第9話 最悪の形 2

「え?!え?!なんで男の子が〜!?もしかして舞の彼氏?ねぇ!ねぇ!」

「あばばばばばば」

「一夏、少し落ち着いて。水瀬くんが壊れたロボットみたいになっているから…ほら水瀬くん一旦深呼吸」

「あばばばばばばび」

「あ、ダメねこれ」


…そうして落ち着いた俺(達)は話を聞かせてもらうということで姫川さんの横に座り対面の愛田さんに質問をされる。

「ねぇねぇ舞。どいうこと〜?もしかして彼氏?いやぁ〜舞にもとうとう出来たか〜!応援するね!」

「ちょ、ちょっと!勝手に話を進めないで!私たちはそんな関係じゃないから」

「え〜ならなんで水瀬くんはこの家に来たのかなぁ〜?」

「うっ…」

「…姫川さんここは正直に話そう」

「…そうだね…」

そういうことで愛田さんには俺たちがこの学生寮を一緒に使っているただの同居者であること。

男女での同居になったのは意図的にした訳では無いということを嘘を交えず伝えた。

「ふーんなるほどねぇ…」

「はぁ…わかってくれた?…それにしても水瀬くん、今日は帰るのが遅れるんじゃなかったの?」

「うん、その予定だったんだけど思ったより早く買い物が終わったからさ。連絡したんだけどもしかして見てない?」

そう言うと姫川さんが急いでスマホを確認する。

「ほんとだ…一夏と遊んでたから気付かなかったわ…」

どうやら今日は愛田さんが『舞の新しいお家行ってみたーい!』というわがままでこの家で遊ぶことになったのだとか。

今日俺は出かけて帰ってくるのが遅くなる予定だったのでちょうどいいとおもったのだろう。


「まぁまぁ!事情は把握したから!

バレたくないんでしょ?秘密にしてあげる!」

「…って言ってるけど姫川さん信用しても大丈夫?」

「……」

「なんで黙るんですかねぇ…」

俺の予想だけど愛田さんは絶対に口が軽い…

「大丈夫だって〜!バレても3人ぐらいにしかバレないから!」

「3人にバレたらもう止まらない気がするんだけど…」

…これはちょっとまずいかもしれない。


「まぁそんな細かいことは置いておいて」

「俺たちからしたら一大事なんですが」

「せっかく遊びに来たんだから遊ばないとね〜。

ねぇねぇ!碧くんも一緒に遊ぼうよ!」

「あ、碧くん?!」

この子、距離の詰め方がえぐい…

「却下。男の子と一緒に遊ぶとか絶対嫌よ」

「こら〜舞!そんな言い方は碧くんが可哀想だよ!」

「男の子を交えて遊ぶなんてありえないわ。たとえ一夏が一緒でも絶対嫌よ」

…姫川さんに嫌われすぎでは?と思ったがまぁ今までも男に告白などで振り回されてうんざりしたのだろう。仕方ない気もする。

「うーんこれは説得無理だなあ。ねね、碧くん。なら私と2人でゲームしよ?」

「…え?2人で?」

「──?!そ、それはダメよ!」

「え〜なんで〜?」

「だ、だって…一夏は私と遊ぶために来たんでしょ。私と遊ばずに水瀬くんと遊ぶのはどうなの」

「うーんなら3人で遊ぼうよ〜」

「し、仕方ないわね…」

「無理しなくていいよ…?」

「む、無理なんてしてないわよ!この変態!」

「理不尽過ぎない…?」

まぁてな感じで3人で遊ぶことになった。


「よーしまずこれやろう〜」

どうやら愛田さんは家からゲーム機を持ってきていたようでやる気満々だ。ちなみに画面に写っているゲームは、赤い帽子をかぶったおっさんがレースをするゲームである。

「碧くん、はい!ここ座って!」

「…?」

「どうしたの?早く?」

「いやなんで間を空けるの…?端っこか、もしくは地面でいいんだけど」

「いや間に座った方が面白そうだし!あ、それとも舞の隣にだけ座りたかったのかな〜?」

「──なっ?!水瀬くん?!」

「いや肯定してないんですが…違いますよ。さすがに女子2人の間に座るのは俺からしたらきついってことです」

というか話すこと自体既に結構きつい。

緊張で手汗がやばそう。

まぁ色々ありながらも、結局俺は床に置いてあるクッションに座ることにした。


…レースが始まって思ったのだが、愛田さんは中々にゲームが上手い。俺は友達がいなくてゲームしかやること無かったので結構できる方なのだが、愛田さんも中々だ。

…それに対して…。

「あっ…」

「あははー舞ったらまた落ちたの〜?ここのステージ簡単な方なんだけど」

「いや普段こういうのやらないから…」

姫川さんはゲームは得意では無さそうである。

普段何してるの?と聞きたいところではあったが、プライベートに関してあまり踏み込んで欲しくないだろうなと思い、聞くのはやめた。


ゲームに集中していればあっという間に時間は過ぎていくものだ。気付けば19時を回っていた。

「おっと、そろそろ帰らないとだね〜」

「そうね。またね一夏」

「うんまた明日ねー舞…あ、そうだ。碧くんちょっとスマホ貸してよ」

「…?まぁいいけど…はい」

「ありがと…っととこれでよし」

そうして返されたスマホには愛田さんの連絡先が

「せっかくだから仲良くなった記念にね〜。

多分だけど私と舞の連絡先を持っている男子なんて君ぐらいだよ〜」

「あわわわわわわ」

「…なにこれどういうこと?舞?」

「…デジャブ」

「は?なにが…?」


学校で人気な女子の2人の連絡先を貰うとは…

運がいいのか悪いのか…。このスマホを学校で売ればかなりの値段になりそう。

…いやしないけどね?


そうして愛田さんが帰ったあとはお互い普段通りの生活をして、ベッドに潜り込んだ。

今日はたくさんのことがあったせいで、2時ぐらいまで寝付くことが出来なかった。

…拝啓、1年前の僕へ。あなたの未来やばいです。なんかとんでもなくやばいです。

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