第24話 大切な家族2
「久しぶりね。それでその隣の方は?」
そう俺と母さんが一瞬声が出なかった理由。それは父さんの隣にいる女性のせいだ。
父さんが浮気をしたことで離婚をする決意をしたのだ。
だから父さんの隣に女性がいるのは別におかしいことではなかった。
それが、当時の浮気相手であり、そして今回が話し合いの場じゃなければの場合のみだ。
父さんの隣にいるのは父さんが浮気をした女性とは別の女性だった。
そして今回俺らが話し合いを受けたのは大事な話だと言ったからである。
その場に俺たちからしたら全く関係のない女性を連れてくるなどふざけているとしか思えない。
「・・・とりあえず中に入りましょうか。こんなところで立ち話をするわけにはいかないわ」
「ああそうだな」
そうして家に入り、姫川さんにあまり声が聞こえないように少し離れた部屋で話し合うことにした。
「・・・それで?その女性は今回の大事な話に何の関係があるのかしら」
「ああこの女性についてが今回の話なんだよ」
「「は?」」
「実は俺この女性と再婚することになってなあ。だから碧の教育費の支払いを打ち切りたいんだよ」
「何を言っているの!あなたと離婚するときに碧の教育費だけは払うという契約をしたはずよ!」
「碧だってもう高校生だろ?バイトすればちょっとぐらい払えるだろ」
・・・だめだった。俺はきっとまだ父さんのことを完全に嫌いになることが出来ていなかったのだろう。だからこそ今回の話し合いで復縁などはしないとしても、少しでも仲が直った状態で関係を終わらせたかったのだ。
しかし父さんは・・・いやこんなやつを父さんと呼ぶ必要はない。こいつは俺が思っているよりクズだったのだ。
「なあ?だから頼むよ」
「――れ」
「ん?なんか言ったか碧?」
「今すぐ帰れって言ったんだこのクズ野郎」
「・・・おい碧、元とはいえ父になんて口をきくんだ」
「お前なんか父と呼ぶに値しない!」
「碧・・・」
「俺はずっと二人のことが好きだった。いつでも優しい母さんといつでも頑張ってくれていた父さん」
そうだこの男はこんな男じゃなかったのだ。もっと優しくてもっとたくましかった。
けれどそれもただの仮面に過ぎなかった。誰もが仮面を被っている。
本性なんて見破ることが出来ないのだ。
「でもそんな日常を壊したのはお前だろ?そのせいで俺はっ」
自然と涙がこぼれる。こんなはずじゃなかったのに。
話を受けたこと自体が間違いであったのかもしれない。
「俺のせいでお前に友達が出来なくなったってか?」
「――っ」
「それは俺のせいじゃない。臆病なお前が悪いだけだ。俺がクズだ?なら俺の子であるお前も本当はクズなのかもしれないぞ?」
「あなた・・いい加減にっ!」
涙が止まらない。こんなにも過去と向き合うことが怖いなんて。過去と向き合うことでこんなにも失うものが多いなんて思わなかった。
「実際に碧がクズだから友達もできないんじゃないか?」
「それは違います」
閉めていたドアが思い切り開いた。ものすごくきれいな容姿で透き通る声。
俺の友達の姫川舞がそこには立っていた。
――数分前
「水瀬くん大丈夫かしら・・・」
彼は無茶はしないと言っていた。その点は信用して大丈夫だろう。
しかしそれでも心配にはなるものだ。
(ダメに決まっているけれどそれでも・・・)
私はこっそりドアの外で話を聞くことにした。本当はこんなことしちゃだめだってわかっている。私が介入することじゃないことも。彼が、水瀬くんが勇気を出して父親との関係を解決しようとしているのだから邪魔をすべきじゃないことも。
(それでもドアから離れることが出来ない私は相当性格が歪んでるわね・・・)
そうして聞き耳を立てていると聞こえてきたのは最悪な言葉。
新しい女性と再婚をしたいから教育費を払うのをやめたいという願望。
(私がその立場だったらきっと殴っているでしょうね・・・)
けどドアを開けて何かを言う気はなかった。それなのに一つの言葉だけは許すことが出来なかった。
「俺がクズだ?なら俺の子であるお前も本当はクズなのかもしれないぞ?」
その言葉を聞いた瞬間怒りがとても湧いてきていた。
(水瀬くんがあんな男と同じなわけない・・・でもだめ抑えないと)
「実際にクズだから友達もできないんじゃないか?」
抑えきることが出来なかった。私は思いっきりドアを開いていた。
どうして水瀬くんをクズ呼ばわりされたことにここまで怒りを覚えているのかわからない。それでもそんなことを認めさせちゃダメ。だって水瀬くんはそんな人じゃないから。
「それは違います」
――現在
「それは違います。今すぐ訂正をしてください」
「君は・・・あの時ショッピングモールにいた子か。なぜここにいる?」
「今日はここに泊まらせていただいているんです」
「そうか。だとしてもこれは君が介入すべきことじゃないだろう」
「ええその通りですね。それでも水瀬くん・・・いいえ、碧くんをクズ呼ばわりしたことについては友達として許すことが出来ません」
「それでも実際には碧はクズかもしれないぞ?」
「いいえそんなことはないでしょう。だって子供は見たもの感じたものを糧にして性格を成長させていきますから」
「・・・?」
「碧くんはあなたの優しい部分を見て育ってきたはずです。だから碧くんの性格はあなたの優しい偽った姿を大きく真似していると思います」
「そんなのただの君の妄想に過ぎないだろう」
「確かにそうかもしれませんね。けれども実際に碧くんはどの状況でも優しいですよ」
「ならば俺と同じように今は優しく振る舞っているだけなんじゃないのか?」
「それならば友達が出来なかったなんてことはなかったでしょう。碧くんはあなたと同じ過ちを繰り返したくない。そして逆に友達に父と同じ仕打ちをされることを恐れたんでしょう。だから人を信用することが出来なかった」
「・・・」
「だからこそあなたと碧くんは違う。同じ優しさだけれどもそれを包む皮が違う。だからこそ碧くんはクズなんかじゃないわ」
「姫川さん・・・」
「・・そうかよ。悪かったクズ呼ばわりして。これで話はおしまいにしよう。教育費はちゃんと払うよ」
「・・・ええそうしてちょうだい」
「悪かったな碧・・・それとそこの友達は大事にしろよ」
その時に見た顔は昔の父さんの顔とすごく重なった気がした。
昔ずっと見てきた優しい顔。
きっとそれが俺にとっての大切な家族との最後の時間だったのだろう。
過去には戻れない。もう取り返すことはできない。
あの男が今後悔してももう何もかも遅いのだ。
俺も同じだ。後悔しても遅い。明日からは過去には囚われない。
それこそが自分のためにあそこまでしてくれた友達への最大の敬意だと思うから。
そしてその夜・・・
「お疲れ様・・・"碧くん"」
「・・・えっと、いろいろとありがとう姫川さん」
「舞」
「え?」
「・・・舞でいいわ。友達なのにずっとさん付けなのもおかしいしね」
「そっか・・・なら、舞・・」
「うん・・・」
名前を呼ぶだけでとても緊張をする。今までこんな気持ちにはなったことがないのに。
「本当にありがとう舞。俺またなにもできなかった」
「そうかしら?結構頑張ってたかもしれないけど」
「いや全然だよ・・・結局舞がいなかったらなにも解決できなかった」
「そう・・・それなら」
「・・・?」
「――――――」
「っ!」
「それじゃおやすみなさい碧くん」
そうして姫川さん・・・いや舞は部屋に入っていった。
舞と一緒にいるとなぜか鼓動が早くなる。とても緊張もするのだ。
この気持ちを恋と呼ぶのだろうか
――――――――――――――――――
なんか最近文章が相当適当な気がしてきました・・・
もっといい文章が書けるように頑張ります・・・
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