。
そしてポプラが返り討ちにした。
と言う状況から読み取れる要素としてもっとも分かりやすいのは、『兵士たちを向かわせたのもまた白昼堂々』ということだ。
「こんな大きな町で、堂々と誰かを襲うなんて……指示する側も、指示されて動く側もおかしいと思うけどね」
「評判を気にしねえってのは個人の自由だと俺様は思うが、こればかりは呆れるしかねえな」
狐組の本社。
レミントン派が所有する戦力が、狐組の関係者に向けられたという報告書を読みながら、アグリとキュウビは呆れ交じりに話していた。
「それにしても、宝か。確かに性能は凄いみたいだ。真正面から相手したら、間違いなく勝てないだろうって思った人が多いみたい」
「なるほど。まあ、あの『宝』自体は90層とかで手に入るアイテムだが、じゃあそれを使ったからと言って、90層に挑める強さが手に入るわけじゃねえしな」
「そうだね。『そこまで深いところまで潜れる人から見て、仲間をある程度まで強化できる』って程度かな。実際にどのレベルまで引き上げられるのかは『図鑑』にも書かれてなかったけど……」
「とはいえ、図鑑に記載されてるコストが事実なら、確かに『宝』と呼ぶにふさわしいアイテムだぜ」
「うーむ……ただ、そこまで重要でありながら、簡単に外に持ち出されたような、そんな気もする」
「だよなぁ……だって、預ける先がレミントン派だぜ? 普通なら裏であの手この手で足を引っ張ってどうにか止めると思うんだがなぁ……」
レミントン派の実態と宝の性能。
どちらも、アグリたちにとっても分かりやすい状態で示されている。
その上で感じるのは、『レミントン派がここまで好き勝手にやっているのを、他の派閥はどう思っているのか』という点だ。
「レミントンがあるじに直接的な何かをするなら、使える権限は『冒険者を辞めさせる』ってところだろうが、『報告免除特権』を『最高レベルフル装備』で揃えられる人間を追い出すようなことはさせないだろうし……」
「となれば、レミントンは、自身が持っている権限だけで、俺を直接どうにかすることはできないってことだね。まあいずれにしても……宝はレミントン派に預けられて、そして実際に持ってきた」
「確かに」
「それと……思ったより、動かせる人間が少ないのかな? レミントン派って大きいはずだけど、まさか派閥のトップが直接来るとは思わなかった」
「あー、まあ、あるじの顔を見に来たってことじゃねえの?」
「……まあ、レミントンくらいの男なら、結論は大体そんなもんか」
とにかく視野が狭い。そして低い。
加えて欲望に忠実であり、何かを我慢することも許すこともない。
端的に言って、大きな派閥を率いる器ではない。
「……ただ、まだあり得る可能性として、レミントンって、自分が持っている権限の知識をすべて持ってるんだろうか」
「どういうことだ? あるじ」
「いや、例えば……上の連中が、『いざとなったらすぐに捨てても問題ないゴミ箱』を用意して、そこに上手くレミントンたちを入れたとする。当然、ゴミ箱に放り込むエサは、歓楽街でもトップに位置する酒や女を自由にできる権限とかもあるはず」
「ふむふむ」
「目先の快楽を貪ることができる。という点だけで釣られて箱の中に入ったレミントンたちは、実際に、歓楽街で好き勝手にしているだろう。まあそれ自体は『上』の思惑通りだから良いとして……」
「何の努力もせず、釣られて座っただけ。か……なるほど、確かに、自分が持ってる権限を全て理解しているとは思えねえな。そうする必要がないぜ」
事実として、協会において三割に食い込む大きさに達するのがレミントン派である。
そのトップともなれば、扱える権限も多いはずだ。
ただ、それらが自分にきばを向くような気がしない。
向いたとしても大丈夫なように準備しているし、『麻痺玉』もその策の一つだが、どうにも『弱弱しい』のだ。
「……うーん。なんか、話しててもスッキリしねえな。あるじはレミントンをこれからどうするんだ?」
「いても邪魔だ。消えてもらおうか」
「なるほど」
「協会本部の上級役員と言うのがどういうものなのか。前々から興味があったのは事実だけど、レミントンだと話にならない。何の参考にもならない。こっちからも動いて、『他』の人に顔を出してもらおうか」
「まあ、確かに。『宝』の性質を考えれば、ラトベルトたちが動いてもおかしくはないぜ。その点で、一々レミントンのことを考えなきゃいけねえのはめんどくせえわ」
というわけで。
レミントンにはさよならバイバイしてもらいます。
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