第47話 親というもの2

「すまないね碧くん。舞に彼氏ができるというのは初めてで心配だったんだ」

「なるほど」

「…それに君は多分だけど舞から昔のことを聞いているよね?」

俺は首を縦に振って肯定した。

舞の昔のこと…要するに中学時代に起きたストーカー事件のことである。

そんなこんなで男性を毛嫌いしていた娘に彼氏ができた。

これほど心配になることはないだろう。だからこそ俺は真さんの気持ちがとても理解できた。

「少し威圧的になってしまうかもしれないけどこれだけは聞いておきたいんだ。君はこれからも舞の隣にいて、舞の幸せを約束してくれるかな」

「お父さん…」

「君が本当に舞のことを愛していて大事にしていることはわかっているつもりなんだ。けれども舞は僕たちの娘。だからどうしても慎重になってしまうんだ」

本当に舞の両親がこの人たちでよかったと思う。この二人だからこそ今の舞があって、舞が普通に生活できている。俺がした貢献なんてほとんどないのだ。両親と愛田さんがいたからこそ舞は立ち直れたのだと思う。

だからこそ俺は真さんの真剣さに応えるために嘘をつかないことにした。

「…正直に言って幸せにできる保証も自身もないです」

「…碧くん?」

「舞は自分では釣り合わないぐらいに素敵な女性ですし、未だにやっぱり心配になってしまうことはあります。けれども自分が釣り合っていないのであればその分だけ努力します。舞が幸せになれていないのなら舞が幸せと感じるまで幸せにします」

普通こういうときは素直に幸せにすると言うものなのだろう。けれどこれが俺。

弱音を吐いてばっかりの俺。けどそんな自分でもできることがあるって教えてくれたのは舞だ。だからこそ自分は自分にできることで舞を幸せにするって決めたのだ。

今すぐとは言えない、何年もかかるかもしれないけどそれでも舞が自分の隣にいてくれるって信じているから。

「…そっか、なら安心だな。これからも舞のことをよろしくお願いします」

そうして舞の両親は俺に頭を下げてくる。

慌てて止めようとしたが、舞に突然抱き着かれてそれは構わなかった。

舞は笑っていた。涙を流していたが笑っていた。

そうだ、この両親は娘の笑顔を守ったのだ。娘の幸せを守ったのだ。

舞につらい過去があろうとも舞が幸せになれる道を歩ませることができた。

もちろん舞本人の努力やそれ以外の要因もあるかもしれない。けどきっと舞の両親はとても頑張っていたのだと思う。舞の笑顔を曇らせないために。

そうしてそんな笑顔を見守るのだ、自分の母親もしてくれたことだ。

これがきっと親というものなのかもしれない。

今の自分たちにはわからないことだ。でもきっといつかわかる日が来る。

その日まで俺は努力をし続け、世界一かわいい彼女を幸せにし続けるのだ。



そんなこんなで面談(?)は無事に終わり、舞の実家で昼食をいただくことになった。食事をしながらも雑談をしていたのだが…

「そういえば二人は既に結婚の準備とかしてるのかい?」

「ぶふっ」

真さんがなかなかえげつない質問をぶっかけてきた。

「ちょ、お父さん?!さすがにそんな準備はしてないわよ!いやたしかに朋美さんには高校卒業したら結婚しても大丈夫って言われてるけど…」

後半少しずつ声が小さくなりながらすべてを話す舞であった。

「あらあら若いわねえ。碧くんもその気なのかしら?」

「…?その気とは?」

「あら?明らかに舞が、高校卒業したらすぐに結婚する気みたいな目をしているから碧くんもそうなのかと思ったんだけれど」

そうして舞のほうへと視線を向けると舞は赤面しながら俺から視線をそらした。

「い、いやわかってるわよ?ちゃんと碧くんの仕事が決まるまでは待つつもりだから…多分」

全く信用できない舞であった。大丈夫だよね?高校三年生の時の誕生日プレゼントで婚姻届けとか渡されないよね?いやまじでやりそうだな…

舞の部屋から婚姻届けが発見されたのは一か月後のことであった。










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最近手抜きでは?!いや気のせいですよ…多分。

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