第4話 初日のやらかし

「ねぇ?ちゃんと反省してる?」


「はい…反省しております…」

俺は今リビングで正座をした状態で姫川さんから説教をされている。…なぜこんな状況になったのか、それは今から約2時間ほど前に遡る。


※※※

ピンポーン

姫川さんとあーだこーだ言ってると、チャイムが鳴った。


『…っと。荷物きたみたいね』

『そうみたいだね』

それぞれ荷物は宅配で事前に家から送っている。

…まぁ、俺の分の荷物は明日の予定なのでおそらく姫川さんの荷物だろう。

姫川さんがインターホン越しに返事をした後に玄関へと向かっていく。


『おっとと…この量を1人で運ぶのは厳しいわね。ごめんなさい水瀬くん、手伝ってくれる?』

『え?あ、う、うんわかった』

そうして2人で荷物を部屋に入れていく。


『ふぅ…荷物多いね…』

『まぁ女の子だからね。色々と必要なのよ。ところでこの後暇?』

『…?暇だけど?』

『ならよかった。荷解き手伝ってくれてない?』

『あ、やっぱ遠慮…』

『……』

『できない感じですねはい。誠心誠意頑張ります。』

てな感じで俺は姫川さんの荷解きを手伝うことになった。圧怖い…


『これはどこに置くの?』

『それは今必要ないから段ボールの中に入れておいてもらっても問題ないわ。』

『ん。了解』

てな感じで協力して荷解きをしていく。


『んと…次はこれかな。』

荷解きが終わった段ボールを片付けて次の段ボールに手をつけていく。

『…?なんだこれ?ハンカチか?』

ちょっとしたフリフリでも着いたハンカチなのかなと思い広げてみる。

『……?!』

『ん?どうしたの?そんなに驚いた顔し…て…』

俺の驚いた顔を見て心配をした姫川さんだったが、直後俺の手元へと視線が移る。

『な、な、なにしてんのよ!?なんで私の下着を広げてるの?!』

『ちがっ、これはわざとじゃなく──』

『とうとう本性を表したわね…この変態め…。

大人しそうだったから少しは信用したのに、やっぱり結局は…!』

『だ、だから違うんだ!ハンカチかなにかかなぁと思って広げてみたら…えと、その…黒いフリフリの下着で…』

『それ以上は言うなぁぁ!てかいつまで持ってんのよ!早く離しなさい!』

『は、はい!すいません!』


※※※

ってことがあったのである…

そういうわけで俺は正座したままかれこれ30分程説教をされているという状況だ。

…やってしまった。少しは信用されていらしいが、これでもう既にマイナスだろう。


「──はぁ…とりあえず説教はおしまい。今回に関しては手伝わせたのも私だし、段ボールの中身を先に確認しなかったのも私だから…」

「そ、そっか。と、とりあえずごめんなさい。」

「もういいわよ。で、でも下着のことはわ、忘れてちょうだい」

姫川さんの頬が少し赤くなっている。可愛い。


「と、とりあえず!荷解きを先に終わらしちゃいましょう。下着とかの見られちゃダメなものは回収したから…多分大丈夫…」

「多分ってめっちゃ心配だな…」

まぁといいつつも手伝わないとまだまだ時間がかかりそうなので大人しく手伝っておく。


途中でトラブルはあったもののその後は順調に荷解きを進めていく。

と、ここで俺は少し違和感を覚えた。

(…なんか姫川さん、少しふらついてないか?なんか今すぐにでも倒れそうな…)

と考えていた矢先。

「…あっ」

「──危ない!」

姫川さんがバランスを崩してしまった。俺がたまたま見ていたのでなんとか支えることが出来た。

「大丈夫?姫川さん。」

「え、えぇ。ごめんなさい、思っていたより疲れが溜まっていたようね…」

それも無理はないだろう。学校では入学式の代表挨拶があったり、その後もクラスメイトや先輩からの質問攻めなどを対応しながら振り切るってだけで相当な労力を必要とするだろう。そして、その後に荷解きなどしようと思えばこうなることは目に見えていたはずだ。

「ごめん姫川さん。疲れてることに気付かなくて。」

「え?な、なんであなたが謝るのよ。私が無理をしたのが悪いんだから…でもありがとう。助かったわ。」

「うん。よかったよ。」

「あ、でもそろそろ離してくれると有難いわ。私男の人に触られるの嫌いなの。」

「え、あ、ごめん!」

俺は直ぐに姫川さんの肩から手を離す。

荷解きの間はそんなことがなかった気がしていたのだが、やはり姫川さんは『氷姫』と呼ばれるくらいには冷たいらしい。


姫川さんやっぱり怖いな…と頭の中で考えていた俺は、その時姫川さんが耳を真っ赤にしていることに気付くことは無かった。


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