第26話 避けられイベント

学校で舞と友達として過ごせるようになってから数日が経った。

まだ男子からの痛い視線はあるものの少しずつ浸透されつつあるようだった。

だから今も俺は舞と愛田さんと話してる・・・はずだったのだが。

(明らかに避けられてるよね・・・?)

なぜか昨日から明らかに舞に避けられている。

昨日は家でも特に口数が少なかったし、夜ご飯も別々に取ったりした。

流石に気になるから聞きたいとは思うけれど、舞が避けたいと思って避けているなら俺が無理やり関わるのも悪いという気持ちもある。

(うーんどうしようかな)

「お?どした?なにか悩んでる顔してるねえ」

「・・愛田さん。実は多分だけど姫川さんに避けられているっぽいんだよね」

「あーやっぱりそう?なんか碧くんがいるときだけ舞が黙るから何かあるとは思っていたけど。なんかしたの?風呂覗いた?」

「いや何もしてないよ・・・心当たりがないから余計に気になるんだよね」

「そうだねえーしかも明後日からは文化祭だからね。このままじゃ一緒に回れないよ?」

「いやもともと一緒に過ごすつもりでもなかったんだけど・・・中学の時は屋上で寝てたし」

一緒に回る友達なんていなかったから店の仕事だけして屋上で寝るのが基本だった。

だから今年もそのつもりでいたんだけれど愛田さんは不満があるようで。

「うわあ悲しいね。今年は3人で回るんだから!舞と仲直りしてよ」

「いやまず喧嘩とかしたわけじゃないんだって」

「うーんまあならこっちでもなんとなく探り入れとくかなあ」

「ありがとう愛田さん」

そうしてチャイムが鳴り授業の始まりを知らせる。

そしてHRが終わり家に帰宅した後、今日の家事を終わらせる。

ちなみに今日も舞は俺のことを避けているようだ。

だから思い切って舞に聞いてみることにした。

「・・・ねえ舞、なんか俺のことを避けてる?」

「・・・」

「舞?」

「・・・碧くんが悪いわけじゃないから気にしないで」

冷たい声だった。いつも学校で放つ氷姫の雰囲気。

だからきっと踏み込んでほしくないのだろうと思い、俺は頷いて部屋に入った。

(けど、なぜか舞に避けられていると寂しい気持ちになるんだよな)

そろそろ俺は自分の舞への気持ちを整理しないといけないのかもしれない。


――数日前

「姫川さんちょっといいかな?」

「・・・?」

「ちょっと屋上についてきてほしくて」

ああなるほど告白か。告白自体はよくあることである。

まあ碧くんと学校で友達として過ごすようになってから増えてる気もするけど・・・

そうして名前も知らない男子について行き屋上へと向かう。

「姫川さんのことが好きです、僕と付き合ってください!」

「ごめんなさい、そういうのに興味はないの」

「・・・やっぱりか」

なぜ告白をするのだろう、きっと振られることなどわかっているはずなのに。

「姫川さん、友達からでもいいからさ友達から始めれないかな?」

「ごめんなさい。あなたのことあまり知らないから」

こういう告白は慣れているので同じ方法で断ればいい。

もう終わりだろうと教室に戻ろうとしたのだが・・・

「・・・ねえ姫川さんにとって水瀬って何なの?」

「・・・?友達よ?」

「本当に友達なの?水瀬のこと好きなんじゃないの?」

「っ!・・好きじゃないわよ。普通に友達よ」

「なら俺も友達からなら始めてもいいじゃないか!」

「どうしてそうなるのかしら」

別に碧くんと私が友達だからって他の人が友達になる理屈なんてないだろうに。

「・・・実は姫川さんと同じ中学のやつに聞いたんだ。姫川さん、男子に対してトラウマがあるから男子を避けているって」

「・・・」

「それなのに水瀬とは普通に接しているじゃないか。だから水瀬は姫川さんにとってなにか特別なんだろ?」

「・・もういいかしら、水瀬くんが私にとって特別なのかただの友達かなんてあなたには関係のないことだと思うわ」

「クソっ!何で水瀬なんだよ!あいつさえいなければそこは俺だったのかもしれないのに!」

それはないと思う、私は碧くんだからこそ心を許したのだ。

だからこそ彼の言葉なんて気にすることはないのだろう。いつも通り碧くんとは友達として過ごせばいい。そう思ったはずなのに・・

彼の最後の言葉が他の男子たちも思っていたとしたら?

今間違いなく碧くんは男子たちから目の敵にされている。

そうしてそれがいじめまで発展したら?"私のせい"で碧くんがひどい目にあってしまったら?私は耐えられないし責任を取ることもできない。

碧くんだって友達が欲しいと思っているに決まっている。でも今ここで男子たちのことを碧くんが信用できなくなってしまったら友達ができなくなるかもしれない。

碧くんのこの高校生活の未来を私で左右してはいけないのだ。

それと男子とは逆で碧くんは女子からはある程度の人気があるそうだ。

彼は優しいから、人気自体はあるだろう。

けど私が近くにいる。それが邪魔で碧くんに告白しない人もいるのかもしれない。

だとしたら?私は今碧くんにとってなんなのだ?私がいることで碧くんはもしかしたら色々な被害を受けているかもしれない。ならば私は碧くんにとっての『邪魔者』なのかもしれない。そう考えた瞬間胸が苦しくなる。

私は碧くんのことをどう思っているのかわからない。彼が特別であることなんてことはとっくにわかってる。けどそれが好きという感情なのかはわからない。

そして例え私が今碧くんのことを好きだとしても碧くんと関わるのはだめなことなのかもしれない。だからこそ私は碧くんのことを避けるべきなのだ。

碧くんを取られたくないという気持ちが自然と湧いてくる。

けれどもその気持ちは心の中だけに閉まっておこう。

彼には幸せになってほしいのだ。私はたくさんの過去を聞いてしまったから。

だから彼が幸せになれるのであれば相手は問わない。それが男友達だろうと他の女の子だったとしても。


そうしてその日から私は碧くんを避けるようになった。




 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ここらへんはすごく暗い展開が多いですが許してください・・!

ちゃんと明るい展開もありますから!

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