第20話 夏祭り編

「というわけで~!!夏祭りに行こう!」

「いや、だからなんで・・・」

ちなみにこの状況に至るには2時間ほど前に遡る必要がある。


―2時間前


「おはよう水瀬君」

「おはよう姫川さん。珍しく今日は早いんだね」

「私はいっつも早起きしてるわよ?」

「嘘つくにしても限度あるでしょ・・・で、そんなに早く起きてどうしたの?」

ちなみに姫川さんが休日に起きてくるのは昼頃である。遅すぎんか。

「水瀬君、女の子のプライベートを遠慮なく聞くのはどうかと思うわよ」

「あ、えっとごめん・・・」

「まあいいけど。どうやら一夏がそっちに今から行くって電話してきたのよ」

「愛田さんが?何の用だろう?」

はっきり言って嫌な予感しかしない。愛田さんがこの家に来て俺が巻き込まれなかったことがないからだ。

「えーと、多分あれね・・・」

「あれとは?」

「まあ来たらわかるわよ・・・」


―そして現在


「確かこんな感じだったよね」

「ええそうね」

「待って?!私が来るまで二人はいちゃついてたってこと?!」

「別にいちゃついてたわけじゃないよ・・・」

いちゃついてはないと思う。多分。きっと。いや絶対。

まあ要するに、愛田さんは近くで開催される夏祭りに一緒に行きたいらしく、それで家まで訪ねてきたのだろう。姫川さんがあれと言っていたのはおそらくだが去年なども誘われて連れられていたからだと思う。

「もちろん舞も碧くんも行くよね?」

「ええ・・・」

「碧くんノリ悪いよー!いいじゃん!楽しいじゃん夏祭り!」

「いや夏祭りとか行ったことないし・・・一緒に行く友達もいなかったわけで・・」

「そ、そっか」

「・・・水瀬君、あなたは一瞬でシリアスな雰囲気に変える特殊な力があるようね」

「それ多分全く使えない力だよね?」

一瞬でシリアスに変えれてもいいことないでしょ。

「まあまあ私たち友達なんだから行く理由があるでしょ?」

「まあ確かに・・・」

愛田さんの言葉は一理ある。友達がいなかったし、行くことがなかったと言ったが今は姫川さんや愛田さんという友達がいる。

「じゃあ碧くんは賛成ってことだね!あとは舞だけど?」

「・・・近くの夏祭りでしょ?ほかの生徒に見られる可能性があるわ」

「もうそろそろいいんじゃない?別に普通に友達って言えばいいし」

「まあそうだけど・・・」

「まあでも?舞がどうしても嫌って言うなら、私で碧くんで行ってきてもいいんだけどね?」

「っ?!・・・わかったわ行くわ」

決断ハエー。もしかして警戒されてる?俺が愛田さんになにかしでかさないよう見張られてるのかな。まあ確かに姫川さんにとって愛田さんは大切な親友だし・・・

「まあ二人とも行くことが決まったということで早速、着物を買いに行こー!」

「え?」

「ん?どしたの?」

「私服じゃダメなの?」

「あー、私たちは着物を着ると思うよ?まあ碧くんが私服で私たちに混ざるって言うなら・・・」

「・・・いやなんかそういういい方されたら辛くなったんで着ます」

「じゃあ碧くんも買うってことでいいんだよね?」

「あ、待って愛田さん」

「ん?どした?」

記憶が正しければになるのだが・・・

「もしかしたら実家になら着物があるかもなんだ」

「水瀬君は夏祭りに行くことがなかったんじゃないの?」

さりげなく心をえぐらないでもらいたい。まあ事実なんだけどさ。

「いやまあそうなんだけど・・・実は母親がデザイン系の仕事だったからさ。聞いてみなくちゃわからないんだけど、去年試着させられた着物なら貸してくれるかも」

「なるほどねえ、なら碧くんはお留守番だね」

「え?荷物とか持たなくて大丈夫?」

少しの買い物ぐらいなら大丈夫だとはわかっているけれど一応聞いておくべきだと思った。

「うん大丈夫だよ~。あとは単純に着物は当日のお楽しみにってことをしたいんだよね」

「・・・なるほど」

まあサプライズ的な感じだろうか、恋人でもない友達である俺に対してそういう風にしてくれようとする愛田さんはやはり優しいのだろう。

・・・まあさっきのシリアスな雰囲気の話を哀れだと思ったのかもしれないが。


姫川さんと愛田さんが着物を買いに行ったので暇になってしまった。

「後回しにしようかと思ってたけど先に済ませておくか」

そうしてスマホを取り出して、ある人に電話をかける。まあもちろん母だ。

『もしもし?どしたの?』

「ああ久しぶりだね母さん。実はちょっと頼みたいことがあって」

『なーに?』

「去年俺が着させられた着物あるでしょ?あれって貸してもらえない?」

『ん?ええまあ貸すことはできるけど、何に使うの?』

「・・・えーと実は友達が一緒に夏祭りに行かないかって誘ってきて」

『友達?!碧友達が出来たのね?!』

「まあ・・・うん」

『・・・そうよかったわ。とても安心した。今度うちに帰省するときに一緒に来てもらってほしいわあ』

「いやでもそれはさすがに相手に失礼じゃないかな・・・」

『だってそうでもしないと次その話をするのがいつになるかわかんないし・・・まあとりあえず着物は送っておくわね。ちゃんと夏祭り楽しむのよ!』

「・・・うん、ありがとう」

そうして電話を切った。

(実家に付き添いで来てもらう・・ねえ・・)

そんなことをするのは姫川さんに迷惑だということはわかっている。けれども今までずっと心配をかけた。ずっと俺のそばにいてくれた母さんには恩返しがしたい。

大きなことを返せないとしても、せめて安心させてあげたいのだ。

(今度頼んでみるか・・・)

というか母さんは多分だけど、できた友達が女の子だなんて思っていないと思う。


そうして用を済まして部屋でごろごろしていたら姫川さんと愛田さんが帰ってきた。

「ただいまー!」

「えっと、おかえり?愛田さんと姫川さん」

「ははは~私もこの家に住もうかなあ」

「ならまず今のテストから平均で20点ぐらいあげないとね?一夏?」

「やっぱ遠慮しときます・・・にしてもなんか碧くん悩んでるう?」

「え?そんな顔してた?」

いつ姫川さんに話をしようか悩んでいたのだが、顔に出ていたらしく愛田さんに気付かれてしまった。

「えーと、姫川さんにちょっと大事な話があったんだけど今じゃなくてもいいや」

「――え?」

ん?何か俺まずいkと言っただろうか?

「ねえねえ碧くん。それって告白的なやつう?」

「っ?!違う違うよ!ちょっとそれは誤解だから!」

「・・・逆にそこまで否定されるとむかつくわね」

大事な話って言ったから告白などの流れだと思われちゃったようだ。

これからは発言に気を付けようと思いました。

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