第17話 愛田一夏はくっつけたい 2

「よし!それじゃ私たちの水着買いに行こー!」

「お、おー」

「なんだよぉ舞〜ノリ悪いよー」

何とか昼ごはんを食べ終えたところで姫川さんと愛田さんの水着を買いに行くことに。

雑談をしている間に女性用の水着などが売ってる場所に着いた。

「それじゃあ俺あそこのソファで待ってるから。時間は気にしなくていいよ」

「あ、えぇ。ありがとう」

「むむむ?碧くん何を言っているんだい?」

「え?」

「碧くんも一緒にはいるんだよ〜」

「え、い、いやなんで?」

「だってそっちの方が面白そうだし」

「それ愛田さんがただただ楽しいだけじゃ…」

「細かいことはいいのーさぁさぁ行くよー」

そうして愛田さんに背中を押されて店の中に入ってしまった。

「一夏、調子に乗りすぎ。水瀬くんも困ってるでしょ」

「えー、でも水着の感想聞かないとダメじゃん?舞は水瀬くんに水着の感想言ってもらわなくていいの?」

「うっ…し、仕方ないわね…」

何が仕方ないんだろうか…勘弁してくれ。


店に入った瞬間にやはり視線を集める。

さっきの店にいた時もそうだったが、2人は視線をよく集めるようだ。

そして今回の場合は女性用のものが売ってる店に男1人と女2人でいるという状況なせいで余計に視線を集めてしまう。

視線を向けられることが苦手な自分からしたらとっても辛い状況であった。

「ねぇねぇ〜碧くん、これどう?」

「いやそれビキニじゃん…というか愛田さんだと…いや、なんもないです…」

「んんん?君今とっても失礼なこと考えたよね?最後らへんの言葉は私の胸を見て言わなかった??」

「本当にそれ何…?頭の中見てる?」

「顔みてたら大体何考えてるかわかるもんだよ」

いや普通そんなことないはずなんだけどな…

というか痛い…また肩つねられた。

「本当に何をしているのかしら…ところで水瀬くんこれどうかしら?」

姫川さんが選んだのは下はパレオで上は比較的布面積が多い水着だった。俺個人としても布面積が多いのはとてもありがたい。

「えっと、うん、いいんじゃないかな。よく似合うと思うよ」

「…え、えぇありがとう」

「あれれー?舞照れてるー?」

「黙りなさい一夏」

「あ、はいすいません」

姫川さんの本気(?)の殺気により愛田さんが黙らされていた。あの愛田さんを黙らせるとは…

姫川さんの殺気はなかなかに凄まじいものであった。ちなみにこれは本気と書いてマジと読むのだろう。

「それじゃ私はこれにしよっかな〜」

そうして愛田さんが選んだのは先らより布面積が多いビキニスタイルの水着。

「…ビキニというのは諦めないんだね…」

「まぁラッシュガード着るという手もあるからね〜」

「なるほど」


という感じで2人の分はあっさり決まった。

もしかしたら少しぐらいは調べたりしていたのかもしれない。

さすがに疲れたので帰ろうとしたのだが…

「あ、ねぇねぇ!あれ撮ろ!」

と言って愛田さんが指したのは写真を撮って加工できるやつ。まぁ要するにプ○クラ。

「姫川さん撮ってきたら?ここで待ってるよ」

「だから碧くんはいっつも参加しないスタイルやめなよー。ほら3人で撮るよ〜」

俺の意見は通用しないのか無理やり中に連れ込まれてしまった。

「そ、それじゃ俺端っこにいるから…」

「…ねぇ舞これはどう思う?」

「さすがに端っこはね…あえて真ん中にしましょう」

「いやなんで?」

姫川さんなら俺の意見に賛成してくれると思ったのに。

「ほら笑顔笑顔ー」

そうして機械が写真を撮り出す。あいにく笑顔は得意じゃないので全然笑顔できる気がしない。

そうして数枚撮り終わり、加工タイムが始まった。

「お、さすが碧くん。笑顔が死んでるよ」

「それは褒めてるのか貶してるのかどっちなのよ…」

「もちろん褒めてるよ、貶してる部分の方が多いけど」

それは貶してるって言うんだよ…。

まぁ笑顔が死んでるのは事実なので仕方ないとは思うが。

「んっと…これでよし!はいこれ碧くんの分ね!」

「え、俺も?」

「いやそりゃ3人で撮ったんだから当たり前でしょ」

そうして3人が写っている写真をもらった。

「これ結構凄いもの持ってる感じ…?」

「まぁ私と舞と一緒にプ○クラ撮った男の子は碧君ぐらいじゃないかな〜。だから大事にするんだよー」

「…うん、大切にするよ」

「それならよし」


そうして時間も時間ということで帰ることになった。

「あ、ごめんなさい。帰る前にお手洗いに行ってきていいかしら?」

「うんいいよ〜」

「ありがとう」

そうして近くの椅子で待つことにしたのだが、急に愛田さんが質問をしてきた。

「ねぇ、碧くんは舞のこと好き?」

「…え?急にどうして?」

「いいから答えて」

「えっと…分からないかな。好きとかそういうの俺疎いから…でも、姫川さんは大切な友達だと思ってるよ」

「…そっか、ならいいんだ」

「?」

何が良かったのかは分からなかった。

「あ、ほら舞帰ってきたし行くよ!舞〜」

「あ、うん」

そうして愛田さんは姫川さんのもとに向かっていく。そうして俺も愛田さんについて行く。

しかし途中で愛田さんは振り向いて

「…舞に何かあったらよろしくね碧くん」

と言われた。何かとはなんだろう。

どうしてもその言い方のせいで姫川さんに何かがあったように聞こえる。そして愛田さん自身にも。やはり愛田さんは怖い。

自分にはそういうのが分かるから。

誰かが仮面を被っている姿が、何かを隠している姿が分かってしまうから。

だから姫川さんに何かがあったのかもというのは考えてはいた。さっきの愛田さんの言葉でほとんど確実になったわけだが。


「…これから大変になるかも」

そうして俺たちの夏は続いていく。

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