第8話
「ッ!」
まずは従来通り翼を狙い機動力を奪うために急接近し剣を振るうが
「・・・硬いな」
オーアグリフォンの翼に弾かれてしまう。オーアグリフォンは反撃と言わんばかりに着地した征司を潰そうと前足を振り下ろす。それを後ろに飛び回避
振り降ろされた地面は恰も爆発でもしたかのように抉れていた
「・・・・・・・」
征司の頬に汗が伝う、あれを果たして受け止めることができただろうか?あんな単純な攻撃だけでも致命傷になる、それを理解した征司はオーアグリフォンの行動から目を放さない
「ブフゥウ!!」
鳴き声と共に飛び立つオーアグリフォン、上空から征司の隙を伺うつもりだろう
「舐めやがって・・・」
見降ろされた征司は剣を空間にしまうと新たに刀を取り出し居合の構えをとる、その様子空中で見ていたオーアグリフォンは急降下し襲い掛かる。先ほど以上の威力があるだろう降りかかる爪を横に躱しながら刀を抜き放ち下から上へと切り上げた。
「月閃!!」
首を跳ね飛ばすつもりで放った斬撃、しかし野生の勘というべきかその一撃は気づかれオーアグリフォンは翼を大きく広げ斬撃の軌道上に翼を置き防御しようとするが
「ピギャァ!」
片翼を切り裂かれオーアグリフォンはバランスを崩す。その一瞬の隙を逃す征司ではない、そのまま再度首を狙う。しかし
「!!」
突如として征司は後方へ飛ぶ、オーアグリフォンのほうを見ると征司がいた場所には鋭い鉱石が無数に生成されていた
「そんな芸当もできるのか」
どうやらオーアホークのような生成した塊ではなく鋭い針のようなものを自身の指定した位置に生成できるようだった。
「(今まであれをしなかったのは範囲がそこまで広くないからだろう、おそらく自身の周囲、しかも溜めがいる・・・)」
両者拮抗した状況が続く、だが征司が依然不利なのは変わらない、機動力を奪えたとはいえ一撃でも食らえば致命傷、しかもノーモーションの鉱物生成に注意を向けなくてはならない
「(このまま続けてもジリ貧・・・一か八かあれを使うか)」
刀を空間にしまうと同時に取り出したのは3Mはあるだろう大太刀、その大太刀は先ほどまで使っていた刀とは違い美しくそしてどこか禍々しさも兼ね備えていた
「起きろ、禍ツ星お前の出番だ」
征司が呟いた瞬間、まるで返事をしたかのように鈍色の刀身が黒に染まる
「ピィギャァァア!!」
征司の、禍ツ星の変化にオーアグリフォンは吼えるが動けない、本能的に恐怖しているのだ
禍ツ星・・・親のツテで作ってもらった大太刀、受け取った当初は歓喜していたがよく考えるとこの武器は当時の征司には強すぎたのだ、これを使い続ければ腐ってしまうという理由で封印していた今持っている最大の武器
「頼むから死んでくれよ?」
刀を構える征司の体から漆黒のオーラが漂い始める
「ピィ・・・ピギャァァアア!!」
オーアグリフォンは恐怖を振り切るよう吼え突進してくる。その勢いは凄まじく地面が捲れるほどであったしかし征司は落ち着き禍ツ星を持ち上げ上段の構えをとる。
「ピギャァァアア!!」
オーアグリフォンは眼前の敵である征司を今まで以上に殺意を込めながら襲い掛かる。が征司にはなぜか遅く感じた
全力で腕に力を籠め禍ツ星を振り下ろす。それだけのことだが征司の力と禍ツ星という武器で振り下ろす一刀は必殺とかす
「覇刃」
空まで切り裂いた斬撃はオーアグリフォンは断末魔を上げることなく一瞬にして左右に切り裂かれ絶命させた
「・・・今日はここまで。明日の学校は休もう」
征司はを空間に戻すとそのまま大の字で倒れる。禍ツ星を使わなかった理由はもう一つある、それは重すぎるのだ。
通常の大太刀10~20kg程と言われているが禍ツ星は100kg以上ある、そんな重さを振り回すのは今の征司では難しい。受け取った当初は製作者に馬鹿か?と言ったほどだ
「(ここまでの戦いは何時振りだったか・・・)」
今まで経験した戦いでおそらく2番目強い相手、そんな相手に征司は勝利した。しかし体が重くこれから戦う気も起きないほど疲れていた。
そのまま休もうとしたがここはバベル、いつモンスターが来るかわからない
疲労困憊の体を起こしオーアグリフォンの死体を空間に入れ転送石を取り出しギルドに帰還する。
ギルドに着くと帰還させたパーティーと多くのギルド職員が慌ただしくしていたが征司の姿を見ると途端に止まる
「黒狐!?生きていたか!?」
リーダー格の女性は驚きながら征司に駆け寄る
「ああ、少しだけ本気を出した」
征司はそう言うと受付にいた天音に向かい素材の受け渡しを後日に回す許可をもらい帰ろうとするがそれをリーダー格の女性が引き留める
「ま、待ってくれ黒狐!何かお礼を!」
「いらん。それに今日は疲れた、また今度にしてくれ・・・」
そう言って征司は今度こそギルドを去ろうとするが・・・
「じゃ、じゃあせめて」
その言葉に足を止める。振り返るとリーダー格の女性を先頭にパーティーメンバー全員が並んでいた
「貴女のおかげで助かった、ありがとう・・・」
リーダー格の女性は頭を下げた。他のメンバーも頭を下げていた。それを見て征司はため息をつきながら後ろに振り向き
「どういたしまして」
一言だけ言いギルドを去って行った。その後ろ姿を助けられたパーティーは見続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます