第33話 デートのお誘い

…俺は今困難に直面している!!


舞の体調も良くなり、いつものようで少し違う日常を過ごして今日は金曜日。

ちなみにいつもと少し違うというのは、クラスメイト達が俺たちを見る目が明らかに違うのと、愛田さんの様子である。

ただそのことは今の困難に関係はない。

俺の前に立ちはだかっている壁というのは舞とのデートのことだ。

これがどこに行こうとか、服をどうしようとかならよかっただろう…

俺が悩んでいるのは舞をデートに誘うというところである!そう、まさに最序盤で詰まっているのだ。


最初は普通に誘えばいいと思っていたのだが、よくよく考えたら俺って女子をデータに誘った経験がない!そう思った瞬間どうすればいいのかわからなくなってしまったのだ。

体調不良で大変だった舞のために休日は一緒に出掛けたりとかしようと考えていた俺が恥ずかしい。俺ってこんなにヘタレだったっけ…


ということでこのままじゃ誘うことすらできなさそうだったので、俺はある人を頼ることにした。

「…ねえ、舞をデートに誘うにはどうしたらいいと思う?」

「普通に誘いなよ…なんで僕に聞くのさ…」

俺が相談したのは友達?とぎりぎり呼べるクラスメイトの八幡優斗であった。


「いやだって前に愛田さんを自分の力だけで付き合って見せるって言ってたからさ。そういうのに慣れてるのかなって」

「んー僕は年齢=彼女いない歴の人だからねえ。女子相手には普通に緊張するし…」

「あの自信はいったいどこから来てたの…」

ちなみに八幡くんは結構モテるらしい。前の花火大会も男友達とだけ行く予定だったが、女子に誘われ一緒に行くことになったらしい。

モテているからと言って女子に慣れているわけでもないんだなと思いました。


「まあとりあえずそこまで緊張しないことだね。普通にしてたらきっと大丈夫だから」

そう言って八幡くんは去っていく。普通にしていられるだろうか…


八幡くんのアドバイスを受け、俺は今女子の前にいる。

しかしその相手は舞ではなく…

「それで?舞のことをデートに誘いたいって?」

愛田さんであった。流石に俺でも自分がヘタレすぎて泣けてくる。

俺は愛田さんの質問に勢いよく首を縦に振った。

「え?普通に出かけようって誘えばよくない?」

「それが出来ないから相談しているんですが…」

「普通に付き合ってるんだから誘うぐらい困難じゃないと思うんだけど…」

この会話で正しいのは愛田さんである。

「いや…改めて考えると誘うのってめっちゃ恥ずかしくて…」

「…まあ気持ち自体はわかるけどねえ。舞のことを考えるならそんなことを気にしている場合じゃないんじゃない?」

「うっ…それは確かに」

舞のことを考えるなら恥ずかしさなど関係なくデートに誘うべきだろう。

「ありがとう愛田さん。俺は覚悟を決めるよ」

「あ、うん頑張ってね…」

そのとき愛田さんは浮かない顔をしていた。


――1時間前

「えっとそれで話ってなに?舞」

舞に呼び出された。もしかしたら体調不良の時に私が来なかったことに不満を感じているのかもしれない。

ここ最近は一緒に居るけど、二人のおまけみたいな感じで過ごしてきたんだよなあ…

舞は何かを感じ取っているのかもしれない。

「えっと、あのね…」

そうすると舞が顔を赤らめていく。なんで?

「じ、実は碧くんのことをで、デートに誘いたくて…けど男子と関ることがほとんどなかったからどうやって誘えばいいかわからなくて…」

…いやいや相当かわいい悩み事だな。

私は少しの間沈黙をしてから口を開いた。

「いや普通に誘いなよ…」

「ええ?!なにかアドバイスとかないの?!」

「いやないでしょ…舞たち付き合ってるんだから普通に誘えば大丈夫だって」

「そ、そういうものなのかしら」

この子まじで何を心配しているんだろう。

お互い好き同士なんだからデートに誘われたぐらいで嫌に感じたりするわけがないだろう。

「まあ緊張せずいつも通りにしていたら大丈夫だと思うよ」

「そ、そう…ありがとう一夏」

そうして舞は去っていく。

(まあ、二人がデートすることが増えたら必然的に二人の時間が増えるからね…できる限り手伝わないとね)


――そして一時間後

私はデートについての相談を受けていた。

その相手は舞の彼氏である碧くん。

(え?なんなの?ピュアなの?なんでお互いデートに誘うことに苦悩してんの?)

私はこのカップル大丈夫かなと思った。

そうして私はまたもこの二人と親しく関わってしまっていることに気付いた。

だから碧くんにパパっとアドバイスをして舞のもとへ向かわした。

私は浮かない顔をしていただろう。

いやだってまじで心配なんだもん。あの二人私がいなくてやっていける?


愛田さんに相談をした後俺は家に帰り舞と話すことにした。

舞と帰る場所が一緒であるため一緒に帰ることは少ない。

…毎日のように一緒に帰ってたら流石に危ういからね。

そして家に帰りリビングにいた舞と話をする。

基本的に雑談をしていたが、話に一区切りができたタイミングで同時に声を発した。


「 「もしよければ明日出かけない?え?」 」


見事にハモった。どうやらデートに誘おうとしてたのは舞も同じだったらしい。

二人とも目を見開いていたが、数秒経って舞が笑い出した。

「まさか碧くんも同じこと考えていたのね」

本当にまさかである。舞ってあまりそういうのを切り出すタイプではないと思っていたので、舞に誘われること自体考えていなかった。

ずっと悩んでいたデートへの誘いがこんな形で終わるとは…

「それじゃあ明日は出かけるってことでいい?」

「ええ、そうしましょう」

そうして俺たちはデートに行くことになった。


そしてその夜…

俺は別の問題に直面していた。

「服とかどうしよ…」

デートにおいての二個目の壁に衝突した俺はメッセージアプリに登録されている愛田さんの連絡先を開き、またまた相談をすることにした。



――同時刻

水瀬『デートに行くことは決まったんだけど、服とかどうすればいいのかわからなくて…』

姫川『なんとか誘うことは出来たんだけど、デートとかの経験ないからどうすればいいのかわからなくて…』

これは数分前に来た、二人からのメッセージ。


「…」

デートのことについてメッセージを送ってきた二人に私は頭を悩ませるのだった。






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