第39話 ハロウィン
母さんが訪ねてきた日から、約一ヶ月が経った。
最初こそは愛田さんはやはり遠慮気味だったものの最近は舞にぴったりくっついている。でもそれを俺も舞も嫌がったりはしない。だってそれが俺たちが望んだ日常だったから。
「ねえ舞、今日ハロウィンだね?仮装しようよ~」
「嫌よ…なんであんなお子様みたいなことを…」
「あ~、舞ノリ悪い~。ねえ碧くんはやるよね?碧くんの仮装はミ○キーね?」
「それハロウィンの仮装としてどうなの??」
いつもこんな感じだったなと思う。
自分が楽しいと思っていた日常が帰ってきたことを嬉しく思う。
「碧くんの仮装…ね…」
「お?なになに興味湧いてきた?」
「まあ多少は…」
「いやなんで俺が仮装するのが確定してるのかわからないんだけど…」
そんな様子を見ているクラスメイトの雰囲気も少し変わっている気がする。
まあなにせ舞が今までより笑顔でいることが増えているからである。
…あの甘すぎてとろけてしまいそうになる笑顔ではないが。
自分だけがあの表情を見ることが出来るというのに少し優越感を感じてしまっている。
舞と俺との関係は他のクラスの人からも認められつつあった。
そして愛田さんとの関係も元に戻って一件落着…と思っていたのだが。
昼休み。舞と愛田さんがお手洗いに行ってる間に話しかけてくる人物がいた。
どうやら今回の愛田さん事件(適当)での被害者のようで…
「おかしいなあ…絶対に愛田さんに好きになってもらえたと思ったんだけどね…」
その被害者は八幡くんであった。
どうやらあの日…俺と舞を避ける口実に八幡くんを利用したとき、八幡くんは完全に愛田さんと両想いになったと思ったようである。
そしてそのあとに告白したら…
『あー、ごめん。今そんなことより大事なものがあるんだよね!気持ちは嬉しいよ!』
と断られたのだそう。
「水瀬くん、僕はどうしたらいいのかな?」
「自分の力で頑張るんじゃなかったの…」
「水瀬くんの薄情者!僕たち親友だろう!」
「いや友達ですら怪しいと思うけど…」
今気付いたけど八幡くんって癖強い。
いやまあ俺の周りって基本的に癖強いからあれなんだけど。
八幡くんもなかなか癖の強い人物ではある。
まあ今回のことは八幡くんに迷惑をかけたかもしれないしなにか今度慰めてあげようと思う。
「それで、水瀬くんはハロウィンで仮装をし、雰囲気に流されるまま姫川さんとイチャイチャするつもりなのかい?」
「いや、言い方よ…というか愛田さんもいるしさすがにそんなことはしないよ」
「そっか。ねえ水瀬くん。いやだったら断ってくれて構わないんだが、もし三人で遊ぶのだったら僕も混ぜてくれないかな?」
「うーんまあ俺はいいけど…舞と愛田さんに聞いた方がいいんじゃないかな?」
別に俺にとっては問題はないしむしろ男子との交流も必要だと思っているので反対はしない。しかし舞もまだ男性慣れしていないかもしれないし、愛田さんに関してはこの前振った相手だ。二人の意見次第な気がする。
そうして帰ってきた二人に早速話をしてみた。
「え…大丈夫かしら碧くん?あの八幡くん?に脅されたりしてない?あなたに男友達なんて…」
「いやそんなんじゃないから大丈夫だよ…愛田さんはどう?」
「あー、えーっと。ま、まあいいんじゃないかな?」
明らかに気まずそうだった。でもきっぱりと断ったりはしないようだった。
とそこで…
「まあいいんじゃないかしら。八幡くんが一夏と話していれば私と碧くんは…」
「 「舞?」 」
「…なにもないわ」
一瞬だけど舞の顔がよく言うヤンデレ女の顔に見えた気がした。気のせいだよねうん。
「それじゃ放課後に舞と碧くんのお家へ行こー!」
「え?」
そう言ったのは俺だっただろうか。それとも舞だろうか。もしくは八幡くん。
「え?あっ!」
愛田さんは自分がした失態に気付いたようだった。
「まさかとは思うけど、水瀬くんと姫川さんって同棲――」
「はーいストップ―!それ以上はだめ!」
幸い、周りには生徒たちの話声のおかげで気付かれていないようだが、さすがに八幡くんにはバレてしまっただろう。
「八幡くん、絶対に周りには内緒だからね?!本当にお願い!」
愛田さんが必死にお願いをしている。
「ま、まあ別に言いふらすことはないけど…ただただ、このリア充が!滅びろ!と思った程度だから…」
「それは程度って言っていいのかしら…」
まあ俺もリア充なんてうるさいだけだから滅びろ!思っていた人だったから気持ちはわかるのだけれど…
「まあそうなると気になるのは普段の二人だよね。水瀬くん、家ではどんな感じなの?」
「あ、それ私も気になる!二人ってば聞いてもあんまり教えてくれないんだよね~」
「いや別に特別なことはしてないけどね…」
「えー?!ハグとかしないのー?」
「そんな頻繁にしないわよ」
まあ実際にあんまりハグとかしてイチャイチャしまくったりは全然しない。
二人とも、一緒に居れば幸せでしょ。みたいな感じだからかもしれない。
まあ俺はどんなことが幸せなのか未だに理解してない気もするが。
「えー?じゃあ水瀬くんと姫川さんはまだキスもしてない感じ?」
「……そうね」
「舞~?なんか間あったよね?」
「いや別に…」
相変わらず誤魔化すのが下手な舞であった。
そして放課後
俺たちは4人で一緒に帰り、俺たちが住んでいる学生寮へと向かったのだった。
「なるほど…学生寮だったんだね。二人って頭いいもんね」
「ええ。友達がほとんどいなかったから勉強ぐらいしかすることがなかったのよね」
「俺もそうかな。意地でも一人になって勉強とかばっかりしてた」
「なんだかとても悲しい理由を聞いた気がする…!」
こうして考えてみると俺と舞は結構似た者同士なのかも。
そうして家に着き、リビングへと通す。
「それで結局、普通に家でお菓子パーティーするってこと?」
「ぬふふーちゃんと私は仮装アイテムを持ってきているんだよー」
「えっ?ってことは愛田さんだけ仮装するの?」
「なわけないでしょー。舞の分もあるよー」
「なんで私の分まで持ってきてるのよ…」
どうやら愛田さんは舞が断らない前提で衣装を持ってきていたようで…
「それじゃ私たち舞の部屋で着替えてくるから~」
そういって愛田さんは舞を連れて行ってしまう。
横目で八幡くんの様子を見てみたら家に入ったときからそうだったのだがガッチガチである。まあおそらく愛田さんに対して緊張してるのだろう。
途中で舞の叫び声が聞こえてきたがまあ大丈夫だろう。
そうして八幡くんの緊張をほぐすために少し雑談をしているとガチャッとドアが開いた。そうしてまず部屋から出てきたのはおそらくデビル?の仮装をした愛田さんだった。
「ほら二人とも、トリックオアトリート!お菓子くれないといたずらしちゃうぞ!」
「グハッ!」
隣にいた八幡くんがぶっ倒れた。既に負傷者?が出てるんだけどこれ大丈夫か?
「だ、大丈夫?八幡くん」
「大丈夫だよ愛田さん。とても眼ぷ――いや、とても似合ってるよ愛田さん」
「そ、そう」
少し愛田さんが引いてしまっている…なんか今も『今日のために生きてきたんだ…!』とか言ってるし…さすがに大袈裟ではと思う。
確かに愛田さんは元もいいので俺から見てもとても似合っていると思う。
ただ舞が居る前でそんなことを言ってしまったら永遠と睨まれそうで怖いので絶対に口に出そうとは思わないのだが。
「早く舞もこっち来なよー!」
「い、いやだってこれちょっと露出が…」
どうやら舞曰く、舞の衣装は少し露出度が高いようで…
「もう、舞は仕方ないなあ。なら碧くんちょっとこっち来て?」
「‥?いいけど」
そうして愛田さんのもとへ行くと、なぜか俺の手を掴んで舞の部屋へと放り込んだ。
「愛田さん?!」
「聞こえなーい。私たちは今の二人に干渉しませーん」
どうやら二人きりにしてやるから好きにしろということらしい。
そうして俺は舞の方に目をやる。
舞の姿は胸元が思いっきり開いてしまっている魔女の服装だった。
…舞はそこそこデカい方なのでちょっと視線が吸い寄せられそうになってしまう。
「えっと、その…トリックアート?」
そう言って少しぎこちない笑顔を見せつけてきた舞に対して好反応するのだった。
「グハッ!」
「碧くん?!」
八幡くんと全く同じであった。ごめん八幡くん、大袈裟なんかじゃなかったです。
「碧くん大丈夫?」
そうして舞がこちらに寄ってくる。近くに来ると舞の髪からいい匂いがして余計に心臓が高鳴った。
「だ、大丈夫だよ。えっと、可愛いよ舞」
「そ、そうありがとう…」
そうして一気に照れ臭くなって二人とも黙ってしまった。
そのタイミングで…
「二人とも、もう大丈夫でしょーほら出ておいでー」
と愛田さんに言われてしまった。部屋から出ると愛田さんはとてつもなくニヤニヤしていた。
「…なに?」
「いやー?やっぱり舞は碧くんに愛されてるな~ってねえ?」
「うん、正直驚いたよ。愛田さんっていっつもこんなイチャイチャを見せられてるの?大丈夫寂しくない?なんなら僕が―――」
「さ、さあ!お菓子パーティーだ!」
…八幡くんよ、今のは無理があったと思うぞ。
そうしてハロウィンならではのお菓子パーティーが始まったのだった。
ちなみに俺と八幡くんはミ○キーのカチューシャをつけた。
マジで持ってきてたんだ…
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
舞の仮装姿をイラスト化したい気持ちはありますが、おそらくこの作品は書籍などしないと思うので難しいんですよね…
作品ということで思い出したんですが、確定ではないのですがこの作品とは別の作品を投稿し始めるかもです。まあそうなったときはまた告知しますが。
それではまた次話で。
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