第32話 どうしてこうなった
「どうしてこうなった…」
俺は人の居なさそうな校舎の裏で嘆いていた…
本当にどうしてこうなった。
今日は月曜日。学校だるいなあと思いながらも体調不良で休んでいる舞の様子を見てから学校に向かった。舞のために学校休もうかと考えたのだが、舞に…
『学校サボりたいという欲が見えるわ・・・早く行ってきなさい碧くん』
と言われてしまった。学校サボりたいなんて半分ぐらいしか考えてなかったのに!
…半分って相当だな。でも舞を心配しているのは本当だ。
まあ今はそれは関係なくて。学校に向かうと愛田さんと会った。
愛田さんには舞が体調不良になったこと自体は伝えてある。お見舞いに来るか聞いたのだが、放課後はそのまま友達と遊びに行くと言っていた。そうして愛田さんと舞の状況を少し伝えて席でゆっくりしようとしていたのだが・・・なぜかクラスメイトに囲まれた。
そうして一人の男子生徒が声を上げた。
「水瀬と姫川さんが付き合ってるってまじなんだ!」
「…」
もしかしたら俺は口を開けて呆けていたかもしれない。
(いやなんでバレてる?屋上で二人でいるのを見られたか?)
「な、なんでそういうことになるの?」
「文化祭の日に水瀬と姫川さんがやけにくっ付いてたから愛田さんに聞いたら付き合ってるって」
「愛田さあああああああああああああああん!!!」
愛田さんの方を見るとかわいらしく手を頭に添えて、てへっとしてみせた。
いや、てへっじゃねえよ。口軽すぎない?なんで言っちゃうのかな?
「いやまあ、碧くん?後々バレるよりいいでしょ?」
「そういう話じゃないと思うんだけど…」
そうしてそこからクラスメイトからの質問攻めが始まった。
どこまでいったのかとか、なにがきっかけでそういう関係になったのかとか。
はっきり言って答えるのがきつかったので急いで教室から逃げた。
そうして今に至るのだ。とりあえず舞に起きたことを連絡することにした。
『舞、起きてる?』
『どうしたの?』
『付き合ってることがクラスメイトにバレた』
『・・・間違いなく一夏のせいね』
愛田さん信用されてなかったんじゃん・・・
『まあいい機会ね』
『いい機会?』
『これで碧くんに近づこうとする女子は減るわね』
『俺に近づく女子なんてそんなにいないと思うけど…』
『あら?文化祭の日に松本さんに告白されてたじゃない』
まあ確かに。別に中学の時もモテたりはしなかったんだけどなあ。
そうして、帰りに必要なものを買いに行くとだけ伝えてアプリを閉じる。
(…まあ、舞に近づく男子も減るかもだし悪いことではないか)
そうして教室に戻ろうと立ち上がったときだった。
「あ、水瀬くんいた!みんないたよー!」
俺を探しに来た?女子が声を上げた。前言撤回。悪いことだわ。
俺は全速力で逃げた。
4限目の授業が終わり俺は机に突っ伏した。
クラスメイト達からの質問攻めなどをなんとか搔い潜り、やっとのことで昼休み。
(そういえば舞がいないから珍しく一人で食べるのか)
最近は舞と愛田さんと一緒に食べていた。
愛田さんは他の女子生徒と一緒に食べているので今日はボッチ飯である。
と思っていたのだが。
「お疲れのようだね、水瀬くん」
「…八幡くん。何か用?」
「お昼ご飯一緒に食べようと思って。大丈夫別に質問攻めしたりしないよ」
「そっか。でも珍しいね俺なんかと一緒に食べようとするの」
「いや、今までも誘いに行こうとしてたんだけど。姫川さんからの邪魔するなというオーラがすごかったんだよね…」
「なるほど…」
俺たちが昼ご飯食べている時は誰も関わったりしてこないなと思っていたのだが、どうやら舞が「近づかないでもらっていいですか」という感じのオーラを全開で出していたらしい。
…いやまずオーラってなんだよ。俺そんなの見えなかったぞ。
「にしても、まさかあの姫川さんが誰かと付き合うなんてね」
「やけに知ってる風だね?」
「実は姫川さんと同じ中学校だったんだよね。中学の時見た姫川さんは、愛田さん以外とほとんど話さない程だったから。告白を除いてね」
「そうだったんだ・・・てか結局舞の話?」
「舞?君たちは下の名前で呼び合ってるんだね」
「あっ…」
やべ。つい普段の呼び方で呼んでしまった。俺たちの話に耳を傾けていたのか、他のクラスメイト達が騒ぎ出す。いやもう勘弁してくれ…
「まあ、それで本題なんだけどね…」
「本題?」
「うん、水瀬くん。僕と友達になってくれないかな」
…いやなんで?なんかめっちゃ怪しいんだけど。
「えっとなにか企んでる…?」
「あ、やっぱりバレる?ちょっと耳貸して?」
そうして八幡くんは耳打ちをしてくる。
『実は僕、愛田さんのことが気になってて…』
「…!」
なるほど。それで愛田さんと近づきたいということか?
「ごめんだけど、肩を持ったりはしないよ?」
「ああ大丈夫。水瀬くんと普通に友達になりたいというのが本心だから。まあ、肩を持ってくれないかなという期待はしていたんだけど」
「期待してたんじゃん…まあ、応援するだけで…」
「うん、自分の力だけで愛田さんと付き合ってみせるよ」
そういえば愛田さんのタイプとかは聞いたことなかったな。
まあ聞く気はないんだけど…
そうして俺に、高校初めての男友達?ができたのであった。
…いやまじで友達か怪しいぞ。
――そして放課後
俺はゼリーなどをスーパーで買い、急いで家に帰る。
そうして家について舞の部屋に向かった。
「おかえりなさい碧くん」
「ただいま。体調はどう?」
「昨日よりかはマシだとは思うわ」
「そっか」
舞のおでこに手を置く。昨日よりも熱は下がっているかな?
「まあ、念のために明日も休んだ方がいいかもね」
「そう…」
「俺が明日は一日中看病を――」
「ちゃんと学校に行きなさい…」
やっぱり無理かあ…。そうして昨日と同じように舞が眠くなるまで手を握り、雑談をした。クラスメイトの質問攻めで疲れたこと。八幡くんと友達?になったこと。
色んなことを話した。その時間がとても幸せに感じる。
そして、舞相手なら俺はなんでも話すことが出来るかもと感じた。
…それなのに。それなのに愛田さんのことだけは話すことが出来なかった。
愛田さんが今日お見舞いにこれなかった理由だけは話せなかった。
友達と放課後に遊びに行くから。あれは嘘である。
彼女は放課後にそのまま遊びに行くと言っていた。でも…愛田さんが悲しい顔をしながら一人で家に帰っているところを見かけてもそれを信じれるだろうか?
俺が寄ったスーパーは愛田さんの家の近くではある。
なのでたまたま帰ってる途中の愛田さんのことを見かけた。
愛田さんが舞のことを嫌っていることはありえないだろうきっと。
今日だってずっと舞の体調を心配していたぐらいだ。
ならなぜ彼女はあの状況で嘘をついたのだろうか…
それだけが今日の俺の心残りだった――
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