第18話 楽しいプールと楽しくないプール
夏休みだということでダラダラしていたらいつの間にかこの間から1週間が経っていた。
今日は愛田さんが言っていた通りプールに行くことになっている。
桜木高校の生徒と出くわしたりすることを恐れたので俺はあえて遠くにあるプールを選んだ。
それを聞いた愛田さんの反応はこれ
『えー?別に出くわしても大丈夫じゃない?
舞の彼氏です〜って言えばいいじゃん』
いいわけないじゃん…まず彼氏じゃないし。
ということで姫川さんに説得を手伝ってもらい、今は電車に乗ってプールに向かっているところだ。
「そういえば昨年行った時はどんな感じだったの?俺友達とプールとか行ったことないから…」
「なんか悲しい過去を聞いた気がする…うーんでもそうだなぁ、昨年は舞へのナンパが多すぎてあんまり遊べなかったんだよねぇ」
「あぁ…なんか安易に想像できるね」
「でしょー。だから今年は碧くんが居てくれて助かるよぉ」
「もしかしてそれが目的では…」
「まぁ細かいことは気にしない気にしない〜」
「えぇ…」
「…2人とも、電車の中だから静かにしなさい」
「あ、はい」
…なんか姫川さん不機嫌かもしれない。
俺なんかやらかした?
「ほらここで降りるわよ」
「おーついにプールかぁー!」
「いやここから20分ぐらい歩くわよ」
「…舞おんぶしてよ」
「無理に決まってるでしょ…」
呆れている姫川さんだがさっきより機嫌が戻ってきているのが分かる。
愛田さんがわざとやったのか本音で言ったのかは分からないがさすが愛田さん。略してさすあいとでも言っておこう。
「おーさすあい!」
「…急にどうしたのよ」「碧くんどした?」
2人から怪訝の目で見られました。やはり声に出すのは間違いでした。
プールに着いてからは着替えるためにそれぞれ別れた。俺は下に履いてきていたおかげですぐに脱衣所から出た。そうして待つこと数分。
「お待たせ〜」
そうして愛田さんと姫川さんがこっちに向かってくる。やはりと言うべきか2人とも美少女なせいなのか周りから凄い視線を集めている。
「あの子たちめっちゃ可愛くね?」
「な、特に右の子。胸もでけぇ」
会話の内容はだいたいこんなもんである。
まぁ否定はしないが。
そうして愛田さんと姫川さんが俺の元へ来た。
その瞬間に周りからため息が出る。
ナンパする気満々だったのだろう、たしかに少しばかりなら俺がいることで効果はあるのかもしれない。
「お、私たちが選んだ水着意外に似合ってるじゃんー」
「当たり前よ」
自信満々なんですね姫川さん。
「その節はどうも。2人もよく似合ってるよ」
自然とこんなことを言っているが内心はバチくそ恥ずかしいのである。残念ながら恋愛経験もないし、そしてプールに行くということもなかったから。
「お?碧くんからその言葉が出るとは〜感心感心。にしても慣れてる感じだけどもしかして彼女でもいたの〜?」
「え?!水瀬くん?いたのかしら?」
姫川さんが物凄い形相で聞いてきた
「いや居ないよ!というか別れてる前提なんだね…」
「碧くんの性格だと、今彼女いたら私たちと一緒にプール来てないでしょ〜」
「それは確かに…」
「まぁ碧くんの彼女はどうでもいいとして、泳ぎに行くぞー!」
彼女の話題に変えたの愛田さんだった気がするんだけどな…まぁいいか。
そこから俺たちはプールで遊んだ。姫川さんは相変わらずスポーツ万能なので泳ぎも上手だった上にビーチバレーも上手かった。
ちなみに愛田さんは全く泳げなかった。
溺れかけてる愛田さんを急いで助けてる姫川さんを見た時はビックリしました、以上です。
ちなみにだが明らかに視線を向けている輩は居るが、声をかけてきたり触ろうとしたりはしてこなかった。良識的な人が多いのかもしれない。
そう安心して俺が二人の分もまとめて昼飯を買いに行って戻った時だった。
「姫川さん、愛田さん買ってきた…よ」
「まじ君たち可愛くね?暇なら俺たちと遊ぼうよ〜」
「人待ってるって言ってるでしょ?あんた達とは遊ばないってば」
愛田さんが強く返す。
(やっぱりナンパする人はいるか…どうしよう)
「なになに?ツンデレってやつぅ?その待ってる人も一緒に遊べばいいじゃん〜」
「あんた達と遊ぶ理由がないでしょ?」
少し後ろにいる姫川さんが怖がっているのが分かる。男子に対してとことん冷たい姫川さんだから言い返すとばかり思っていたが少し様子がおかしかった。と、そこで
「めんどくさいなぁ、いいじゃん遊ぼうよ〜」
そう言って男グループの1人が姫川さんに手を伸ばそうとした。
「もうそっちの女だけでいいよな」
「ちょ、あんた舞に触ろうとしないで──」
ベチッ
「…連れに何か用ですかね?それと気安く触ろうとするのはどうかと思いますよ」
「水瀬くん…」
思ったより低い声が出た。まぁ多少イラついてはいるので仕方がないだろう。
「なになに?彼氏?2人相手に?うわぁハーレムじゃん」
「いえ普通に友達ですよ、とりあえずもう行きますね」
「──まって?お前水瀬じゃね?」
すると男グループのひとりがそう声を上げた。
「なになに?知り合いな感じ?」
「そうそう中学同じでさぁ!こいつまじきもかったんだよねぇ!」
「──っ」
今顔を見て思い出した、こいつは中学が同じだった佐野健だ。何かと俺に話しかけてきたり、問題を起こしたりしていた生徒だがあまり俺はこいつのことを知らなかった。
「こいつさぁ、全然クラスで喋らないしさぁ、遊びに誘っても一回も来なかったんだよねぇ。荷物持ちぐらいはさせてあげようという俺の優しさで話しかけてあげたのにさ〜」
「うわ、それおもろーガチの陰キャじゃん!」
「君たちそんな男と遊ばない方がいいよ、そいつより俺らと一緒の方が楽しいって!」
顔は普通を装っているが本当はすごく気分が悪い。今すぐ逃げ出したい。別に虐められていた訳でもない。それでも目の前で色んなことを言われると怖くなる。そしてそれでもしこの2人とも離れたなら俺はおそらく今までと同じ日々を送るだろう。いやもしかしたらさらに酷くなるかもしれない。
「ほら君たち俺たちと行くよー」
そうしてまた男が姫川さんに手を伸ばした
ベチッ
今回手を弾いたのは姫川さんだった。
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最近更新遅れてて申し訳ないです。
色んなことと両立するのってなかなか難しいですよね〜。次回もお楽しみに
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