第5話 初日のやらかし 2

トラブルが多発したものの、なんとか荷解きを終えることが出来た。

「ふぅ…やっと終わった…」

ほぼぶっ通しで作業をしていたせいで身体中が悲鳴をあげている。

「お疲れ様。手伝ってくれてありがとうね。明日の水瀬くんの荷解き手伝おうか?」

「いや、そんなに量多くないし大丈夫だよ」

「そう…」

「…?」

「まぁそんなことより晩御飯だけど、疲れてて料理できそうにないし出前を取りましょうか」

「そうだね…そうしてくれると助かるよ」

お互い疲れているということで出前を取る事に。


「なににしましょうか。ピザがいいわよね?了解ピザね」

「俺何も言ってないんですが…まぁ姫川さんがピザがいいなら俺は構わないよ」

「そう、水瀬くんがそこまで言うなら仕方ないわね。ピザにしましょうか」

「なんで俺がわがまま言ったみたいになってるの…」


というわけで俺のわがまま(?)によってピザの出前を取る事が決まった。

「ぐぬぬ…スイーツ類盛り合わせピザと、野菜マシマシもやしピザ…どっちか悩むわね」

「いやなんかどっちもあんまり美味しくなさそうなんだけど。それ美味しいの…?」

「美味しいに決まってるじゃない。スイーツ類盛り合わせピザはピザを食べた後にスイーツを食べれるのが美味しいの」

「それ普通にピザとスイーツ別々に買えば良くない…?もやしピザの方は?」

「もやしピザは……」

「…?」

「…美味しかったわ」

「あ、ダメだこりゃ」


というわけで姫川さんの謎のセンスは置いておいて、俺が意見を出したことにより、マルゲリータとてりやきピザを頼むこととなった。

そうして待つこと数十分。

ピンポーンという音が鳴ると共に姫川さんが玄関へ向かっていく。


「…よしそれじゃあいただきましょうか」

「そうだね」

「「いただきます」」

久しぶりにピザを食べたがやはり味が濃くて美味しい。反対側に座っている姫川さんも笑顔でピザ食べている。

(氷姫って呼ばれているけれど、そんな顔もできるんだな…みんなと俺の『氷姫』という印象は違うのかな)

こんな感じにごく普通の女の子と同じように笑顔でいる姫川さんを見ると、なんで氷姫と呼ばれているのかが分からなくなる。確かに冷たい時もあるが優しくて面白い普通の女の子だ。まあとんでもなく美少女ではあるが。

どうしてだろう…?と考えていると姫川さんと目が合った。

「…なに?私の顔になにかついてる?」

「あ、い、いや別に特に何も…」

「ふーん?なに?私の顔に見惚れてた?」

「いやまぁそういう訳じゃないんだけど…」

「少しは動揺ぐらいしなさいよ。なんか腹立つわね」


見惚れていなかったと言えば嘘にはなるが、そんなことを言ったら罵倒されそうなので嘘をついておく。


「あ、そうだ家事のことなんだけど交代制でいいわよね?」

「そうだね。基本的には交代制にして、手が空いてたら手伝うってことでいいんじゃないかな」

「そうね。…でも洗濯は自分のものは自分でやるようにしましょう」

「…?なんで?」

「次は1時間説教をお望みかしら?」

「洗濯物はそれぞれ自分でやった方がいいんじゃないかな?」

「こら、自分の発言を記憶から消すな。…それに男性に自分が着た服を触られるの不快だから」

「あぁ…なるほど…」

やはり姫川さんは重度の男嫌いらしい。

俺も、もしかしたら相当嫌われてるのかもしれない…いや下着を触った時点で嫌われているというレベルでは無いな。

(…にしても俺姫川さんの前だとこんなに喋れるんだな)

そう。俺はコミュ障なせいでハキハキ喋れずにいつも『え?なんて?』って聞き返されるし、酷い時には緊張のあまり動けなくなるのだが、姫川さんと話している時は今のところそんな風になる素振りはない。

(…もし学校でもこんな風に喋れたら友達出来るのかな)

そんなことを考えながらさっさとピザを食べ、風呂に入り、高校入学初日を終えた。本当にたくさんのことがあった1日だった。


…ちなみに風呂は『なんか残り湯飲まれそう…』という姫川さんの要望で俺が先に入った。

姫川さんと付き合える男なんて現れないんじゃないか?と思いつつ俺は瞼を閉じた。

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