第16話 愛田一夏はくっつけたい

定期テストが終わり、気付けば夏休みに入った。

テストの結果は中間時点での点数より少し上がっていた。ちなみに姫川さんは4教科満点で学年一位である。異次元ですねはい。

あれからというもの特に今までと変わりなく姫川さんとは接することが出来ている。

たくさんの事があったが、とりあえず今は夏休みを謳歌しようと思い、部屋でダラダラしていたのだが…


「よーっし。ほらほら舞と碧くん!出かけるよ!」

いやどうしてこうなったのだろうか。

なぜか急に愛田さんが訪ねてきたのだ。しかも俺と姫川さんを連れてどこかに行こうとしている。無茶苦茶すぎるだろ…

「い、いや俺部屋でくつろいでいたいんだけど…」

「えーなんでー?美少女2人とお出かけだよ〜?嬉しくないの?」

「え、えーと」

(確かに2人とも美少女だとは思うけど愛田さんは姫川さんほどではないん──)

そんなことを頭の中で考えていたら愛田さんに肩を掴まれた。

「ねぇ、碧くん?今失礼なこと考えなかった?」

「えぇ?!そんなわけ…」

「私が舞ほどでは無いとか考えなかった?」

「な、なんで分かるの?!痛い痛い痛い!」

肩を思いっきりつねられた。本当に痛い…

「悪かったね!舞ほど可愛くなくて!」

「あなた達は一体何をしているの…」

そう呆れながら言う姫川さんだった。

…なんか姫川さん不機嫌じゃない?


てな感じで、学校の生徒がいなさそうな場所という条件をつけて出かけることになった。

こんな所を見られたら多分俺が殺される。まだ死にたくないぞ。

「ねぇー、プール行こうよー」

「そんな突然は無理でしょ…水着だって買ってないし」

「俺も多分水着は無いかな…」

「えー?舞は昨年のやつあるじゃん。あれじゃダメなの?」

「いやだってサイズが…結構きつく──」

耳をシャットダウンした。いや多分身長が伸びたとかだろう。そう信じてる。なんで俺は今姫川さんに優しめに殴られているのだろう、理不尽だ。

「なら今から水着買いに行こ?そうしてこの夏休み中にプール行こうよー」

「いや男の子とプールに行くなんてありえないし…」

「舞ノリ悪いよー。ねぇ碧くん、舞の水着姿見たいよね?ね?」

「い、いや…そこまで…」

「え?ごめん聞こえない。見たいよね?」

「は、はい。見たいです…」

圧がやばいよ。軽く脅迫ではないのだろうか。

「ま、まぁ水瀬くんがそう言うなら…」

そうして何故か姫川さんは乗り気になっているし。

「ふーん?水瀬くんが見たいって言うなら行くんだ?」

「っ?!い、いやそうじゃなくて!」

「ハイハイわかってますよ〜」

そうして姫川さんに本気でしばかれる愛田さんであった。


少し遠くではあったが服などのお店が多く並ぶショッピングモールにやってきた。

「よし!じゃあ先に碧くんの水着買いに行こー」

「いや男用の水着を選ぶのなんてそんなに時間かからないから、さっさと買ってくるよ」

「えー、せっかくのショッピングなんだからしっかり選ばないと〜」

「それに今の水瀬くんに水着を買わせると少しね…」

「え?なに?俺ってそんなに服のセンスない?」

「いや悪くは無いんだけど…なぜそれを選んだ?っていう感じはするよね〜」

めっちゃ落ち込んだ。女子に服のセンスがないって言われるのはこんなに辛いことなんだなと学びました。

「せっかくだから碧くんの服も一緒に見繕ってあげよう!」

「…まぁそれには賛成ね」

「辛い…」

ということで俺の服のセンスが原因で水着と一緒に服を見繕ってもらうことになった。

「あ、これとかいいんじゃない?」

「んーでもそれ上と合わなくない?」

美少女2人に服を見繕ってもらうという男子からしたら夢のような光景ではあるが、俺からしたらいたたまれなさで死にそうである…まだ死にたくないのに。そうしてなんやかんやで1時間ほど時間をかけて

「うん!こんなもんかな!」

「まぁさっきよりは全然マシでしょう」

「なんか、俺じゃない感が凄いんだけど…」

ふたりが選んでくれたのは夏でも着やすい素材の服とズボンであり、雑誌とかでよく見るような服装になっていた。

「まぁという訳でプールに行く時もこの服装で来るようにねー?」

「は、はい…分かりました」

という感じで服と、水着も買ったということで俺たちはメンズ用の店を出た。

…ちなみに俺が着てきていた服装は、黒色の半袖パーカーに黒色のズボンである。

…不審者かよ俺。


「それじゃ私たちの水着買いに行く前に、昼ご飯食べよ〜」

「確かに、時間的にもそうだね」

「舞と碧くんはなにか食べたいものある?」

「いや、俺は特には…」

「あれはどうかしら?」

そうして姫川さんが指したのはスイーツなどが置いてある飲食店。またか。

「姫川さん?また昼食に甘いもの食べるの?」

「え?だって美味しいじゃない。それにこの前は水瀬くんの了承も…」

「あれー?舞?前に碧くんと一緒にお出かけしたんだ?」

「あ…」

「ふーんやるじゃん舞〜!やっぱり碧くんとは過ごしやすいー?」

「い、いやそういうじゃなくて!買うものが1人じゃ持てなさそうだったから一緒に来てもらっただけだから!」

「そう?まぁいいけどね。だとしても甘いものはやめておこうか」

「うぐっ…じゃ、じゃあ一夏は何が食べたいのよ」

「うーん。あ、あれにしようよ!激辛ラーメン!」

「「却下」」

「えぇ?!」

いや愛田さんもなかなかに選ぶものがおかしいのでは…

という感じで2人に任せると大変なことになる可能性が高かったので、近くのファミレスで食べることにした。

この2人今まで出かける時は昼食どうしてたんだ…?

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