第3話 姫川舞との出会い

「きゃぁ!なんであなたがここにいる―」

バタン…俺は勢いよく扉を閉めた。


「…おかしいな、部屋間違えたかな。うーんでも部屋の場所合ってるしな……もしくは幻覚かなにかかな?いやむしろ幻覚じゃないと困るな」

ということでもう一度扉を開けてみる


「……」

「なんでいきなり閉めたのよ?!というかなんであなたがここにいるの?!」

どうやら幻覚でもなんでもないらしい。そう、これが俺と『氷姫』と呼ばれる姫川舞の出会いであった。



という感じでそこから10分後。俺たちは部屋の中にあるリビングの椅子に腰かけて、事情を説明していた

ちなみにこの10分間の間にした会話だが……


『なに?!なんで男子がここにいるのよ!あ、分かったわストーカーね?今から通報するから待ってなさい』


『いや待て待て待て待て待て待て。ストーカーじゃないから!俺は今日からここに住m』


『いいえ?ストーカーはみんなそういうのよ!学校の先生に突き出して退学にしてやるんだから!』


と、思い出したらこんな感じである。

…頭が痛い。


そしてなんとか姫川舞を落ち着かせた俺はとりあえず外で話すのもあれだということで部屋の中で経緯などを話すことになったのである。


「──なるほどね。つまりあなたは私と同じようにこの学生寮で暮らすことになっていたもう1人の生徒という事ね。」


「は、はい…その通りです。」


「それなら納得…できるわけないでしょっ!!

なんで男女混合なのよっ!!」


「いやそれは俺も思ってる事だから…」

はっきり言うと俺もずっと一緒に暮らすのは同学年の男の子だと思っていた。というかそれが普通だろう。

ちなみに姫川さんが凄い勢いで高校に電話をかけていたが、いい感じにはぐらかされたらしい。

…これは意図的だな絶対。おそらくだが、姫川舞1人にこの大きな学生寮を丸ごと使わせるのもどうだと考えている時に俺という存在がこの学生寮に加わったことで2人ならいいかということになったのだろう。…こっちからしたらいい迷惑だが。


「まぁ…あーだこーだ言っても仕方ないわね。抗議しても無駄そうだし。」


「そ、そうですね」


「とりあえずあなたもこの学生寮で過ごすってことでいいのね?色々心配事はあるけれど。」


「は、はい。俺は大丈夫ですけど…」

いや全然大丈夫じゃない。大丈夫じゃないけどコミュ障はどうしてもこうなってしまうのだ。

…と言いつつもこの学生寮で過ごせない場合、他に住むところがないので首を縦に振るしかない。


「はぁ…まさか同居人が男子とは…

てっきり女子だと思っていたのに…」


男子をフル無視したりしている姫川さんではあるが、女子とはまれに話しているところを見たりするので、同居人が女子なら問題ないと思ったのだろう。…実際に来たのが男子だったので相当焦ったのだろうと思う。


「にしても、同居人が姫川さんか…」


「…なに?文句でもあるの?」


「い、いえ特に何も…」

他の男子からしたら姫川舞と同居という状態は喉から手が出るほどに欲しい状態だが、友達すらまともに作れないコミュ障の俺からしたらだいぶ辛い状況だ。それに姫川さんと同居していることがバレたら、俺と仲良くしたい…のではなく、姫川舞に近づくための口実として俺に近寄ってくるだろう。それは友達と呼べるものでは無い。


「まぁとりあえず、これからよろしくね?水瀬碧くん」


「っ!よ、よろしく姫川さん」


名前を覚えてくれていたことに少し驚いてしまったが、なんとか入学初日からの事件は無事に終わったと言っていいだろう。

…と、ここでなぜか姫川さんが床に直径1mぐらいの円を描き始めた。


「……?」


「んっとよし。はい、今日からあなたはこの円の中で過ごすこと?いいわね?」


「いやいいわけないでしょ」


…もう既に心配でしかないのだがこれから大丈夫だろうか。


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