第28話 ほどけることのない関係

文化祭での仕事を終え、着替えも済ましたところで俺は舞を探し始めた。

愛田さんと舞は俺が着替え終えた時には教室にはいなかったのでもうすでに一緒に回り始めているかもしれない。

だから俺はいろんなクラスに行って二人を見なかったかと聞き込みをした。

そうすると愛田さんを見かけたという生徒が一人いた。

お礼を言って愛田さんが向かって言った方向へと向かう。

情報の通り、愛田さんはそこにいた。

(あれ?でもなんで一人なんだろう)

「愛田さん!」

「・・・やっぱり碧君ならそうすると思ってたよ」

「え?」

「舞は屋上にいるよ。あまりにも遅いと舞が探しに来ちゃうかもだから急ぐんだよ」

全く、この人はどこまで見え透いているんだ。と思った。

でも今は感謝の言葉しか出てこない。

「ありがとう!愛田さん!」

そうして急いで屋上に向かう。

屋上に着いたところで屋上のドアに手をかける。

そうして視界に入ってきたのはとても驚いた顔をしている彼女の顔。

きっと俺がここに来るなんて思ってもいなかったのだろう。

だから俺はここに来た理由を明かすためにこの言葉を使うのだ。

「今度は俺が助ける番だね、舞」




「どうしてあなたが・・・」

「愛田さんに聞いたんだ、舞がここで待ってるって」

・・そういうことか。きっと舞はこのことを見越して私を屋上に誘導したのだろう。

「なるほどね・・・それで碧くん、何か用?」

「さっき言っただろ、舞を助けに来たんだ」

「・・・」

「ねえ一つ聞いていい?」

「・・・なに?」

「俺ってどんな男かな?いい男?ダメダメな男?」

「松本さんから告白されたのでしょう?なら答えはわかっているのでは?」

彼はさっき松本さんから告白されているのだ。その時点でダメダメな男ではないだろう。

「それは松本さんの意見でしょ。俺が聞きたいのは舞がどう思ってるのかってこと」

「っ!・・・優しい男の子だと思ってるわよ」

ここだけは嘘をつくことが出来なかった。

「そう?ならよかった」

なにがよかったのだろうか。

「・・・ねえ、何があったのか聞かないの?」

「聞かないよ。舞が話してくれるまで待つから。舞が俺の話を待ってくれたのと同じように」

そうか。彼は本気で私を助ける気なのだ。たとえどんなけ時間がかかろうとも。

それでも私を助けようとしてくれる、私にとって世界一優しい男の子。

「―――――」

だから私は話してしまった。告白の時に男子に言われたこと。

碧くんを傷つけたくなくて避けていたこと。でも本当は避けることも辛かったこと。

「・・・そっか、俺のせいで悩んでたんだね。ごめん」

「ち、違うの!謝るのは私の方なの。ごめんなさい」

そうして頭を下げる。こんなことじゃ許されもしないだろう。

「・・・私は君を傷つけたくない。だから私と碧くんは関わらないほうが・・・」

「・・・もう傷ついたよ」

「え?」

「俺、舞に避けられてとても辛かった。もしかしたら嫌われたんじゃないかって怖かった」

「――っ!」

そうか。私はなんて最低な女なのだろう。

彼はもう傷ついていた。ほかの誰でもない。私が彼を傷つけていた。

私が急に彼を避けたのだ。そのせいで彼は傷ついた。

その瞬間に涙がとてもあふれてくる。

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

何回謝ってもきっと許されることじゃない。

自分の勝手な妄想で彼を避けて彼を傷つけた。その事実だけで心臓が苦しくなる。

きっと彼は私を見放すだろう。けど見放されて当然。それぐらいのことをした。

けれど彼が私にかけた言葉は予想外すぎる言葉だった。

「・・・俺、舞のこと好きだよ」

「―――」

声が出なかった。どうして?急な告白?それに私は彼に好かれる部分なんて持っていない。

「ずっと自分の感情に嘘ついてた。舞に俺なんかじゃ釣り合わないって。

こんな俺が舞のこと好きになっちゃいけないって。だからごめん。」

「だ、だから碧くんが謝ることじゃ・・」

「周りの男子が俺のことを目の敵にしてるって言ったよね?」

「え、ええ」

「そんなの気にしないよ。舞が居ればいい。舞さえいるんだったら別に周りの男子になんと思われようが気にしないよ」

「っ!」

彼は私のことをどんだけ泣かせれば気が済むのだろう。

私と一緒に居られるなら他の人との関係なんていらないと言ってくれているのだ。

「で、でも私あなたに酷いことをした!あなたを傷つけた!」

「なら埋め合わせをすればいい。これからね」

涙が止まらない。彼の言葉一つ一つがとても嬉しい。けどこんな自分でいいのだろうかという考えが頭の中に残ってしまっている。

「舞、俺と付き合ってほしい。だから、舞が俺のことをどう思っているのかも聞きたい」

彼からの真剣な告白。鼓動が早くなる。

彼は私と釣り合っていないと思っていたらしいがそんなことはない。

釣り合っていないのは私なのだ。彼に対して私はいいところがなにもない。

こんな私でいいのだろうか。断った方が彼の幸せなんじゃないだろうか。

そんな考えが頭の中にずっと残っている。

断れ。断れ断れ断れ断れ断れ断れ断れ断れ断れ。

頭の中でずっとそう指示されている感覚だった。

そして私は覚悟を決めて言葉を発するのだ。

「私も、碧くんのことが好きっ・・・こんな私でよければこれから、埋め合わせをさせてくださいっ・・・」

嗚咽が混じって聞き取りずらかったかもしれない。

けど彼にはちゃんと聞こえていたのだろう。

彼は少し安心した顔で泣いていた。彼の泣き顔を見るのは初めてかもしれない。

でもよかった。初めて見る泣き顔が悲しいものじゃなくて。

彼の今の泣き顔が嬉しさに満ちたものでよかった。

私は彼との距離を詰めて彼の背中に手を回した。

彼も私がなにを求めているのかすぐに理解してくれたのか、私を抱き寄せてくれた。


私たちはこの日、恋人になった。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

これにて完結・・・とはいきません。

私が好きな小説のタイプは付き合ってからの物語が描かれている作品なので、まだ続きます♪

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