第41話 調査と幼馴染

俺と舞は翌日から早速、桐原先輩を調査することにした。

殺気満開で調査しようとする俺を舞が抑えつつ調査を進めていた。

そうするとちょうど、香恋先輩と話している桐原先輩の姿があった。


舞がどうやら香恋先輩と連絡先を交換したらしく、桐原先輩に積極的に話してほしいとお願いしていたのだった。

そうして香恋先輩と桐原先輩が話しているところ、そしてその他の女子生徒と話していたりするところを観察していたのだが…


「…ねえもしかしてだけど」

「だよね…確証はないけど、なんとなくそんな気がする」

そうして俺と舞はある一つの結論に至った。


その次の日、俺と舞は生徒会室を再び訪れていた。

「ふむ、来たか二人とも」

「…別に無理してそのキャラ演じなくていいんですよ?」

「えっと…うんそうだね…」

というわけで素の状態に戻った香恋先輩と話すことに。


「それで調査の結果はどうだった?」

「まあ調査の結果を伝えてもいいんですが…」

「ですが?」

「その前に、香恋先輩はなにか俺たちに嘘をついていませんか?」

「えっ?」

俺と舞が至った結論。しかしその結論では香恋先輩が俺たちの相談をしたときに嘘をついていたことになるのだ。


「う、嘘ってどういうこと?」

「いやなんていうんですかね…なんとなく、桐原先輩は香恋先輩が生徒会長キャラを演じていることを知っている気がしたんですよね」

「…なんでわかったの」

やっぱり。あの二人が話している時、妙な違和感を覚えた。

桐原先輩は香恋先輩の生徒会長口調を少し可笑しそうにしながら話していたのだ。

口調自体を笑っているのではなく、そのキャラを演じていることを笑っているように。


「なんでわかったかと言われれば難しいですね…強いて言うなら、二人の距離感がなんて言うんだろう…友達というよりかは幼馴染?的な感じに見えたんですよね」

「っ?!なんでそこまでわかるの?!」

いやさすがにそこまで当たっているとは思ってもいなかった…


「まあ、それはいいとして。どうしてわざわざそんな嘘を?」

理由はなんとなくわかる気がした。

幼馴染だからという理由で俺たちが協力し、桐原先輩と付き合うことになるのが嫌だった。幼馴染という少し特別に感じる枠で桐原先輩の側に居たくなか―――


「だって恥ずかしいじゃん…!」


「 「は?」 」

「いやだから…幼馴染でいつでも告白できたはずなのにこんな時期まで引きずってるなんて恥ずかしくて言えないじゃん…」

「…」


え、いやそんな理由?と突っ込みたくなったがとりあえず抑えた。

「ま、まあとりあえず私の恥ずかしい事情はいいとして!調査はどうだったの?」

なんか無理やり話を終えられたがまあいいだろう。

「とりあえず俺たちは桐原先輩が何股もかけているという噂について調査したんですよね…」

「…」

きっと香恋先輩も噂自体は知っているのだろう。

「それに関しては私が悪いの…彼のことを止めることが出来なかったから…」

「香恋先輩…まあ、股かけてたりはしてなかったんですけどね」

そうして俺は調査してきた真実を伝える。

「え?」


「いや確かにこれまでに何人とも付き合ってはいると思うんですけど…多分ですけど二股とかにならないようにしっかりと別れてから別の人と付き合ってますね」

「え?いやでもそれは女の子をとっかえひっかえしてるってことじゃ…」

「それが…悪いと思いつつもデートを尾行させてもらったんですけど。桐原先輩全然楽しそうじゃなかったんですよね」

「楽しそうじゃなかった?」

「はい。私たちが見たなかだと、香恋先輩と話している時が一番楽しそうな顔してましたね」

「え?」


「…あの、一応聞くんですが。桐原先輩に好きな人がいるという話はしたことありますか?」

「あるね」

「その時に桐原先輩から『もしかして俺?』とか聞かれました?」

「すごいねよくわかったね」

「そのときに恥ずかしさのあまり否定しました?」

「君ってエスパーなの?」

「…」


俺と舞は頭を抱えた。

「あの…言いにくいですが、桐原先輩は香恋先輩のことが好きだと思いますよ」

「なっ?!」

今の桐原先輩の状況はこうだ。

桐原先輩は香恋先輩のことが好きであり、香恋先輩が好きな人が居ると話をしたときに自分であるのか聞いたが否定されてしまった。

照れ隠しだということに気付かなかった桐原先輩は香恋先輩の恋路を応援するために、香恋先輩以外の特別な女性を見つけ出して香恋先輩から離れようとした。

しかしながら自分にとって香恋先輩が一番過ごしていて楽しい存在であった桐原先輩は条件に合った女性を見つけることが出来ずにいたと。


はい。これでこの話はおしまいね。

「まさかそんなことが…」

「まあこの様子だと桐原先輩は香恋先輩のことがだいぶ好きなようですから、告白すれば一発かと」

「そ、そっか…でも告白なんてどうしよう…」

「あ、それはご心配なく。そろそろ来ますので」

「え?来るって誰が?」


香恋先輩が疑問に思っていると生徒会室の扉にノックの音が響いた。

「失礼します。3年5組の桐原です」

そうして桐原先輩が生徒会室へと入ってくる。

「えっあっ、なんでたーくんが?あっ!」

「へー、普段はたーくんって呼んでるんですね香恋先輩」

その一瞬で香恋先輩の耳が真っ赤に染まった。

ちなみにだが桐原先輩の下の名前は達也という。


「いや…その二人に香恋から話があるから生徒会室に来てほしいと言われたんだけど…」

「…なるほどね」

そうして香恋先輩に睨まれたが、俺と舞は目をそらすことにした。

「それじゃ香恋先輩、桐原先輩。お幸せにー」

「失礼しました」

そうして俺たちは生徒会室から退出した。


その次の日には生徒会長と3年のモテ男のバカップルが誕生したという噂(事実)が広まった。

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