第3話
気が済むまで殴り続けると多少は理性が戻ってきて、マウントポジションを解除する。周りに脳漿や目玉をぶち撒け、顔の原型が無くなったゴブリンを見下すのは気分が良い。
——————————
ゴブリンLv5→Lv6
『繁殖Lv4』
『悪食Lv3』
『雌特攻Lv1』
『ゴブリン特攻Lv3』
『簒奪Lv1』
——————————
おお、久しぶりのレベルアップだ。洞窟でレベリングしてた時はレベル5までは割と順調にレベルが上がったが、それ以降全然上がる気配が無かったからな。
おそらく一つの節目として、5の倍数で進化したり、必要経験値が跳ね上がったりするのだろう。俺がチャイルドゴブリンからゴブリンに進化した時もレベル5だったし。
ゴブリンでレベル5になった時にワンチャン進化すればいいなと思っていたが、そこまで甘くは無かった。そうなると次はレベル10になった時に期待が持てる。
さて、殺意も治ったし、レベルアップして気分も良い。後は腹を満たす為にこいつを食うだけだ。肉を喰らって腹を満たし、血を啜って喉を潤す。
チャイルドゴブリンより不味いのか、『悪食』のお陰でそこそこ値段が張る豚肉や赤ワインみたいな味に早変わりしてる。これなら当面の間はゴブリンを主食にしていいな。数だけは無駄に居るから見つけるのは簡単だろう。
一欠片も残さず綺麗に食べ終わると、漸く心に余裕が出来て周りの状況を確認する事が出来た。洞窟の外は深い森に覆われており、陽の光が殆ど降り注がず不気味な雰囲気を漂わせている。
森ならモンスターの種類も豊富だろうし、早速探してレベリングと洒落込もうか。
——————————
洞窟を離れて森の中を暫く彷徨っている間に、9匹のゴブリンを怒りのままに殴り殺してやった。『簒奪』による能力値上昇がある分、通常のゴブリンは苦戦することなく簡単に殺せた。
奴等は自分以外の存在を見下す生態をしており、会う奴は例外無く俺を馬鹿な獲物を見る目で見てきた。まあ俺もゴブリンの事は食料兼経験値としか思ってないが。
しかし、この簡単に怒りに支配される体質は何とかならねぇのか?今はまだゴブリンにしか遭遇してないから良いものの、他のモンスター相手に毎回こんな闘い方してたら直ぐに死んじまうぞ…
そんな事を考えながら歩いていると、木の陰から物音が聞こえた。何だと思って振り向くと、そこには角が生え、前脚の何倍も肥大化した強靭な後ろ脚を持つ兎が居た。
おお、やっとゴブリン以外のモンスターを見かけたぞ!!
その兎は俺を視界に収めると、直ぐ様後ろ脚に力を込めて、角を向けながら俺の腹に目掛けて勢い良く飛び掛かって来た。
その飛び掛かる速度は速いが対応出来ないほどじゃなく、角が刺さる少し手前で両手を使って角を掴み取った。
思ってたよりも威力が高くて多少後退させられたが問題はない。
角を掴まれながら空中で手脚を振ってなんとか逃れようと足掻く滑稽な姿を晒す兎を嘲笑いつつ、ハンマー投げの様に頭上で何度か振り回しながら近くの樹に叩き付ける。
べキャッと樹の表面が割れる音と、ボキッと角と背骨が砕ける音を森に響かせながら兎は絶命した。
雑魚だったが、初めて見るモンスターは新鮮でいいな。
俺が戦闘の余韻に浸っていると、脳内にレベルアップの文字が表示された。
——————————
ゴブリンLv6→Lv7
『繁殖Lv4』
『悪食Lv3』
『雌特攻Lv1』
『ゴブリン特攻Lv3』
『簒奪Lv1』
——————————
1日で2レベルも上がるとは幸先がいいな。新しいスキルを覚えたり、スキルレベルが上がったりはしてないが、『簒奪』と合わせて肉体が強くなっていく感覚が堪らん。
この流れのままレベリングを続けたい所だが、陽が落ちてきて昼間ですら暗い森が余計に暗くなっている。
ゴブリンは夜目が利くから行動する事自体は出来るが、丸一日行動しっぱなしで疲れてきたからそろそろ休みたい。
何処かいい場所は無いかと辺りを見回すと、俺が最初に居たのとは別の洞窟を見つけた。
洞窟は雨風凌げるから住み心地は悪くないんだよな。最初の住処も下等生物が住み着いてたのと、出口が遠い事以外不満無かったし。
もしこの洞窟が最初の洞窟みたいに迷路じみて無いなら、暫くは俺の拠点として使ってやろう。
意気揚々と洞窟の中の一本道を進んでると、奥から苦しそうな呻き声が聞こえてきた。俺の新しい住処に不法侵入してる屑は何処の何奴だ?
見つからない様に岩陰に隠れながら覗き込むと、そこには複数の切り傷を負った大柄のゴブリンが座りながら壁際に寄り掛かかっており、隣には60センチ程の棍棒が立て掛けてある。
またゴブリンかよ!!大柄って事は俺の上位種なんだろうが、今日はもうお前らの顔は飽きる程見たんだぞ!?
また頭に血が登ってくのを感じるが、まだ我を忘れる程じゃないし、このまま無策で飛び出しても勝てるか分からない。
大柄のゴブリンは入り口方向を向いているから不意打ちは出来ないし、体格差は120センチ程度の俺に対して、奴は180センチは超えている。
隣にある棍棒も厄介だ。あんなので殴られたら良くて骨折、下手すると1発でお陀仏だ。
こっちの勝ち筋は奴が手負なのと、『ゴブリン』特攻のスキルを持っている事だ。
素人目だが切り傷はどれも命に関わる程深くは見えないが、苦しそうに呻いてるのを考えると、戦闘能力は大分低下してるのか?この体格差では『ゴブリン特攻』の補正も何処まで通じるか…
俺がどう闘うか悩んでいると、大柄のゴブリンが苦しそうに話し始めた。
「い、つ迄そこ、の岩陰に、隠れ、て居る、つもりだ。出てく、る度胸が、ない、なら、さっさと、消えろ!!」
ああ、終わった———
「上等だ死に損ない風情が調子に乗ってんじゃねぇぇぇぇぇ!!お望み通り今すぐぶっ殺してやる!!」
大柄のゴブリンが投げつけて来た挑発を聞いた瞬間、今までの迷いは視界が赤く染まったと錯覚する程の怒りで塗り潰され、俺は激情に流されるままに大柄ゴブリンに向かって突撃した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます