第5話

大柄ゴブリンとの死闘を終えた俺は、極度の疲労と身体の痛みで息を荒げながら地面に倒れ伏した。


ゴブリンに転生してからここまで傷を負ったのは初めてだ。


どうして俺がこんな目に合わなければならない。俺はただ、俺の住処を勝手に使ってる屑を殺そうとしただけなのに…


心の中で身勝手な悪態をついていると、今日で3回目のレベルアップ情報が脳内に流れた。


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ゴブリンLv7→Lv10max


進化可能


ホブゴブリン

ゴブリンの通常進化種。適性や能力値の補正は存在しない。


ゴブリンファイター

近接戦闘に優れた適性を持つゴブリン種。近接攻撃時に能力値の中補正。


ゴブリンウィザード

魔法戦闘に優れた適性を持つゴブリン種。魔法使用時に能力値の中補正。


ゴブリンシャーマン

呪詛に優れた適性を持つゴブリン種。呪詛使用時に能力値の中補正。


『繁殖Lv4』


『悪食Lv3』


『雌特攻Lv1』


『ゴブリン特攻Lv3→Lv5』


『簒奪Lv1→Lv2』


『アナライズ』new

他者のステータスを知る事が可能。又、自身のステータスをより詳しく知る事が可能。


『???』

進化後習得


『???』

進化後習得


『???』

進化後習得


『???』

進化後習得


『???』

進化後習得


『???』

進化後習得

——————————


レベル7から一気にレベル10になっていた。レベルが飛んで上がったのは初めてだ。それだけ大柄ゴブリンが格上だったのだろう。


進化も可能になっているが、前回はレベル5になった瞬間にチャイルドゴブリンからゴブリンに進化したんだが今回は選択式なのか。


ホブゴブリンは選ぶメリットがないな。通常進化種って事は、大抵のゴブリンはボブゴブリンに進化するのだろうが、俺は他に3種類の

進化先がある。態々通常進化を選ぶ必要はないだろう。


ゴブリンファイターは今の俺の戦闘スタイルをそのまま強化した感じか。まあ俺は現状近接戦闘しか出来ないから仕方なくやってただけだが。それでも肉体を使って直接敵を殴り殺す方法は爽快感が一番強いんじゃないか?


ゴブリンウィザードは元の世界には存在しなかった魔法が使えるのは魅力的だが、後衛だけでこの先やっていくのは辛い。それでも多彩な魔法を駆使したり、大規模魔法で敵を殲滅したりと浪漫溢れているな。


ゴブリンシャーマンはデバッファーでいいのか?もし呪いの種類が豊富なら色々悪さ出来そうだ。他のゴブリン種よりも、隠れながら一方的に惨たらしく殺せそうなのがいい。こっちも後衛だろうから其処がネックか。


他にも変更点を確認したい所だが、進化しないと習得出来ない6つのスキルや、進化によって変動する能力値を考えると『アナライズ』で詳しく知るのは後回しにして進化を優先しよう。


4種類——ホブゴブリンは候補から除外してある為実質3種類——あると悩むが、悩むぐらいならフィーリングで選んでしまえばいい。俺はゴブリンシャーマンに進化する。


呪いで色々な殺し方を楽しめるのかと思うと、このゴブリンの体は悦びで満ち溢れるのだ。


進化を望んだ瞬間、俺の身体は光に包まれた。これは前回のチャイルドゴブリンの時にも起こった現象だ。


光が治まると、無事にゴブリンシャーマンに進化しており、身体の傷が全快していた。これは前の進化の時は無傷だったから初めて知ったな。


傷が治った事で漸く身体を起こせるようになった俺は、立ち上がって全身を隈なく確認する。


身長は140センチ程度だろうか、20センチも大きくなったのは嬉しい。本音を言えば180は欲しいのだが、それは今後の進化に期待しておこう。


両腕にはそれぞれ刺青が彫られている。右肩には人間の男が、左肩には人間の女が、それぞれ苦悶の表情を浮かべながら血を吐いており、その血が纏わり付くように手の甲まで伸びている。


身体だけでなく、今まで丸腰に腰蓑一丁だった最低限の装備も大きく変わっている。


まずは杖を手に入れた事か。持ち手は2本の木材が歪な形で捩れて絡み合っており、先端部分には山羊の頭蓋骨が取り付けられている。邪悪な術師が使うテンプレみたいな杖だが、禍々しい雰囲気が厨二心をくすぐる一品だ。


首ともには、髑髏を中心に左右に謎の生物の爪が2本ずつ付いている首飾りも装着していた。頭蓋骨や髑髏といい、この装備の製作者は骨を装備に組み込むのが好きなのか?俺は格好良くて大好きだからいいけどさ。


腰蓑は、最初の洞窟に居た女が使ってた布の服を適当に巻いただけの簡素な物だったが、ドス黒い血の色をした謎の皮の腰蓑に変わっていた。革鎧みたいな硬さはなく、柔軟性がある為着心地は悪くない。


見窄らしいゴブリンから、厨二感満載のゴブリンシャーマンに大変身だ。外見の変更点はこれくらいか。


所で一つ疑問なんだが、これらの装備品はどこから調達されたんだ?進化した時に勝手に持ってたから、壊れたり無くしたりしたらどうなる?新しく支給されると考えるのは希望的観測が過ぎるか…


だとすれば壊さない様にすればいいんだが、この身体は怒りで我を忘れ易く、そうなると何をしでかすか分からんから自信は無いが。


まあそれは壊れた時に考えればいいか。効果があるかは不明だが人間から杖や防具を奪えばいいだけの話だ。


外見はこれくらいにして、次はお楽しみのステータスだ。『アナライズ』を発動して、より詳しい情報を表示して確認を始める。どれ程強くなっているか楽しみだ。

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